チームで楽しみながら心身の機能向上を図る『ダンボールパック』と『ボール転がしサッカー』【介護レクリエーションvol.24】
現場で役立つレクリエーションのアイディアをご紹介する「介護レクリエーション」。
頭だけでなく体も使う「ゲームレクリエーション」は、さまざまな刺激を得られることから介護施設でも人気の高いアクティビティ。そこで今回は、チーム戦形式で行うゲームレクリエーションを、レクリエーション・インストラクターの大野孝徳さんに教えていただきます。
「今回ピックアップしたゲームは『ダンボールパック』と『ボール転がしサッカー』の2つ。『ダンボールパック』は、ダンボールで作ったパックをゲートボールのスティックを使って指定のエリアに打ち入れるゲームです。スティックを『握る』、パックを『打つ』動作が必要になります」(大野さん)
一方の『ボール転がしサッカー』は、カラーボールを新聞紙で作った新聞棒を使って自分のチームの箱にシュートするゲーム。『ダンボールパック』同様、新聞棒を『握る』、カラーボールを『打つ』動作が必要になるそうです。
では、『ダンボールパック』と『ボール転がしサッカー』を行うことによって期待できる心身面の効果とは?
「『ダンボールパック』はスイングをすることで筋力低下を防ぎ、思考力・認知力を養う効果が期待できます。一方の『ボール転がしサッカー』は、手・足・目など、別々に動く機能をまとめて動かす協調運動になるほか、体幹の運動にもなります。加えて、集中力・競争心を養う効果も期待できます」(大野さん)
ダンボールパック
【対象者】姿勢保持(座位、立位)がある程度保てる方
【レクの目的】手指・腕の運動、思考力・認知力のトレーニング
【人数】2人以上
【実施に好ましい場所】ホール
【必要な道具】ダンボールパック2個、ゲートボールのスティック(ない場合はほうきでも代用可)2本、ビニールテープ(赤などの目立つ色)1本、記録用のホワイトボード
【制限時間】10分~
【レクリエーションの内容】ダンボールで作ったパックをゲートボールのスティックを使ってエリアに打ち入れるゲームです。
レクを始める前の準備
・スタッフは事前にゲームに使用するパックを作りましょう。ダンボール紙8枚を直径18cmの円形に切り抜き、4枚ずつ貼り合わせて2個のパックを作ります。パックの見分けをつけるため、片方のパックの上面を油性ペンなどで赤色に塗っておきましょう。
・スタッフは事前にパックを入れる60〜70cm角のエリアを、ビニールテープなどで囲って作っておきましょう。
遊び方
1.同じ人数になるように参加者を2チームに分け、参加者同士で話し合ってパックを打つ先行・後攻を決めます。順番を決め終えたら各チームから1名ずつ前に出て、エリアから1.5mほど離れた位置に向かい合うようにして座ります。スタッフは参加者の足元にパックを配置しましょう。
2.先行チームの最初の人はゲートボールのスティックを使い、エリアに向かってパックを打ちます。先行の人が打ち終えたら、後攻チームの最初の人もパックを打ちます。カーリングのように相手のパックに当てて押し出してもOKです。両方のチームが打ち終えたら、スタッフはホワイトボードなどに結果を記録し、パックを参加者の足元に戻しましょう。
3.2を5回繰り返し、より多くエリアにパックが入った人の勝ちとなります。
4.2番目以降の人も2と3を繰り返し、最終的に勝利数の多かったチームの勝ちとなります。
進め方のコツ
・ゲームは、参加者の身体状況に合わせて立って行っても座って行ってもOKです。
・スティックが無い場合は、ほうきを代用してもOKです。
ボール転がしサッカー
【対象者】前傾になっても座位保持が出来る方
【レクの目的】協調・体幹運動、集中力のトレーニング、競争心を芽生えさせる
【人数】8人以上
【実施に好ましい場所】ホール
【必要な道具】ふたのないダンボール箱4個(色の異なるダンボール箱を2つずつ用意)、カラーボール20~30個、参加人数分の新聞棒、参加者が使用する椅子など
【制限時間】10分~
【レクリエーションの内容】新聞棒を使ってカラーボールをゴール(箱)に入れるゲームです。
レクを始める前の準備
・スタッフは、ゲームで使用する新聞棒を事前に作っておきましょう。1日分の新聞紙を丸め、両端と中心をビニールテープで巻くなどしてしっかり止めます(色付きだとカラフルな棒になります)。
遊び方
1.同じ人数になるように参加者を2チームに分け、2色ある箱のうちどちらのチームがどの色の箱にボールを入れるのかを事前に決めておきましょう。参加者はチームごとに1列になり、相手チームと向かい合わせに座ります。スタッフは参加者全員に新聞棒を渡し、参加者の両端に、色の異なるダンボール箱を参加者から箱の底面が見えるように1つずつ置き、中央にカラーボールを配置します。
2.スタッフの「よーいドン」の合図が聞こえたら、参加者は新聞棒を使ってボールを転がし、左右にある自分が入れるべき色の箱の中にボールを入れます。誤って相手チームの箱にボールを入れてしまった場合は、相手チームの得点(オウンゴール)になってしまうので注意しましょう。
3.全てのボールを箱の中に入れ終えたら、ボールの数を数えましょう。
同じ色の箱同士でカラーボールの数を合算し、より多く箱の中にボールを入れることができたチームの勝ちとなります。
進め方のコツ
・ボールが箱から出たり、別の場所に転がってしまった場合は、スタッフがボールを拾い、再びゲームの輪の中に戻し入れてあげましょう。
アレンジ
・苦戦している参加者が多い場合は、色の異なるダンボール箱を1つずつにし、箱の位置を入れ替えて2回行うように促しましょう。
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今回ご紹介したレクリエーションは、参加者同士で助け合いながら心身の向上を図れるゲームになります。手指・腕の運動を行いたいときは『ダンボールパック』を、協調・体幹運動を行いたいときは『ボール転がしサッカー』がおすすめです。参加者のレベルを考慮しながら是非現場でも取り入れてみてください。
イラスト:SMILES FACTORY
文:小沼奈央(レ・キャトル)
教えてくれたのは…

大野 孝徳さん
合同会社A-assist代表、介護福祉士、介護予防指導士、レクリエーション・インストラクター。学生時代は子ども会集団指導者講師として岐阜県内でレクリエーション指導に従事。そこでの経験が評価され、介護業界に入職。介護職・相談員・管理職、在宅・施設両面での介護業務と、介護現場において幅広く活躍。2016年に独立し、A-assistを設立。訪問型介護予防体操教室やレクリエーションサポート活動を展開。現在も現場に入り介護福祉士として従事する傍ら、「え~(良い)アシスト」を提供するべく全国を対象に事業を展開している。