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介護・看護・リハビリ 2022-01-14

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.50】入居者のご主人からクレーム?! 規則的にはOKだけど、どうする?

介護施設で働く介護職が日々の業務の中で感じがちな困りごとを取り上げる当企画。今回は、施設の規則的には問題のない事柄に対するクレームにどう向き合うかを取り上げます。

「入居前の説明と違う!」「物々交換はいいのか?!」とご家族からクレームが…。

奥さんは老人ホームで、ご主人はご自宅で暮らされているFさんご夫婦。とても仲がよく、ご主人は奥さんに会うために老人ホームを頻繁に訪ねてこられます。

ある日、ご主人がスタッフを呼び止め、怒り気味に訴えてこられました。「入居前の説明では、この施設では家族からの贈り物は受け取らないと言っていたじゃないか!」「入居者同士で家族が持ってきたお菓子を物々交換しているそうじゃないか!」「そもそも金銭の貸し借りもダメなんだろう。物々交換もダメじゃないのか!」

施設への家族からの贈り物は受け取れない規則は変わっていませんし、ご家族からご本人へ渡すのは問題ありません。Fさんご主人の言っていることが支離滅裂で、何を言っているのか、何に怒っているのかさっぱり分かりません。

こういう時、介護職としてはどのように対応するのがよいのでしょうか。ポイントを押さえながら見ていきましょう。

お話を伺ったのは…

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

ポイント1:クレームの背景には困りごとが隠れている

クレームを言ってくる人は往々にして、何らかの困っている事情を抱えていることがあります。「困っていることを自分だけでは解決できない。だけど、それでも何とかしたい。」そう思っているのに、その葛藤と苛立ちを上手く相談という形で表現できないのではないでしょうか。その結果、受け取る側がクレームのように感じてしまう語気の強い口調になったり、支離滅裂な主張になったりしている可能性は十分に考えられます。

ポイント2:困りごとが何かを探ろう

クレームともとれる発言は、聴いていて気持ちのよいものではありません。ですが介護職としては、「嫌なことを言う人だな」「何を言っているか分からない」と聞き流す前に、困りごとが何なのかを聴く姿勢を大切にしたいところです。

このケースの場合、「入居者同士で家族が持ってきたお菓子を交換している」という点が肝のようです。施設の規則的には問題ないことですが、この事実絡みで何か困っているのだと考えられます。どう困っているかを聴くことができるといいですね。

ポイント3:聴くときは思いやりを添えて

「入居者同士で家族が持ってきたお菓子を交換している」こと自体が規則的には問題がないからといって、「特に問題ないんですが、何か?!」というようなFさんご夫婦の心情を無視した聴き方はNGです。例えば、相手の気持ちに寄り添い「奥様が何か嫌な思いをされましたか?」「奥様には楽しく生活していただきたいですし、ご主人にも安心していただきたいです。」と心配と思いやりの気持ちを添えるだけでも、心を開いてもらいやすくなります。

ご家族からの訴えに耳を傾ける時に大切な2つのこと

1.クレームとして受け止めない
2.相手の心情に寄り添う

厳しい口調や態度で問い詰められると、人は誰でも身構えてしまいます。それが理不尽な内容だったり、つじつまが合わないことだったりすれば、クレームと感じてしまうこともあるでしょう。しかし、攻撃的な態度をとる人の多くは、不安や心配などを抱えています。むしろ、不安があるからこそ、防衛本能から攻撃的になってしまうのです。だからこそ介護職としては、クレームとも感じる訴えでも、その根っこにある相手の不安に耳を傾けてほしいと思います。

このケースの場合、ご主人はお菓子交換の輪に入れていない妻を不憫に思ったのでしょう。同時に、そのようなお菓子を買ってきてあげられない自分にも不甲斐なさのようなものを感じていたのではないでしょうか。人に聞いてもらえるだけでも気持ちが軽くなることってありますよね。まずは、「クレーム」だと構えずに、困っていること、不安に思っていることを話してもらい、肩の荷を一人で抱え込まないようにしてあげる姿勢で向き合ってみましょう。

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

私も実際に、施設でご家族様からのお話を伺ったことがあります。クレームのように聞こえてしまうこともありますが、ご家族が訴えたいのは施設や職員に向けた「期待」だと思います。家族としてどう対処していいのかわからなかったり、困ったことの裏返しだからこそ、ここにしっかり向き合って課題の解決に向けて一緒に進めていくことで、「期待」を超えることにつながり「信頼」に変わっていくのだと思います。

誤った認識での誤解などであれば、できることとできないことをしっかり伝えることも重要です。曖昧にすると同じようなことがまた起きてしまう恐れがあります。伝え方が難しいとこともあるかと思いますが、しっかり向き合ってくれてるんだと伝わる姿勢を見せていきましょう。

参考:「相手が求めていることを聴き取れますか? 介護の聴き方タブー集」誠文堂新光社

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