介護現場ではアンガーマネジメントが重要!5つの実践方法や具体例、学べる方法についてご紹介
介護職の現場は利用者との距離が近く、コミュニケーションのとり方に悩んでしまう方も少なくないでしょう。高齢者や障がい者の介護においては、要介護者のちょっとした言動やコミュニケーションのとり方によって、イライラしてしまうシーンも考えられます。
そんな日常における怒りに対処する方法が、アンガーマネジメントです。
しかし、アンガーマネジメントとはいったい何なのか、どんなことを実践すべきなのかについて、よくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、介護職が日々の現場で直面するであろう事態に対し、アンガーマネジメントの概要や実践方法、具体例と対処法、アンガーマネジメントを学ぶ方法について解説します。
また、介護職として自分に合った職場を見つけるための方法についても紹介します。
アンガーマネジメントの実践方法や学び方について知りたい方は参考にしてください。
アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントとは、自分の中の怒りの感情と向き合い、うまくコントロールしていくための心理的トレーニングのことです。1970年代のアメリカで生まれたとされる考え方で、必要なときには怒り、不要なときには怒らないようにすることを目的としています。
介護業界や医療福祉、アスリートの精神トレーニングなどに広く取り入れられています。介護職と要介護者の関係だけでなく、職場の人間関係にも応用できる考え方です。
介護現場におけるアンガーマネジメントの需要は高まっている
2016年に厚生労働省によって行われた「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」によれば、要介護従事者による高齢者虐待と認められたものが452件あり、市町村への相談は1,723件にのぼりました。
前者は前年度よりも10.8%増加し、後者は5.1%ほど増えている計算になります。
この調査結果は、介護現場でストレスが原因で虐待に及んでしまう介護職がいることを反映しており、アンガーマネジメントの重要性が高まっているといえるでしょう。
引用元
厚生労働省:平成 28 年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」 に基づく対応状況等に関する調査結果
介護現場でアンガーマネジメントを実践するべき理由
介護現場でアンガーマネジメントを実践すべき理由は、以下の3つにまとめられます。
・怒りの原因を整理して的確な対処法について考えられる
・怒りを感じてしまう頻度がへり、仕事のストレスをへらせる
・業務に対するモチベーションの維持・向上に役立つ
アンガーマネジメントを取り入れることで、怒りの原因と対処法について冷静になって考えることができるため、頭に血がのぼって暴力や暴言に走ってしまうリスクがへらせます。
また、適切なアンガーマネジメントの実践によって怒りを感じる頻度がへることで、介護の仕事に対するストレスをへらし、やりがいや達成感を感じやすくなる効果も。
自分と周りのためにも、アンガーマネジメントを有効活用することは有益です。
介護現場でアンガーマネジメントを実施する5つの方法
介護現場におけるアンガーマネジメントの実践方法には、以下の方法が挙げられます。
・心を落ち着けて6秒間耐えてみる
・怒りのレベルに点数をつけてみる
・自分の常識を押し付けない
・頭の中でポジティブなキーワードを復唱する
・ゆっくりと深呼吸するようにする
少し一息ついて冷静になって自分を客観視することで、その場の怒りに身を任せて失敗してしまうリスクを大きくへらせます。具体的な実践方法についてチェックしましょう。
1.心を落ち着かせて6秒間耐えてみる
人間の怒りのピークは、6秒程度しか続かないと言われています。怒りで我を忘れそうになったら、とりあえず6秒間は待ってみるようにしましょう。6秒後には冷静になって物事を判断できるようになり、利用者への暴力や暴言のリスクをへらせるはずです。
怒りをぐっとこらえながら、怒りの原因をメモ用紙に書き留めてみるのもおすすめです。
怒りの原因を書いているうちに、意外と大したことではないと感じるかもしれません。
2.怒りのレベルに点数をつけてみる
