デューク更家 interview:母の死によって見つめた『歩くこと』。そして『ウォーキングパラダイス』構想
TVや雑誌でおなじみのデューク更家さん。一度見たら忘れないインパクトのある風貌と軽快なトーク、そして何よりも独特なウォーキングスタイル。それらがブレイクしたのは40歳を過ぎた頃だとか。「歩くことの喜びをみんなに知ってもらいたい」と語る更家さんのお話には、読む人が元気をもらえるパワーに溢れています!
母の死によって見つめた、『歩くとは何か?』
「大学を卒業してから、いろんな仕事をやりました。ブティックの店員をして、それから独立してジーパン屋さんをやって、事業を失敗して焼鳥屋さんで働いて、若い時からファッションが好きだったので、ショーの勉強をして、それからしばらくはファッションショーの演出をやってました。その頃は、モデルさんの歩き方によって表現が変わるとか、そういうことに興味は持っていましたが、まだウォーキングというものには全く関わってなかったんですね。
ところが、うちの母が病気になりましてね。あまり身体が強いほうではなかったので、お医者さんに『歩いたらええよ』って言われて、僕も『お医者さんが言うてるならそうやん。歩いたらええ』って言って。母は一生懸命に歩いたんですね。その結果、両膝を悪くして階段から転んでしまって、そこから車椅子生活となり半年後には亡くなってしまったんです。僕はお母ちゃん子だったので、ショックでしたねえ」
試行錯誤の末に編み出した『本当の歩き方』
「僕は『歩いたらええやん』って言ってしまったんですけど、もしあの時『もう歩くのやめや、じっとしてたらええ』って止めたら、寿命があと1~2年は伸びたのかな…と考えたら、歩くって何やねん、本当に健康にええんやろか? と疑問が生じてきたんです。そしたら一度歩くことを突き詰めてみようかっていう気になり、そこから研究を始めました。医学の本やスポーツ関係の本を読んで、クラシックバレエの回転の仕方、相撲の股割りの役割、空手の中心の取り方みたいなものを勉強して、どうやったら腰が痛くならないんやろ、効率よく歩けるんやろ、ってことを研究して。
いろんなものを総合して考えると、健康によい歩き方というのは、距離ではなくて正しい姿勢・歩き方や。正しい歩き方を身につけてから歩けば健康になるんや、ということがわかってきたんです。じゃあそれを一般の人に伝えてみようと思ったのが、40歳手前の頃ですね。
でも、ただ『歩く』だけのことを習うっていう感覚が当時はなくて、最初の頃はお客さんは1人か2人。『正しく歩くことが健康に繋がる』っていうことが浸透してなかった時代なので、そのことにお金を払う人はいなかったんですよ」
『スタイルを変えちゃいけない』。コシノ先生の言葉を胸に
「ショーで僕を可愛がってくれていたコシノヒロコさんとか、演出をしていた頃の仲間たちに僕のウォーキングを見せたら『これ、面白いで!』って言ってくれました。で、『怪しいお前で行け』って言われたんです(笑)。
『お前がトレーナーやらジャージやら着て真面目に歩いてもお前らしくないぞ!』『お前のそのクセの悪そうな怪しいイメージをそのまま活かせ!』、コシノ先生からは『私たちは名前と同時に顔を売る世界で生きている。そんな人間はコロコロ自分のスタイルを変えちゃいけない。これから一生帽子と眼鏡を付けて、髭を生やしていなさい。そうしたら、あなたの道はきっと表にある』って言ってもらいました。僕は演出家としてショーの裏を支えるスタッフだったけど、『ちょっと歩いてみ』って言われてモデルもやってたんですね。コシノ先生はそれを見ていて、表の世界が合うんじゃないかって言ってくれたんです。そんなみんなのアドバイスでキャラクターを確立していきました。
怪しいスタイルを貫いているうちに(笑)、ダイエットブームも相まって、少しずつ雑誌などで取材に来てもらうようになりました。いつの間にか僕の教室は満員になっていったんです」
情熱大陸のオファーに『ちょっと待った! モナコに行くから!』
