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介護・看護・リハビリ 2020-09-06

利用者「そのごみは床の穴に入れておいて!」介護福祉士の日常あるある #8 【Q&A編】

利用者の方がリラックスして気持ちよく過ごす生活空間を提供する掃除の介助。部屋をキレイにするという達成感に加え、利用者さんの驚く言動やクスっと笑ってしまう一面に触れることも。今回は、掃除の実態を元ベテラン介護福祉士の國廣幸亜さんにインタビュー。実際に経験した印象に残ったエピソードをご紹介します。

Q.利用者の方に感銘を受けたエピソードはありますか?

A.独居の利用者さんの寝室を掃除していた時、良い天気だったので布団を干そうとしたら「布団を干す良い場所があるからついてきて」と利用者さんに言われ、ついていったらそこは、近所の公園のフェンス。「公園のフェンスを利用して干したら、ご近所の方に何か言われるのではないか」と悩んでいると、通りすがりのご近所の方が「あ〜ここはおばあちゃんが布団を干す場所ってみんな知っているから大丈夫!」と利用者さん専用の布団干し場であることを教えてくれました。ずっと昔からこの地域に住んでいて、ご近所の方から慕われているんだと感動しましたね。

Q.ほかにはどんなエピソードがある?

A.あとは、思い返したら笑ってしまうような経験もありましたね。

1つは、かなり昔に建てられた日本家屋で廊下を掃除していた時です。ごみを取るために利用者さんにちりとりの場所を聞くと「ゴミはこの穴に入れちゃっていいから」と言い、廊下の床に空いた床下が見えるほどの大きな穴に指をさされました。とても機能的で魅力的だなと思いましたが、この穴に向かってごみを入れ続けていくと、床下にゴミがたまりひどいことになると思ったので、「やっぱりちりとりでごみを取りますね!」とその歴史に終止符を打ったことがありました。

もう1つは、とある地方でヘルパーをしていた時のこと。お風呂場を掃除しようとしたらそこに巨大なクモが! 虫が大の苦手な私は思わず「わあああ!」と叫び、利用者さんが様子を見にくるはめに…。すると「あ〜こういう時はね」と言って鋭い眼光でシャワーを手に取り、熱湯でクモを浴びせ討伐。くるりと背を向けてお部屋へ帰っていく姿は百戦錬磨のハンターのようでした。後日、コウモリが部屋の中を飛んでいた時も同居人のような振る舞いで全く気に留められず、その雄姿に私の方が頼りたいような、何とも頼もしい気持ちになりました。

また、掃除の直接の関係はありませんが、テレビを見ることを日課にしているご夫婦のご自宅へ訪問した時の話です。ご夫婦にとって「ああでもないこうでもない」と討論されるほど気に入られているワイドショーの番組がありました。最初は夫婦間で話をしていたのですが、ある日「ヘルパーさんはどう思う?」と意見を聞かれるようになりました。最初は遠慮して無難な答えを返していたのですがだんだん慣れてきて「これは酷いですね、私だったら家出をしてしまいます」など、少しだけ辛辣な答えを返したところご夫婦に気に入られました。それをきっかけに毎週コメンテーターのようになって何をしに来ているんだろうと後悔したことがあります。

ただ、こういった刺激的な経験もあってか、掃除に興味を持ちやりがいを感じることもありましたね。

Q.掃除でやりがいを感じたときは?

最初不安そうだった利用者さんがだんだん私のことを頼ってくださるようになり、リラックスしてくださっている事が増えてきた時です。笑顔が見えたり普段話さないような本心を語ってもらえたりした時は、私が通ってくることで少しは安心して過ごしていただけたのだろうか、とやりがいを感じました。最初は何も知らなくて戸惑うことも多いですが、掃除道具の場所や手順を覚えて時間内にきっちり綺麗になった部屋を完成させられると、達成感で心の中でヨシッ! とポーズを決めるほど嬉しかったですね。

Q.掃除に苦手意識や不安を抱えている方に向けて伝えたいことは?

A.通い続けることで利用者さんに心を開いていただき、掃除をするプレッシャーが減っていきます。

新たな家で掃除をすることに、私にはとてつもなくプレッシャーで重責を感じていましたが、通い続けているとだんだん私がご自宅に訪問して掃除をする事が普通になり、利用者さんも普段通り過ごしてくださっているなと感じる事が多くなりました。ある時は体調を崩した利用者さんに「今日は掃除をしなくてもいいから話を聞いて欲しい、手を握っていて欲しい」と言われることも。

単なる家事、掃除をするだけと思われがちですが、それは利用者さんの生活を支え普段通り暮らしていただくというとても大切なことです。健康で自分で何でも出来てしまう時は気づきにくいことですが、安心して過ごせるということがどれほど貴重なことか実感しました。介護の仕事の奥深さを感じられることが出来た仕事の一つだと思っています。

國廣さんが思う・掃除の魅力3選

1.利用者さんの勇ましい人柄に触れる経験ができる

2.掃除を通して利用者さんの笑顔を見ることができる

3.時間内に終わらせて達成感を得ることが出来る

取材・原文/井上桂佑(レ・キャトル)
イラスト・漫画/國廣幸亜

教えてくれたのはこの人!

國廣幸亜さん

訪問介護や介護老人保健施設、デイサービスなど多くの介護現場を渡り歩いたベテランの介護福祉士として活躍し、現在は自身の豊富な介護経験を題材にした漫画などを手がける人気の漫画家として活躍中。
所有資格:介護福祉士

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