柔道整復師法とは? どんな内容なの?|施術所の広告に関する取り決めとは
柔道整復師として業務にあたるうえで、しっかり理解しておかなければならないのが「柔道整復師法」。免許の取得から施術所の届け出、柔道整復師がおこなってよい業務まで、柔道整復の施術をおこなうために必要な規定がされている法律です。
なかでも、知らずに規定を破ってしまうことがあるのが広告に関する条文でしょう。柔道整復師法の概要と、施術所を開業するなら押さえておかなければならない、施術所の広告制限についてくわしく解説します。
柔道整復師法はどんな法律なの?
柔道整復師として働く際に、しっかり押さえておかなければならないのが「柔道整復師法」です。柔道整復師法には、どのようなことが定められているのでしょうか。
柔道整復師の管轄は?|厚生労働省
柔道整復師は医療系の国家資格であるため、厚生労働省が管轄しています。そのため、柔道整復師に関する規定や国家試験の実施、免許の許可などはおもに厚生労働省がおこなっているのです。
柔道整復師法はいつ公布・施行されたの?|昭和45年
柔道整復師法が作られたのは、昭和45年(1970年)です。4月14日に公布され、7月10日に施行されました。それ以前は、第二次世界大戦後に「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法」が過渡的に制定されていたものから、柔道整復師に関する部分を切り離して柔道整復師法となったのです。
柔道整復師法にはどんな規定があるの?
柔道整復師法のなかでは、どのようなことが定められているのでしょうか。続いては、目的や定義、などを詳しく見ていきましょう。
目的と定義
柔道整復師法は、柔道整復の施術が一定の技術と知識を持った施術師から適切に提供されることを目的に定められています。この目的のためにまず、柔道整復師を「厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とするものをいう」、接骨院などを「施術所」として「柔道整復師が柔道整復の業務をおこなう場所」と定義づけているのです。
免許|欠格事由や指定登録機関の指定など
柔道整復師の国家資格については、国家試験に合格したものに対して与えるとしています。また、柔道整復師の適正な業務がおこえない心身の障害や麻薬の中毒者などを欠格事由として定め、「免許を与えないことがある」としているのです。すでに免許を持っていたとしても、欠格事由に当たると判断されれば、厚生労働省は免許の取り消し、または停止を命ずることができます。
柔道整復師の名簿が備えられていて、国家試験合格者からの申請で登録されてはじめて、柔道整復師の免許が与えられることになるのです。実際には厚生労働省がすべてを直接おこなうわけではなく、柔道整復師研修試験財団が厚生労働大臣の指定する指定試験機関・指定登録機関として、柔道整復師の試験・登録の事務をおこなっています。
試験|受験資格や不正行為の禁止など
柔道整復師の国家試験を受験するためには、厚生労働省または文部科学省が指定した養成機関や大学で、3年以上の所定のカリキュラムを修了している必要があります。国家試験において不正行為を禁止するとともに、不正行為があった場合には受験を停止させることができるのが特徴です。
業務|業務の禁止や施術の制限など
柔道整復師でなければ仕事として柔道整復を行ってはならないとされていますが、医師が柔道整復をおこなうことは問題ありません。応急処置を除き、柔道整復師であっても脱臼や骨折の患部へ施術する際には医師の指示が必要です。
施術所|施術所開設の届出や使用制限など
接骨院などの施術所を開設する場合、開設していたものを変更する場合には10日以内に厚生労働省に届出をすることが定められています。施術所の構造設備などに問題のある場合には、改善するまで使用が制限されるのが特徴です。
雑則|広告の制限や権限の委任など
柔道整復師法第6条雑則では、「広告の制限」や管轄が厚生労働省であっても、実際に管理するのが保健所である「権限の委任」なども定められています。
罰則
柔道整復師法は罰則規定のある法律です。違反した場合には「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」を科されることがあります。
押さえておきたい! 施術所の広告制限とは?