「そんな時『情熱大陸』のオファーがあったんです。「キター!」っと思いましたが、ちょっと待てよ、と。ここでパっと出るよりも、海外在住の方がインパクトあるなって思いました。 ところで僕ね、26歳の頃からモナコに憧れてたんですよ。カラーの夢を3回見てね(笑)、将来住むのはここしかないと思っていたんです。ずっとモナコの絵ハガキをポケットに入れて、モナコの本をいっぱい読んで勉強して、いつかここに住んだる! と夢を温めていたのですが、その時が来たと思いました(笑)。情熱大陸さんには半年待ってもらって、モナコへの移住を具現化したんです。最初は小さいワンルームみたいなとこでしたけどね。それで情熱大陸にモナコから映してもらって、全国放送です。そこからどっかーーん!! と大ブレイクでした。
僕はね、『失敗したらどうしよう』って考えは一切ないんです。とりあえず突っ込んでみて、その代わり絶対に成し遂げようという気持ちの方が強いんですよ。夢を持ったら一個でも現実になるように、夢に自分から近づいていく。そうすると、世の中動きますね。自分一人では何もできないけど、自分の進む道が決まると周りが動き出す。それは、あっという間にね!」
5年もの下積み時代を乗り越えられたのは……
「お客さんが全然来なかった時は、夜に工事現場のバイトで食いつないだりしてました。最初の5年くらいは、こんなにスゴイことやってるのになんで認めてもらえないんやろ、っていう葛藤はありましたね。投げ出さずに辛抱できたのは、精神世界や宗教学みたいな本をたくさん読んで、勉強をしたおかげです。それで感謝するとか楽しむとか、自分の心のありようを高めていたからだと思います。
今、転職に悩む人は、とりあえず自分の好きなことをやってみる。絵でも詩でもいいんです。自分の幅を広げてみると、それが自分のキャラクターになって、自己アピールになっていく。やってて辛いって思うものは、なんでも上手くいかないですよね。恋愛だってそうでしょ!(笑)。就職活動楽しいー♪ っていう感覚を持った人から受かっていきますから!」
女性には美意識の向上、子どもたちには正しい姿勢を
「最初の頃、1回目のレッスンではヨレヨレの格好してた人が、2回目、3回目来る時は、髪にパーマかけたり、口紅塗ったりしてきてくれてね。僕は老人ホームにも教えに行っていたんですが、2回目には洒落たストールを巻いてきてくれたりね。歩き方を教えることによって、女性の美意識が変わったことを目の当たりにした時、これが自分の天職だと思いました。女性は健康よりもまず美意識です。70歳でも80歳になっても、美意識が高くなることによって身体が健康になる。それは間違いないです。
また、小学生に歩き方を教える『歩育』を始めて、これはすごく楽しいですよ。小さい頃から正しい歩き方を身につけることによって、姿勢が正しくなり、視線が下がらなくなる。するとやりたいことにスッと足を出せるようになる。頭の回転が速くなるから、勉強の前に少し歩いてみると勉強がよくできるようになる。歩き方なんて習うのは初めてですから、子供たちは最初は何をやってるか分からないんですけど、僕と一緒にやると大笑いしながら喜んでやる。それで結果がすぐに出て、こんなことができるんだってことが子どもにもすぐ分かるんでしょう。握手しに来てくれたりしますよ(笑)」
デュークズウォークのポイント
「僕のウォーキングは質を大事にします。足首、膝、肩、腰、胸など一個一個のパーツごとにエクササイズをします。そして関節や筋肉の可動域を伸ばしたり縮めたりする部分をひとつひとつ練習しておいて、それから今度は筋肉と神経の連結という目的で、先ずは止まったまま足首を動かしたり肩を回したり。それからこういう運動を歩きながらして、最後に正しい姿勢から歩くということを教えます。最初の30分はエクササイズばっかりです。でもそれが大事なんですよ。
気軽な散歩なら、緑が綺麗だなぁとか楽しいことを思いながら歩くのがいいです。前からイケメンが来た♪ とかでもいい(笑)。仕事が残ってるとか今月の家賃どうしよとか、悩みながら歩くのはいちばんいけません。鼻歌なんか歌ってウキウキしながら歩くと、脳が活性化するんですよ!
