実はトレンド豊作の時代!? メンズのヘアカタログの現状を探る #1
美容室へ足を運ぶと必ず置いてあるヘアカタログ誌。カット前のカウンセリングの際によく美容師がヘアスタイルのサンプルなどに使うアレです。近年、ウェブやSNSの台頭に押されているようにも見えますが、実はこのカテゴリーの雑誌は売り上げを堅調に維持しており、サロンワークに必要不可欠なものとしての存在感を感じさせます。
多くの美容師たちが考える「トレンドヘアの次の形」という主観を、ながらくメディアの側面からメンズヘアに携わるプロの編集者たちのフラットな目により客観へ転換することで完成するヘアカタログ。そんな今の気分を巧みに、そして的確にすくい取ったメディアだけに、ここからリアルなトレンドや人気サロン、次世代のカリスマ美容師が生まれることが多く、今なお美容師たちにとってここでの活躍が「売れる為のパスポート」の一つであることに変わりはありません。
そこで今回は、ライターとしての視点から、今チェックしておくべきメンズのヘアカタログの現状を探っていきます。まずは、前半のレポートをお届けします。
今もっとも注目すべきは「1サロン本」
メンズのヘアカタログのシーンに一つの地殻変動が起きました。それは「1サロン本」のブレイクです。文字通り、一冊に掲載するサロンをひとつに絞り、ヘアだけにとどまらずより多角的にそのサロンの魅力にフォーカスした本です。雑誌内の企画の立案から誌面のディレクションに至るまで、サロンの全面的なバックアップにより製作が行われるというのも今までにない点で、今人気のモデルやタレントのスタイルブックのサロン版と考えるとイメージしやすいと思います。では、なぜ今「1サロン本」なのか? 内容を紹介するとともにその魅力を紐解いていきましょう。
先陣を切ったのはメンズの二大人気サロン
今年に入って出版された「1サロン本」は2冊。フィーチャーされたのはOCEAN TOKYOとAKROSです。ともにスタイリストたちの個性豊かなパーソナリティと圧倒的なカリスマ性で今日のメンズヘアシーンを牽引する現代の超人気サロンです。主軸となるヘアカタログはほぼ全員のスタイリストが担当することで、店舗ごとのカラーやスタイリストの個性をしっかりと感じることができます。またファッションに定評のあるスタッフによるスナップページや自宅のインテリア特集、果ては行きつけの飲食店に至るまで、彼らの魅力を完全に網羅。
「1サロン本」の魅力はなんといっても人気サロンをより深く、あらゆる角度から見られることに尽きます。
今、男子が求めているのは、感性をセッションできるアニキ的な存在
そして、もう一つの魅力がOCEAN TOKYOは中村トメ吉さんや高木琢也さん、三科光平さんを筆頭にした各店の代表、AKROSは旗艦店とも言えるAKROS GRAND Xの代表、松本拓馬さんのパーソナルな部分にフォーカスしたインタビューページです。いわば「現代のカリスマ美容師」たちのインサイド。彼らが美容師という職業に対しての思いや今後の野望などがたっぷりと語られています。その中でも特に印象的なのが、「夢」や「希望」、「努力」や「頑張る」と言ったワードが多く見られ、誌面がポジティブな空気で満ちてることです。前述のファッションやライフスタイルなどの目に見える「スタイル」のみならず、仕事に対して一生懸命であったり、夢を叶えるために努力を続けるということを本人たちのリアルな言葉によって包み隠さず発信することで、現代の若者の「生きるお手本」として共感を得ていることも、現在の圧倒的な人気の一つの要因となっているのです。
多くの美容師たちが作り出すヘアスタイルをまとめたスタンダードなヘアカタログとはまったく正反対の趣にはなりますが、このまったく新しいタイプの本が発売するとたちまちスマッシュヒットを記録しました。
現在、とある大手通販サイトでは中古品が倍以上の値で取引されているほどです。あくまでヘアカタログから派生したムック本ではありますが、サロンのファンのみならず実際にサロンで働く美容師さんにも働く上でのヒントが隠されているかもしれません。次はどこのサロンがフィーチャーされるか注目ですし、今年発行された2サロンのアップデート版の発行も今後大いに期待したいところです。
もちろん既存のヘアカタログだってトレンドも見所も満載です。後編は、多様化を見せるメンズのヘアカタログの現状をお届けします。
取材・文/橋本裕一
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