介護現場で怒りを感じたときには、怒りの度合いを頭の中で点数化してみるのもおすすめです。たとえば、人生の中で最も忘れがたい怒りの経験を10として、日常の介護業務で遭遇するイライラすることが3〜5秒程度であれば、「あの時と比べたらマシだな」と思えるかもしれません。
怒りの度合いを数値化して過去の経験と比較しているうちに、いつの間にか怒りも消えていくでしょう。
3.自分の常識を押し付けない
介護現場で怒りを抱くシーンでは、担当している利用者や同僚の行動に対し、「〜をするべき」「〜をやって当然だろう」と、自分の中の常識を押し付けていることが多いです。
そうすると、自分が設定した「当たり前」のハードルを越えられなかったときに、「なぜこの人は私をイライラさせるのだろう」と怒りを感じてしまうことにつながるでしょう。
利用者それぞれの常識や行動様式について把握した上で、利用者のとる行動について受け止め、いち介護職員として冷静になって柔軟な対応をとることが大切だといえます。
4.頭の中でポジティブなキーワードを復唱する
自分が怒りを感じてしまったときは、頭の中でとっさに「大丈夫」「こんなこと大したことない」「きっと明日には忘れているだろう」と、ポジティブなことを復唱しましょう。
怒りを感じているときに冷静になって、ポジティブなワードを何度も唱えていると、不思議と心が落ち着いてくるはずです。アンガーマネジメントの一種として実践しましょう。
5.ゆっくりと深呼吸をするようにする
怒りを感じた場所から離れられるなら、その場から離れてゆっくりと深呼吸すると、怒りの感情を紛らわせることができるかもしれません。張り詰めた職場で勤務している方は、休憩タイムに入ることで冷静になり、怒りがおさまる可能性も。
休憩タイムをうまく利用して、アンガーマネジメントをしてみてはいかがでしょうか。
介護現場のアンガーマネジメントの事例3選と対処法
介護現場でアンガーマネジメントを実践すべきシチュエーションや、具体的な対策について知っておくことで、自分が介護現場で働く場合の参考になるでしょう。
ここでは、介護現場の体験談をもとにアンガーマネジメントの実践例をご紹介します。
1.数十分おきに同じことを質問される
グループホームで働くAさんは、初めての夜勤で、特定の入所者に数十分おきに同じことを質問されることに悩まされました。慣れない夜勤の仕事で自分1人ですべての業務をこなさなければならないという重圧から、入所者に対する怒りを感じたと回想しています。
Aさんはこれでは怒りが募る一方だと考え、怒りを感じたら冷たい水で顔をバシャバシャ洗ったり、フルーツを咀嚼したりすることで心を静めたそうです。
2.入居者によるセクハラ被害に遭う
有料老人ホームで働くBさんは、入居者から胸を触られるなどのセクハラに悩まされていました。普段であれば注意できていたBさんも、背後から忍び寄られたうえ、とっさの行動であったために、セクハラを予期できなかったそうです。
セクハラに対して怒りを感じたBさんでしたが、状況を飲み込むためにまずはその場から離れて上司に事の顛末を報告しました。そして、ホーム長やケアマネジャーに相談した結果、配属フロアが変更されたそうです。その後、セクハラ被害はないと話しています。
3.介護サービスの利用者によるせん妄
介護職員のCさんは、勤務先の精神病院で患者のせん妄に遭遇しました。目の前で暴れる患者に対して、怒りに任せて荒っぽい言葉を使ったことを後悔しているそうです。
Cさんは同じような介護の悩みを抱える座談会に参加し、自分の悩みや他人が抱えている悩みを共有することで、それ以降の介護に対する自分の姿勢を改められたと言います。
予想外の行動には動揺せずに、淡々と患者と接することが求められるでしょう。
介護現場のアンガーマネジメントについて学ぶ方法
介護現場のアンガーマネジメントについては、以下の方法で学ぶことができます。
・書店やインターネットで買える書籍で学ぶ
・アンガーマネジメント講座で学ぶ
ここでは、アンガーマネジメントの学ぶ方法や場所について見ていきましょう。
1.書店やインターネットで買える書籍で学ぶ
アンガーマネジメントの理論について独学で学ぶなら、書店やインターネットでアンガーマネジメントに関連する書籍の購入がおすすめです。以下のような書籍があります。
・『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』
・『マンガでわかる介護職のためのアンガーマネジメント』