正しく歩くなら5kmでいい。ダイエットなど目指すものがあるなら10km。それ以上は電車とタクシーで!(笑)」
最後の夢?『ウォーキングパラダイス』構想
「今、チャリティーで福島の小学校でも教えてるんです。歩くことは体育館の狭いスペースでもできますから、父兄にも来てもらっています。みんなでワイワイ『お父ちゃん下手やわー!』とか言いながら、みんなで大笑いしながらね。僕が行くとお母さんが大喜びなので、家庭もゴキゲンになりますし(笑)、家族のコミュニケーションも良くなるでしょ。子どもたちからもらったたくさんの笑顔や写真・手紙の束は、僕の勲章ですよ。東北・被災地には、呼んでくれればどこにでも行きます!
僕には最後の夢があってね、『ウォーキングパラダイス』を作りたいんです。歩く園、歩く天国を作りたいんですよ。大きなトラックにテントを積んで、サーカスみたいに村や町を周るんです。そこではもちろん僕のウォーキングがあり、お祭りみたいに屋台もあり、お医者さんにも協力してもらって身体測定ができる。それをね、そこに住む人たちは無料で参加ができるようにしたいんです。山や川があればインストラクターと一緒に外を歩くこともできる。そういう日本全国を周るキャラバンを作りたい。すごくお金がかかるし準備も大変です。でも本気ですよ。今60歳なので、70歳までには全部仕上げたいですね。それをやったらもう引退かな。歩き方で健康になるってことを伝えて、世の中の役に立って、100年後くらいに『こんなオッサンが日本中をクネクネ歩いたんやで』って言ってもらえたら最高ですね(笑)」
Profile
デューク更家(でゅーくさらいえ)さん
ファッションショーの演出およびプロデュース、モデルへのウォーキング指導を手がけた後、間違った歩き方で足を痛めた母親のことをきっかけに、一般向けのウォーキングレッスンを始める。
気功や運動生理学、ヨガ、バレエなどの要素を取り入れた独自のエクササイズ「デュークズ ウォーク」を確立。
著書、ビデオ・DVD多数。
2004年10月和歌山県新宮市より「市民栄誉賞」受賞。
2004年11月和歌山県より「文化奨励賞」受賞。
Company
DUKESWALK(デュークズウォーク)
各地のウォーキングスクール詳細、ワンデーレッスンやインストラクター養成セミナーのスケジュールなどが確認できる。
ウォーキングスクールはデューク更家さん本人が直接指導にあたるスペシャルレッスンやプライベートスクールもあり、デュークズウォークをより実践的に学ぶことができる。随時受付中なので、ぜひお問合わせを。
DUKESWALK(デュークズウォーク):http://www.dukeswalk.net/
デューク更家のぴんしゃんウォーキング―キレイに歩いてマイナス10歳―
いつまでも背筋を「ぴん」と伸ばし、気持ちを「しゃん」とする健康ウォーキング術を紹介。歩き方の初歩から、体の痛みを改善するウォーキングまで、写真でポイントを解説します。
■発行/中央法規出版
購入はこちらから:http://www.dukeswalk.net/discography.html
「ひねって伸ばす 仙骨ウォーキングでバービー体型になる」
姿勢とウォーキングをマスターすれば、もっともっと美に近づける。ハイヒールでも疲れ知らずな姿勢美人になれるウォーキングメソッドを漫画でお伝えします。
■発行/メディアファクトリー