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特集・コラム 2020-08-09

事前準備ですべてが決まる——『介護の始まり』に備えて、今すべきこと

介護生活の始まりは突然やってきます。認知症や脳梗塞、転倒による骨折など、まだ心の準備ができていない状態から介護生活が始まることも珍しくありません。

いざというときに困らないために、介護に必要なことを知っておくことが大切です。この記事では、介護を始める際の準備についてご紹介します。

まずは「地域包括支援センター」を頼る

介護の準備を始める場合は、事前に「地域包括支援センター」に相談すると良いでしょう。地域包括支援センターは介護についてさまざまな相談に乗ってくれるところです。

地域での介護について相談できる「地域包括支援センター」

地域包括支援センターとは、要介護状態の高齢者が自分の住んでいる地域で快適に過ごせるようサポートするための機関のことです。地域で生活する高齢者とその支援、介護に関わっている人々を支えることが役割で、介護・医療・保険・福祉などの支援を、地域全体で提供する体制を目指しています。略称で「包括」とも呼ばれます。

地域包括支援センターは2005年に介護保険法改正で定められた施設で、それぞれの区市町村に設置されています。利用条件は、その地域に住んでいる65歳以上の高齢者であること、またはその支援に関わっていることです。もし、離れて暮らす親について相談する場合は、対象となる親が暮らしている地域の「地域包括支援センター」を利用しましょう。

地域包括支援センターの主な業務は「介護予防とケアプランの提案」「住みやすい地域ネットワークの構築」「介護や高齢者の総合相談窓口」「高齢者の権利を守ること」です。

・介護予防とケアプランの提案

要介護認定を受けた方やその予備軍にある方に対し、自立した生活が送れるようサポートをします。要介護認定を受けた方にはケアプランの作成を行い、これ以上介護状態が悪化しないよう健康維持のための方法を提案。要介護の予備軍の方には、介護予防サービスへの参加を促しています。

・住みやすい地域ネットワークの構築

地域住民や地域の医療関係者、介護の専門家などとのネットワークを構築し、高齢者にどんな問題が発生しているのかを把握。それを解決するために何をすれば良いのかを考え、実践します。具体的には、ケアマネジャーに対しての研修や、地域ケア会議などを開催しています。高齢者が暮らしやすい地域にすることが目的です。

・介護や高齢者の総合相談窓口

地域包括支援センターでは、高齢者のさまざまな相談に対応してくれます。必要があれば、行政の制度や民間のサービスとの仲介を行い、高齢者の悩みを解決します。介護の相談もできるため、初めて介護を行う方は何でも聞いてみると良いでしょう。

・高齢者の権利を守ること

高齢になると判断能力が低下し、詐欺に遭いやすくなります。地域包括支援センターでは、高齢者が詐欺に遭わないよう制度を活用してサポートします。また、虐待の早期発見や防止などの業務も行っています。

なぜ、地域包括支援センターへ行く必要があるのか?

「町の介護の相談窓口」ともいえる地域包括支援センターは、高齢者のさまざまな相談を総合的に受けつけてくれる施設です。そのため、地域包括支援センターをうまく活用することで、介護になってからの問題解決はもちろん、早い段階からの介護予防ができます。

また地域包括支援センターは、専門家が在籍していることも特徴です。そのため、地域包括支援センターに行けば、より詳しく的確なアドバイスをもらうことができます。

各センターには「保健師」「主任ケアマネジャー」「社会福祉士」の3つの専門職員がおり、相互に連携しながら働いています。また、これらに準ずる人が配置される場合もあります。

・保健師

健康の維持管理を行う仕事で、介護予防や予防のためのケアプランの作成を行っています。また医療や介護に関する相談にも乗ってくれます。

・主任ケアマネジャー

介護関連のことを相談できる職務です。また地域にいるケアマネジャーの教育やケアプランを作成する際のアドバイスなどもしています。

・社会福祉士

総合的な相談を行う職務で、地域包括支援センターの基本的な相談の窓口です。高齢者の権利擁護などを行っています。この他にも、安否確認や虐待の防止なども担当しています。

地域包括支援センターを訪れる際は、電話で予約をしておきましょう。突然訪れると対応ができない場合もあるため、注意が必要です。

介護が必要になる対象者の状態を知る

介護の準備を行う前に、まず「介護状態とは何なのか」を知る必要があります。ここからは、介護度の詳細をご説明します。

要介護状態区分を知ろう

地域包括支援センターで、どのような生活をしたいか伝えると、介護予防ケアプランを作成してくれます。ただし、受けられるサービスや給付額は「要介護状態区分」によって違います。

要介護状態区分は、まず大まかに「要介護」と「要支援」「非該当」に分けられます。要介護は、常に介護を必要とする状態のこと。要支援とは、常に介護を必要とはしないものの日常生活に支障がある場合です。非該当は、どちらにも該当しません。