・『イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法』
アンガーマネジメントの基本からそもそも怒りとは何か、実際の事例に対する具体的な対処法にいたるまでが学べる書籍やマンガとなっており、独学で学ぶのにおすすめです。
引用元
中央法規:イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ
誠文堂新光社:マンガでわかる介護職のためのアンガーマネジメント
第一法規株式会社:イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法
2.アンガーマネジメント講座で学ぶ
アンガーマネジメントについて講義形式で学びたい方は、アンガーマネジメント講座の受講もおすすめです。実施する団体によって受講料や時間はバラバラですが、60〜90分程度で、数千円の費用で受講できるアンガーマネジメント講座が多いようです。
また、アンガーマネジメントの資格を取得できる認定講座もあります。一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会が開講しているアンガーマネジメントファシリテーター講座(対面で2日間、オンライン受講も可能)を受講すれば、講師の資格を取得可能です。
アンガーマネジメントをより実践的に学びたいなら、資格を取得できる講座の受講もおすすめです。
引用元
一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会:講座情報
自分に合った介護職の職場を見つける方法
自分に合った介護職の職場を見つけるのは、なかなか難しいかもしれません。自分が希望する給与水準や福利厚生・働き方・自分に合った職場の雰囲気を事前にリサーチしなければいけないからです。
ここでは、自分に合った介護職の職場を見つけるおすすめの方法をご紹介します。
1.介護に特化した転職エージェントを利用する
自分に合った職場を見つけるスタンダードな方法は、介護に特化した転職エージェントを活用することです。自分自身の職歴や経歴をもとに、担当の転職コンサルタントが自分に合ったベストな職場を探してくれます。自分で介護職の求人を一からリサーチして、希望する条件を満たしている職場を探す工程を代行してくれるのが心強いです。
2.希望に沿った職場が見つけられる求人サイトを活用する
自分にピッタリな職場を自分の基準で探したい方には、求人サイトの利用がおすすめです。
転職エージェントは担当者の裁量によって紹介される職場が決まってしまうため、自分の直感で「この職場の雰囲気は合わないかも」「もっと待遇のいい職場がありそう」と、自分の考えに従って気軽に職場を選別することが難しいのがデメリットです。
介護福祉業界に特化した求人サイトのリジョブなら、豊富な求人数の中から自分が希望する条件に絞って求人を検索でき、自分にとってベストな職場が見つけられます。
学んだアンガーマネジメントを活かして希望の介護現場に就職しよう!
この記事では、介護現場で重要性が高まっているアンガーマネジメントの基本的な考え方や重要性、実践方法、具体的な事例と対処法、学び方についてご紹介しました。
また、介護職の転職で失敗しないための職場の探し方についても確認しました。
アンガーマネジメントはその場の怒りに流されずに、一歩立ち止まって自分自身を客観視することで、怒りの衝動に任せた行動をコントロールするための方法です。
6秒間は我慢してみたり、深呼吸してみたり、ポジティブなワードを脳内で繰り返してみたりと、自分の怒りの感情を客観視する時間を作ることが大切だといえます。
業務中に過度なストレスを抱えないためにも、自分に合った職場探しが大切です。介護福祉業界に特化した転職エージェントや求人サイトの利用は、必要不可欠だといえます。
求人サイトのリジョブは介護福祉業界に特化した求人サイトです。都道府県別や雇用形態別、特徴別に求人をリサーチできるため、就職・転職満足度が高くなっています。
事実、リジョブのユーザーの転職満足度は驚きの98%※を記録しています。
自分に合った介護職の職場を見つけて、介護職になるという夢をかなえてください。
※転職満足度98%|リジョブ経由で採用された1,242名を対象に実施した満足度自社調査より(実施期間:2023年2月8日〜2023年3月8日)