人は何度でもやり直せる。これが出産で学んだ大切なこと【Ash 日吉店 スタイリスト 依田寿美子さん】#1
6歳と4歳の女の子を育てながら、スタイリストとしてサロンワークをこなす依田さん。産休や育休を経て復職するまでに、いろいろな葛藤や困難があったようです。その心のうちを教えていただきました。
20歳で知り合った夫と34歳で結婚
—–知り合ってから結婚までの期間が長かったんですね。
私が20歳くらいのとき、旅先で知り合ったのですが、付き合ったり、友達になったり、しばらく会わない時期があったり。結局いろいろあって34歳で結婚しました。
—–結婚を決めたのはなぜ?
主人はその当時からいつも穏やかで、冷静で、前向きで、環境に左右されないしっかりとした芯を持っている人なんです。どんな状況になっても生きていける生命力の強さを感じたのが一番ですね。主人となら一緒に生きていけると思いました。あと、自分のことは自分でやれる人だったので(笑)。
—–最初の出産が36歳。キャリアが充実している年齢ですよね。
そうなんですよね。出産ということを考えると年齢も年齢だったので、妊娠が分かったときはとても嬉しかったですし、安心しました。主人も喜んでくれました。
その反面、産休と育休を取ったあと、元の美容師生活に戻れるのか、私についてくださったお客さまが戻ってきてくださるのか、不安で仕方なかったです。
—–しかも、出産まで入院生活を送られたとか?
今までずっと順調で問題なく過ごしていたのですが、妊娠8ヶ月くらいのとき出血してしまったんです。検診に行ったその日から家に帰れず、そのまま緊急入院することになってしまって。お客さまをはじめオーナーやスタッフ、主人に心配や迷惑をかけてしまいました。
私自身も先のことが分からず、毎日が不安な気持ちでいっぱいでしたね。急な入院だったので、お客さまの引き継ぎはスタッフに協力してもらいました。出産の準備も、ほとんどネットか主人にお願いして、なんとか間に合わせました。
—–出産前までたいへんな想いをなさっただけに、出産を迎えてホッとしたのでは?
産休中がたいへんだっただけに、ただただ無事に産まれてきてくれたことに感謝し、感動し、嬉しかったです。時間が経つにつれ、とにかく母になれたことに対する喜びが大きくなりました。これから「1人の人間を育てるんだ!」という責任をひしひしと感じたことも覚えています。
出産後にすぐ新居へ。そして復職…
—–出産してからすぐ引っ越しなさったんですね。
出産してまもなく、新居に越しました。育児のことも分からない、新しい環境でまわりのことも分からない。分からないことだらけで、なんだか1人取り残された感じがしていました。
あるとき、地域の初めて出産した人たちのための「赤ちゃん会」に参加したのですが、これが大正解でした。友達ができ、子育てを少しずつ楽しめるようになったんです。その当時、知り合った友だちとは今も仲がいいんですよ。
—–初めての育児でたいへんなのに、復職のことも考えないといけませんよね。
今までの生活と違って、赤ちゃんに合わせて生活していくので、かなりゆったりと過ごしていたはずですが、とにかく分からないことだらけだったので、毎日とにかく必死でした。時間はたくさんありましたが、やはり毎日頭をよぎるのは「ちゃんと保育園に入れられるか」でしたね。
子どもが2ヶ月になったくらいから、保育園見学の準備をしました。
—–復職に対して不安はありましたか?
不安だらけですよ。今までのお客さまが私を指名してくださるのか、以前のような仕事を同じようにこなせるのか、トレンドを提案できるのか、SNSに対応できるのか…。
育休中は子育てに対する不安と、復職後の不安に毎日追われていたような気がします。
—–実際に復職なさっていかがでしたか?
不安が的中しましたね。予約が入らなさすぎて、店のチラシをポスティングする日もあったんですよ。何年も担当させていただいていたお客さまが私の産休・育休中に離れてしまって、自分の存在を否定されているような気持ちになりました。「今までの自分は何だったんだろう」とか「子どもを産まなければ失客せずに済んだのに」とか、復職したばかりの頃は、ネガティブなことばかり考えていましたね。
でも、この人生を選んだのは自分ですから、「かけがえのない大切な子どもができたんだから、今までとは違う美容師の形を考えていけばいい」、「仕事と家のバランスを考えながら働けばいい」と考えるようになりました。
いつまでも同じままではない…と現実を受け入れたとき、前向きになれました。どうしたら新しいお客さまを増やせるのかを考えられるようになったんですよ。
—–精神的にかなりキツかったんですね。
出産を機にメンタルが弱ってしまいました。仕事が大好きで、出産するまで仕事中心の生活を送っていたのに、出産が私をどん底に突き落とした…と思っていました。子どもはすごく可愛かったのですが、仕事面のストレスは相当でしたね。逆に言えば、ほぼゼロからスタートした復職が、私を強くしてくれました。
初めはキツかったのですが、美容師を始めた頃と同じ気持ちになって、できることからコツコツ始めました。続けるうちに、戻ってきてくださったお客さまやスタッフ、家族のおかげで今はまた復職前と同じくらいまで結果を出せるようになりました。
出産のおかげで、「人は何度でもやり直せる、とにかく真面目にコツコツやれば結果は付いてくる」ということが分かりました。今になって思うのは、出産は私を強くし、私の人生に彩りを与えてくれるものでした。今は2人の子宝に恵まれてよかった、と心から思っています。
出産から保育園までの子育てポイント3カ条
1.1人で抱え込まず、同僚や家族のサポートを積極的に利用する
2.地域の集まりに参加して、悩みを打ち明けられる環境をつくる
3.「いつまでも同じままではない」と現実を受け入れること
年月をかけて築いてきたキャリアが、産休と育休で中断してしまった依田さん。復職してゼロからの出発になってしまったのは、やはり精神的にキツかったようです。それでも今は復職前の状態まで取り戻せたのは、ひとえに諦めずにコツコツと努力をし続けてきたからこそ。
今までの実績に甘えることなく、すべてをリセットする勇気と諦めない根性は、母になった強みなのでしょう。後半では、仕事と子育てをどう両立させているのかをさらに詳しく伺います。
▽後編はこちら▽
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