柔道整復師法第6条の雑則では、第24条で「広告の制限」が定められています。広告を出してはいけないわけではなく、広告の内容が制限されているのです。どのような広告が対象となり、どこまでなら掲載してよいのでしょうか。実際に違反とされる文言も含めながら解説します。
柔道整復師法第24条|広告OKな内容とは?
柔道整復師法の第24条には「柔道整復の業務又は施術所に関しては,何人も,文書その他いかなる方法によるを問わず,次に掲げる事項を除くほか,広告をしてはならない。」とされています。この広告には、看板、新聞広告、屋外に置くビラ、屋外で配布するチラシなどだけでなく、ダイレクトメールやネット上の広告なども含まれるのが特徴です。法律で広告できる事項としてかかげられているのは、どのような内容なのでしょうか。
柔道整復師であることと氏名・住所
施術をおこなうのが柔道整復師であることと、施術にあたる柔道整復師の住所・氏名は広告に掲載することができます。しかし、施術する柔道整復師の技能や施術方法、経歴に関する事項の掲載は禁止です。
施術所の名称や電話番号・所在地
接骨院など施術する場所の名称や所在地、連絡先についても広告に掲載することができます。しかし、施術者の技能や施術方法、経歴などに触れる内容は掲載することはできません。
施術日または施術時間
営業している日時や定休日、予約に関してや休日や夜間の対応、出張しての施術の実施に関しては広告に掲載することが認められています。
そのほか|脱臼や骨折の患部の施術に関わる申請など
保健所に届出をした施術所であることや、医療保険療養費支給申請ができることなどは広告に掲載することができます。しかし、施術すべてが保険適用であるかのような誤解を招く表現は禁止です。
また、労災保険や自賠責保険などの保険と、医療保険療養費支給申請をまとめて「各種保険適用」とする表現も不適切とされるため、注意しましょう。
どんな広告が違反になるの?|料金や勧誘文句に注意
柔道整復師法における法令違反となるのは、症状や効果から勧誘する内容、施術所が特定できる施術所の名前や住所などが掲載されている広告です。
肩こりや腰痛などの柔道整復の対象となる症状を示したり、各種症状から「こんな症状でお悩みの方」と勧誘したりするものは症状から勧誘しているとみなされます。姿勢矯正などの効果をあげたものや交通事故専門、むち打ち専門などの具体的なケガの理由を挙げたものなども同様です。
ほかとの優越性を示すことも禁止されているため、「30分2,000円」などと料金を明示したものや「最新の機器を使用」などとする広告は法令違反となります。
また、柔道整復において一部保険が適用されるものはありますが、「月はじめ、初診や再診の方は受付にて保険証の提示が必要です」など、すべてが保険適用と勘違いさせるような文言も掲載できません。
違反したらどうなるの?|30万円以下の罰金
柔道整復師法に違反する広告行為があった場合には、30万円以下の罰金を払わなければならなくなることがあるため注意しましょう。
柔道整復師法を理解してスムーズな運営をおこなおう!
1970年に制定された柔道整復師法は、柔道整復の施術が適切に提供されることを目的に定められています。おもに柔道整復師の免許や業務、施術所に関する規則や実際に管理するのが都道府県や政令指定都市の保健所であることが示されていますが、雑則として施術所の広告に関する決まりもあるのです。
接骨院など施術所の広告に掲載できるのは、柔道整復師であることと住所・氏名、施術所の名称と所在地、連絡先、開所日時などであり、施術や効果、料金などについて広告に掲載することはできません。広告など気をつけなければならないポイントを押さえて、運営するようにしましょう。
参照元:
厚生労働省 柔道整復師法(昭和四十五年四月十四日法律第十九号)
公益財団法人 柔道整復研修試験財団 設立の趣旨
東京都福祉保健局 あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう、柔道整復施術所
京都市情報館 施術所の広告に関する規制について(柔道整復師法)