健康的な生活を送るための知恵を伝える予防看護師【介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画 看護師×フォトグラファー 森末美穂さん】#1
業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画」。今回は、看護師でフォトグラファーという異色のキャリアを持つ森末美穂さんにお話を伺います。
森末さんは、総合病院勤務の看護師や訪問看護師を経て、ふたりのお子さんを出産。看護師の仕事は、誰かに雇われて週5で子どもを保育園に預けないと働けないと思っていたそうですが、別の働き方があることを知り、フリーランスの道を選択。現在、看護師としてのメインワークである予防看護師の講師とはどんなお仕事なのか詳しくお聞きします。
お話を伺ったのは
看護師×フォトグラファー
森末美穂さん
大学卒業後、総合病院に入職、整形外科や内科勤務。訪問看護師を経て、現在は予防医学/地球環境講師として活躍。子どもの成長記録を残すために本格的にカメラを始め、2020年フリーランスとして起業。プロフィール撮影、サロンフォト、イベント撮影など手がける。ビジネスコミュニティMy Palette、ママコミュニティかまくらパラレル主催
同期やスタッフとがんばった総合病院勤務時代

2人の姉妹のママでもある森末さん。
――まずは看護師としてのキャリアを教えてください。
大学卒業後、神奈川県内にある総合病院に入職しました。その病院は、病棟数を増やしてでも患者を受け入れるという理念の下、日本一救急車がくる病院でした。最初に配属された整形外科には、高齢者の骨折から若い層のケガまでひっきりなしに患者さんが運ばれてきて、それは忙しい現場でしたね。
――それほど多忙な整形外科は希望で配属されたのですか。
希望したうちのひとつでした。大学のときから訪問看護に興味があったのですが、訪問看護は基本的にひとりでまわるので、知識や経験が乏しいうちはちょっと不安だと思ったんです。総合病院でいろんな経験をして、最終的に訪問看護ができたらいいなと考え、まずは整形外科に3年。その後、腎臓内科や糖尿病内科へ異動。病棟のナースが外来も兼ねる病院だったので、そこでいろいろなことを経験させていただきました。
――中でも大変だったことはありますか。
体力的にはきつかったけど、同期やスタッフの方とがんばった時代という記憶ですね。
しいて言えば、整形外科ではケガなど目に見えて分かりやすい症状がほとんどですが、内科では生活習慣から引き起こされる病気もあり、退院してもまた戻ってきてしまう患者さんも多いんですね。長年の習慣を改めていただくためにアドバイスさせていただくんですが、その際にうまくコミュニケーションを図ることが大変だったかもしれません。
――目に見えないご苦労があるのですね。結局、総合病院には何年勤めたのですか。
7年勤めました。そろそろ妊活したかったのと、以前から訪問看護がやりたかったので、夜勤ありのフルタイムから週3の仕事へシフト。条件と給与面、それから訪問看護がはじめてだったのできちんと研修できるところを探し、老人ホーム系列の訪問看護ステーションに転職しました。
研修後1回目は先輩がついてくれましたが、「7年看護師の経験があるから大丈夫でしょ」と2回目からはもうひとりで訪問することに(笑)。でも老人ホーム内の利用者さんも多く、ステーションに戻れば分からないことは先輩に聞けたので、それほど困ったことはなかったですね。
――訪問看護師と病棟看護師の違いはどんなところですか。
病棟看護師は治療のためのケアですが、訪問看護師は病気が悪化したり再発しないように患者さんの生活を維持するところでしょうか。訪問看護は基本的に看護師ひとりで行くので、指示書はありますがその範囲内で主体的にケアできるという点もあります。毎週お伺いするので、家族に近いような存在だと思ってくれる利用者さんも多いんです。
オンライン講座で予防医学の講師を担当

オンライン講座は多いときで50名以上の参加者が。
――いま看護師としてどんな働き方をされているのですか。
産後、長女を自主保育園に預けて、それはそれは楽しく子育てしていましたが、2人目が生まれたタイミングで少しずつ仕事を再開したいという気持ちが芽生えてきました。看護師の仕事は、誰かに雇われて、週5で子どもを保育園に預けて働くしかないと思っていましたが、それとは別の働き方があることをママ友に教えてもらったんです。
現在は、重症心身障害児の放課後デイサービスで子どものバイタルを測ったり、おやつを注入したり、散歩に行ったりする仕事を週1回。それとママ友に紹介してもらった「Beeコミュニティ」で予防看護師としてスピーカーをさせていただいています。
――予防看護師のスピーカーとはどんなお仕事なのでしょうか。
「Beeコミュニティ」は、女性がバランスよく幸せを拡張して笑顔で過ごすためのコミュニティ。自立に必要な願望、健康、人間関係、経済の4つをテーマにオンラインセミナーやイベントを開催しています。そのメンバーと運営スタッフを経て、現在はオンライン講座で予防医学と地球環境の講師を担当しています。
――講座ではどんなお話をされるのですか。
病院に勤務する看護師は病気の人を看護するのが仕事ですが、ここでは病気にならないようにいかに健康的な生活を送るか、そのための知識をお伝えしています。急性期には薬が必要なことも多いですが、どんな選択をしたら病気になりづらいか、またなんのための健康なのかを自分自身が導き出せる内容になっています。
――講座はどれくらいの時間?
約2時間ですね。参加者の方が講座を聞くだけでなく、今日から何を実践するかというところまで落としこむことを目標にしているので、参加者の方に話してもらう時間もあるんですよ。
――予防看護師になるには資格が必要なのでしょうか。
一般社団法人からだファーストの「予防習慣ヘルスアドバイザー」という資格を取得しています。その知識をもとにアレンジを加えて予防医学を伝えています。
国家試験の看護師資格は、主に病気の人をどうやってケアするかを学ぶので、予防の知識はそれ以外に自分で学ぶ必要があるんです。看護師としてのキャリアを積む中で、治療だけでは根本的に解決しないことに気づき、東洋医学やアロマなど予防医学を学ぶ人が多いのではないでしょうか。
後編では森末さんのもうひとつのお仕事、フォトグラファーについて。どんな経緯でフォトグラファーを目指し、どんな撮影をしているのか。またどうやって仕事を増やしているのかお伺いします。
取材・文/永瀬紀子