さらに要介護は1~5、要支援は1~2に分類されています。

・要介護1
自分で立ち上がったり、歩いたりすることはできますが、不安定。部分的に介助が必要な状態です。

・要介護2
自分で立ち上がることや歩くことが困難で、日常生活の一部、もしくはすべてに介助が必要な状態です。

・要介護3
自分で立ち上がったり、歩いたりすることができません。日常生活では全面的に介助が必要です。

・要介護4
日常生活が難しく、入浴や着替えなどのすべてにおいて介助が必要な状態です。

・要介護5
介助がなければ生活が難しく、また意思の疎通もできません。

・要支援1
日常生活は、自分の力で行えます。ただし、要介護状態を予防するために、少し支援が必要です。

・要支援2
日常生活に支援が必要ですが、訓練によっては機能が改善する可能性があります。要介護には至りません。参考元:公益財団法人長寿科学振興財団運営『健康長寿ネット』

介護が不必要となるよう予防できないか、その可能性を探る

要介護認定されれば支援を受けることができるとはいえ、最も良いのは介護なしで生活できることです。介護を予防するには、介護が必要になる前に予防に取り組みましょう。

そもそも、要介護状態になる原因は何なのでしょうか? 厚生労働省の平成22年度「国民生活基礎調査(参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/4-2.html)」によると、介護になる最も多い原因は「脳血管疾患(脳卒中)」で、21.5%。続いて「認知症」が15.3%、「高齢による衰弱」が13.7%、さらに「関節疾患」が10.9%、「転倒・骨折」が10.2%となっています。この結果から、介護が必要になる原因の約5割は、老化現象であることが分かります。

つまり病気によって介護になるのではなく、ケガや衰弱による運動機能の低下で体が動かなくなり、要介護状態になることが多いということです。

介護の手を必要としないための予防

高齢期になると病気でなくても身体機能や動作能力が低下します。体を動かさなくなると、少しの期間で一気に要介護の状態に進む可能性があります。日常的に老化のサインを見逃さずに対処することで、健康的で自立した生活への支えになります。

要介護状態にならないためには、日常的に体を動かすことがベストです。散歩に行ったり、家で簡単なストレッチや筋力トレーニングをしたりするのも良いでしょう。

ただし、高齢者の状態によっては、運動が簡単ではない場合もあります。無理せず自分のペースを心掛けましょう。目安としては、1日おきに週2~3回程度、軽く運動をすることをおすすめします。

ケアプランを作って介護の計画や費用をはっきりさせる

介護において特に大切なものが「ケアプラン」です。ケアプランを作ることで、どんなサービスを受けるのか、それによってどのくらいの費用がかかるのかをはっきりさせられます。

日本の介護費用の平均

介護にかかるお金は、それぞれの介護の内容や種類、期間によって大きく変わります。公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」(参考:https://www.jili.or.jp/press/2018/pdf/h30_zenkoku.pdf)によると、介護費用(一時的な費用の合計)は平均69万円で、介護費用(月額)は平均7.8万円でした。

このように、介護が必要になると多額の費用がかかります。また、自宅での介護ではなく介護施設や高齢者住宅に入居すると、さらに費用がかかる場合もあります。早い時期から介護にかかる費用を確保しておくことが大切です。

ケアプランを作ろう

要介護または要支援と認定されると、ケアマネジャーによって「介護計画(ケアプラン)」が立てられます。ケアプランとは、利用する高齢者が自立した生活を送れるよう、要介護者に合わせたサービスを提案した計画書のことです。要介護者は、それに沿ってさまざまなサービスが受けられるようになります。

ケアプランでは、介護の場所はどこなのか、どの程度の介護度なのかによって内容が違います。

例えば、要介護3の方であれば、下記のようなケアプランが提案できます。

・毎日の身体介護
・週に2回のデイサービス
・週に1度の訪問看護
・週末はショートステイ

受けるサービスがケアプランではっきりすれば、かかる費用も分かります。

また「介護保険の範囲内で収めたい」「自己負担してでもなるべくプロに介護を任せたい」など、ケアプランは希望によって変えられます。自分が納得できるケアプランを提案してくれるケアマネジャーを探すことも大切です。

おわりに

介護は突然やってきます。今すぐに介護サービスを利用しなくても、困ったら相談に乗ってくれる機関があることを知っておくだけでも安心です。予防対策を行いながら、突然始まるかもしれない介護に事前に備えておきましょう。

参考元:
地域包括支援センターとは?高齢者とその家族をサポートする|みんなの介護
地域包括支援センターとは? その活用法|LIFULL 介護
地域包括支援センターとは|高齢サポート・音羽
保健師|森ノ宮医療大学
介護保険の介護度とは|公益財団法人長寿科学振興財団
よくわかる介護保険と利用料金|ニチイの介護サイト
介護が必要になる前に|ニチイの介護サイト
介護予防とは?その目的と取り組みの具体策|みんなの介護
アクサ生命「人生100年の歩き方」
ケアプランとは?作成方法や注意すべき点|LIFULL 介護
明治安田生命グループ「MY介護の広場」

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