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介護・看護・リハビリ 2025-06-09

直感で重症心身障害児者施設の理学療法士に【介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画 理学療法士 横田昌憲さん】#1

業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画」。今回は、理学療法士で多機能型事業所LEO代表の横田昌憲さんにお話を伺います。

横田さんは、重症心身障害児者施設に12年間勤務した後、2023年鎌倉初の重症心身障害児・医療的ケア児に特化した多機能型事業所LEOをスタート。前編では、これまで横田さんが理学療法士としてどんな仕事をされてきたのかお伺いします。

お話を伺ったのは
多機能型事業所LEO
代表 横田昌憲さん

重症心身障害児者施設で12年間、理学療法士として障害児者のリハビリテーションを担当。重症心身障害児、医療的ケア児を対象とした社会資源が十分ではない現実を知り、2023年多機能型事業所LEOをスタート。鎌倉市で初となる重症心身障害児、医療的ケア児を対象とした放課後等デイサービスおよび児童発達支援を行う。看護師、理学療法士、介護福祉士・保育士など多職種の専門スタッフによるチーム体制で全力サポート。

ホームページ

知識を得るだけじゃなくて自分の手で困っている人を助けたい

大学の恩師の紹介で重症心身障害児者施設に就職した横田さん。

 

――まず理学療法士になった理由を教えていただけますか。

大学は文学部で自主映画を撮ったりといまとは全く違うことをしていたんですが、生命倫理の授業で医療関連の本を読んでいくうちに、知識を得るだけじゃなくて自分の手で困っている人を助けたいと思うようになりました。医療分野の中でも、柔道経験から身体のことに興味があり、理学療法士がいちばん向いているのかなと思ったんです

――大学何年生のときですか。

4年生になってからですね。そろそろ将来を決めないといけないなと。留年しているので当時30才。文学部を卒業して、医療系の大学に入り直しました。

――志した道に向かって学び直している期間は、やっぱりこれだという感覚でしたか。

まわりの仲間も当然理学療法士を目指す人たちなので、年齢はひと回り違っていましたが
目標が同じだと通じ合うものはありましたね。

――病院やリハビリセンターに就職する人が多い中、重症心身障害児者施設に決めたのはなぜ?

就活で一般的な回復期や急性期を扱う病院もまわりましたが、直感で決めました。いや、決めたときは直感だと思っていましたが、無意識の中に過去の経験があったのかもしれません。

学生時代、障害を持っている方が暮らすケアホームに泊まりがけでお世話をするアルバイトをしたり、サークルで子ども医療センターを受診するお子さんのご兄弟を預かる活動をしていたんです。いま思えば、当時から障害を抱えた方をお手伝いしたいという思いがあったのかなと思います

お互いの表情でコミュニケーションがとれるように

利用者さんの状態はそれぞれ違うので、楽に車いすに座っていられるようにクッションを削ることも。

――重症心身障害児者施設ではどんなお仕事をされていましたか。

8:30~17:00の勤務時間内に入所施設・外来・生活介護(デイサービス)の3つで理学療法を行っていました。
10時~15時 生活介護(デイサービス)の方向け
15時~16時 外来では下校後のお子さん向け
それ以外の時間 入所の方向け

――重症心身障害児者施設は子どもだけの施設なのでしょうか。

障害をお持ちの方は「障害児者」といって、0~18才までを障害児、18才以上を障害者とされています。外来ではおもに未就学の方から高校生まで、デイサービスでは高校を卒業された方、入所の方では60代の方もいらっしゃいます。幅広い年齢の方をみることができたのは就職先としてすごくよかったですね

――利用者の方の年齢が異なると理学療法のやり方も違ってくるのですか。

そうですね。月齢や年齢に合わせた課題があるので、運動機能が伸びる時期には寝返りやお座り、立つなど基本動作の練習をします。一方、高校卒業以降は機能を維持することに注力。例えばお風呂に入る、車椅子に乗せるなど介助する方も介助される方も負担なく生活できるようにすることを考えます。

――大学で専門的に学んだ後は、仕事にもスムーズに入れましたか。

まず重症心身障害児者の方に慣れるまでに1年くらいかかったと思います。最初は手足が固まってしまっている方、背骨が曲がってしまっている方に触るだけで緊張しました。

普通は「どうもこんにちは」とかで打ち解けていくと思うんですが、ほとんどの方が発語できない、手足も動かないので別の手段で訴えてくるんですね。最初からそれを読み解くのは難しいですが、利用者さんの表情を見て、利用者さんも自分を見てお互いにちょっとした変化が分かるようになってくるんです。コミュケーションですよね

――お互いのコミュニケーションなのですね。その中で嬉しかったことや喜びを感じた瞬間は?

一般的にリハビリというと、理学療法士がある人にプログラムを組んでそれを練習するというイメージがありますが、たまに予想を超える動きや反応が出るときがある。それでめちゃくちゃびっくりすることがあります。

例えばそれまで座れなかった方が座れた瞬間とか。そんなときは「いやーすごい。本当にすごい」と隣にいるお母さんとただただ一緒に喜びます。本当に嬉しい瞬間ですよね。

――理学療法士である横田さんの働きかけがなかったらそんなシーンは生まれないですよね。

おっしゃる通りです。ただ働きかけや環境設定をしているだけというのが大事なんです。言い換えると、自分の思った通りに動いてほしいと思ってしまうと、たぶんそういうことは起こらない。

働きかけたのは自分かもしれないけど、利用者さんに自発的にすごい何かが湧き上がってくるんでしょうね。それがピタッとあったときが嬉しいです

ふだんの生活の中で練習してきたことが活かせるように

医療大学時代を鎌倉で過ごしたことから、鎌倉で起業。

――独立することになったきっかけを教えてください。

重症心身障害児者の分野でも地域支援・地域連携の流れがあり、それに伴って放課後等デイサービスなどが出てきました。下校後に訓練所に通う重症心身障害児者の方を担当していたこともあり、理学療法士の経験を活かして放課後等デイサービスをやってみようと思ったんです。

自分も担当していましたが、外来のリハビリテーションで座る練習、立つ練習をすることは大事です。ただ、放課後等デイサービスではあくまでも周りに友達がいて、例えば今の季節なら鯉のぼりの制作活動の中で適切に座る環境設定をしたり、手が使いやすいように介助したりすることでご本人の自発的な動きを引き出すように支援するというイメージです

――稼働するまでは大変でしたか。

そうですね。前職で担当していた利用者さんのお母さんと一緒にNPO法人ハビリテーションケアを立ち上げ、別の利用者さんの実家をお借りして多機能型事業所LEOを開所しました。すごく立派な建物なんですが、築100年。さまざまな基準を満たさないと開所できないので、まずは落ちてしまっていた床を張り替え、非常口や消火器を設置したりと準備期間が必要でしたね。

後編では多機能型事業所LEOでどんな職種の人たちがどんな仕事をしているのか、また一般の病院に勤務する理学療法士との違いなどお聞きします。

撮影/森末美穂
取材・文/永瀬紀子

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多機能型事業所LEO
住所:神奈川県鎌倉市城廻54-1

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