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弁護士に聞く! トラブルを回避し、愛されサロンへ #1

お客さまにもスタッフにも愛されるサロンであるためには、法律の知識が欠かせません。今回は、実際にあった裁判例から学び、愛されサロンへの道を探ります。
テーマは「カットが気に入らない!損害賠償600万円!」です。

事件概要
キャバクラに勤める女性が、美容室を訪れ、カット・カラーリング等、16,500円分の施術を依頼。店長が担当。希望通りのヘアスタイルならなかったことで「キャバクラ嬢としての売上が下がった」「円形脱毛症になった」などと主張して総額600万円の損害賠償を求めた。
判決内容
裁判所は慰謝料30万円と弁護士費用5万円を損害と認めた。

「カットが気に入らない」ことを理由に損害賠償請求が認められるとは、驚くべき事案でしょう。確かにめずらしいケースです。では、なぜ請求が認められたのでしょうか?

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1、キャバクラ嬢は外見を重視する職業!

トラブルを回避し、愛されサロンへ

判決では「キャバクラ嬢は容姿の美しさが重視される職業」と言い切っています。このことから、人前に出る職業や外見を重視する職業に就くお客さまからの損害賠償は理論的に認められることがわかります。キャバクラ嬢の他、芸能人やモデルが対象となり得るでしょう。より細心の注意を払い施術をすることが、ヘアサロンに求められます。

ただこの裁判例の場合、認められた30万円の慰謝料は、髪型をカバーするために必要となった実費に相当するため、職業上支出した分を救済したと考えられます。また、円形脱毛症ができたことについては、因果関係が立証できないという理由で棄却されました。

また、この裁判例では、店長は女性の職業を知っていましたが、もし職業を知らなかったとしても、お客さまの中にいろいろな職業の人が来ることは予想できるため、基本、結論には影響しません。ただ、結婚式や発表会や審査その他特別なイベントを知らされていた場合、知らされていなかった場合に比べて、損害賠償の範囲が広がる可能性があります。

2、自信満々はほどほどに…

トラブルを回避し、愛されサロンへ

前提として、お客さまが伝えたイメージと、実際できあがった髪型とに明確な差が生じていなければ、請求はできません。この事件では、女性が雑誌の写真を示して希望の髪型を伝えていたことが、結論に影響しています。

また、女性がイメージを伝える段階で、美容師は「俺にまかせろ、俺にはこのデザインが見えている」と自信をみせました。このことについては、「希望する髪形について十分な確認を取るというプロとしての注意義務を怠った」と判断されました。

仕上がりのイメージを共有するために、美容師は入念なカウンセリングや施術途中での確認をして意思疎通を図るべきです。

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3、しっかり「契約」を果たしましょう

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お客さまとの契約にはさまざまな種類があります。例えば建築でかわされるような請負契約の場合、設計書と少しでも違うものを作れば、契約違反になります。

お客さまとサロンの間には準委任という契約が成立します。この契約内容は、美容師は、お客さまの要望する髪型を実現すべくプロとして最善を尽くすことです。美容師として最善を尽くせば、損害賠償といった問題は起きません。

美容師のみなさんは、信頼関係があれば裁判にまでならなかったのでは?と思うかもしれません。しかし施術をするということは、法律上、お客さまとサロンの間に「契約」が発生しているということです。リピーターのお客さまでも、初来店のお客さまでも、1回1回契約を結んでいるという意識が大切です。

4、自己判断は危険!!

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施術後、女性側が抗議したため、美容師は「希望していた髪の長さに対し、私が誤ってカットをしてしまいました。私が責任をもって本人が納得するまで無料でケアをします」と念書を差し入れました。美容師は誠意を見せたと推測できます。しかしこれは、「お客さまが希望するカットになっていない」ことを認める文面であり、自分で証拠をつくってしまいました。そもそも念書のような文面を出すこと自体、良くないことです。こうした対応のまずさが裁判につながっていえるとも考えられます。

「カットが気に入らない」という人は、一定数いると推測できます。もし裁判になると、自分では対応できないし、費用面も大きな負担となります。クレームが入った場合は、どういった答え方が適しているのかなどを弁護士に相談することをおすすめします。ただ、クレームに対し「弁護士に対応させます」とすぐに返答すると、お客さまは不信感を強めてしまうかもしれません。美容師にどのような対応をとらせるのか、サロンとして方針を決めておくことも非常に大切です。その場で正しい対応をするためにも、前もって準備ができると理想的でしょう。

また近年は、ネット上でお店の批判を書かれてしまうことも少なくありません。この場合、書き込みをした人を特定して、その誹謗中傷を削除し、損害賠償請求するのは簡単な道のりではありません。問題が起きそうな場合、お客さまに早い段階で対処した方が経営のリスクは下がります。

ヘアサロンに対して「下手」「ダサい」という言葉は、主観的な評価、つまり個人の感想なので誹謗中傷にはならないため削除や損害賠償の対象にはなりません。
そこに具体的なエピソードが入っていて、事実と異なれば法的な問題になり得ます。

インタビュー対象者

プロフィール

弁護士 大山 京

渋谷六本木通り法律事務所
東京都渋谷区渋谷3丁目6番2号エクラート渋谷ビル8階
TEL : 03-6868-3923

1979年 横浜市出生。青山学院大学卒業
2015年 渋谷六本木通り法律事務所を開設し、独立。
民事事件・刑事事件のほか知的財産事件や医療事件まで幅広く業務を行っている。

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