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介護・看護・リハビリ 2020-09-18

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.11】毎回、ヘルパーの仕事を採点するFさん。気持ちが折れそう…。

サービスの内容も多岐にわたり、接する利用者の背景もさまざまな介護のお仕事。人と深くかかわる仕事ゆえの困りごとにも、日々直面しているのでは? そんな介護職の方のお役に立てれば…と、現場での困りごととその対処法を紹介する当企画。今回は、「採点する利用者」を取り上げます。

「先生」と呼ばせ、ヘルパーの仕事に採点をするFさん。いつも低い評価で気持ちがつらい…。

週2回、訪問介護サービスを利用しているFさん。かつて中学校の教師をしていたそうで、担当ヘルパーに自分のことを先生と呼ばせ、毎回、仕事ぶりに点数をつけて評価します。担当のヘルパーも最初のうちはFさんに気を使って、面白がっているふりをしていました。しかし、あまりにも低い評価ばかりなので、だんだんとうんざりとしてきています。

プライベートな人付き合いであれば、こういう人と距離をとって接することも可能です。しかし、介護サービス提供者と利用者という関係性においては、距離をおくことはできません。

では、どういう心持ちで、どのように対応していくとよいのでしょうか。ポイントを抑えながら見ていきましょう。

ポイント1: Fさんの評価を言葉のままには受け取らない

人に点数をつけられることは、気持ちがよいものではありません。それが、あまりよくない評価であればなおさらです。ですが、Fさんとの関係は、あくまでも利用者と介護サービス提供者です。Fさんからの低い評価を言葉のままに受け取る必要はありません。

だからといって、不満気な態度や反論を返すことは、「Fさんの思いや立場を最優先する」という介護現場でのトラブル解決の大原則に反します。その後の信頼関係を左右することになりかねないので避けましょう。まずは、Fさんの言動に隠されている「Fさんが望んでいること」を考えましょう。

ポイント2: 自分の価値観はひとまず置いておく

Fさんが自分のことを『先生』と呼ばせていることからも、「先生でいたい」ということが分かります。「自分が先生で、ヘルパーが生徒」という『疑似的な』関係性を望んでいるのです。

相手の望んでいることを見極めるのは難しい場合もありますが、このケースにはとても分かりやすいですね。繰り返しになりますが、「利用者の思いを最優先する」のが介護現場においてのトラブル回避の大原則です。望み通りに演じて共感するのが、ベストな対応法だといえます。

しかし、『先生・生徒ごっこになんか付き合いたくない』という感情や価値観を持つ人もいるでしょう。現実的には、この感情や価値観がジャマをして、素直に演じられないものです。だからこそ、相手の望んでいることをそのまま受け止めることに意識を向けるためには、自分の価値観をひとまず置いておくことが重要なのです。

ポイント3: Fさんが「期待する役」を演じて、本音を聴き取る

Fさんの場合、例えば「今日の料理は45点てところかな。」など、評価された時は本音を汲み取るチャンスです。「良い点をとるにはどうすればいいですか?」など、生徒役になって聞いてみましょう。味付けが好みよりも濃い、固かった、苦手な食材があったなど、見えてくるものもあるはずです。

どんな先生だったのか、何を大切にしていたのかなど、Fさんの現役時代に興味を持って接していくと、新しい発見にもつながりやすいでしょう。ぜひ、チャレンジしてみてくださいね。

「望む世界観がはっきりしている」利用者へやってはいけない2つのこと

1.世界観・価値観を否定しない
2.言動をそのままに受け取らない

介護現場でのトラブルは、利用者の思いや立場が尊重されなかったことで起こることが多くあります。利用者が望んでいる世界が分かるのであれば、その世界で期待された役を演じることが、介護サービスや信頼関係をスムーズに運ぶことの潤滑油となります。

とはいえ、セクハラやモラハラになり得るものには事業所全体での対応が必要になってくることも。利用者の言動の裏にある本心を考えるようにするとよいでしょう。

文:細川光恵
参考:「相手が求めていることを聴き取れますか?介護の聴き方タブー集」誠文堂新光社、「介護現場の「困りごと」解決マニュアル」中央法規

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

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