廣田純也さん

廣田 純也 interview#1:廣田純也さんが広げる「美容師の社会活動」の可能性とは

美容師とは、トレンドを生み出し、流行を作り、おしゃれを届けるだけの存在なのだろうか。――美容師としてのありかたに疑問を抱き、30代という若さで福祉の道へと活動の場を広げた廣田純也さん。その原動力や、社会活動を行うことによって見えた美容師の可能性について、お話をお伺いしました。

社会の末端にまで目を向ける社会活動と、社会の最先端を追う美容師。ギャップがあるようで、実はつながっている。それが“美容”のもたらす力――

――介助を必要とする人や、障がいを持つ人など、社会的弱者とされる人たちに、本当の意味での“美容サービス”を届けるため、活動を続けている廣田さん。廣田さんがなぜ福祉美容の道を進むことになったのか、そのきっかけについてお聞きします。

僕は20歳のときに美容学校を卒業し、「SHIMA」に入社しました。時代の最先端であるSHIMAのようなサロンを目指したのは、美容師を目指す誰もが考える、“トレンド”だったり“おしゃれなスタイル”を、この手で作りたいと思っていたからなんです。

実際、SHIMAに入って働きはじめてから数年間は、何の不満もなかったんです。仕事とプライベートの境目が無いくらい働きましたし、SHIMAでの経験は、本当に素晴らしいことばかりでした。

でもある日、ふと、将来について考えるようになったんです。たしか23か24くらいのときだと思います。このままSHIMAで働くとして、あと何年か後には、自分の店を持って独立する、という選択肢が有力になるだろう。そうなった場合、目指すべきは、雑誌などメディアに露出し、トレンドを作り続ける、というところに落ち着く。それがスタイリストとしての当たり前の未来だと思い、それまではなんの疑問も抱いていなかったのですが、ふと、自分の将来に対して、若干、物足りない印象も抱くようになっていた自分に気が付いたんです。

03_%e8%bf%b4%ef%bd%be%e8%9c%92%e3%83%bb428_8576-min

トレンドを作りたい、おしゃれなヘアを作りたい。そう思うのは素晴らしいこと。でも、僕が求める未来は違うかもしれない。もっと美容の本質的な部分を見つめなおしたい。トレンドを作るのは僕以外の誰かが成し遂げる。僕にしか出来ないことがあるんじゃないか――

それで、25歳のときに一念発起。視野を広げる時間を作りたいと思い、SHIMAを退店したんです。それからは、がむしゃらに勉強をしました。経済や経営についてはもちろん、美容関係のことも学び直し、インナービューティー等も勉強しました。そうした中で高齢化社会だったり福祉だったり……といった社会情勢も学んだのですが、SHIMAで働いていた時はまるで縁のない世界がそこにあり、とても新鮮に映ったんです。

そうした時に出会ったのが【ソーシャルビジネス】でした。

まず僕がやったことは、ソーシャルビジネスというキーワードを、自分の中に落とし込んでみることでした。すると、すんなりと答えが出てきたんです。僕は美容師です。そんな僕に出来るのは髪を切ること。美容師として、社会的に意味があることは何か――?

04_1026b744ae694930a68e95f7204bce3a_m-min

児童養護施設に行き、ボランティアで髪を切ることを始めたんです。児童養護施設にいるのは、親のトラブルで施設に入らざるおえない子どもたちがほとんどなんです。金銭的にゆとりがあるわけではないので……。そうした子どもたちにも、きちんとした技術とサービスを体験してもらいたい。その一心で、心を込めて丁寧にカットを行いました。

そうしたら――反応がすごく良かったんです。流行のカットをなんとなくしていたときとは違う、心の奥底から満たされるような心地よさが得られたと言うか――相手が子どもだからこそ、素直な反応が返ってくるんですが――それが本当に、心に響いたんです。それと同時に、分かったことがありました。

髪型を変える。いつもと違う自分になる――こうした、外見を整える行為って、自信にもつながり、心理的な面での後押し、勇気づけに役立つことができるんです。今までもそのことには気付いていたけれど、子どもたちの髪を切ることで改めて、美容の重要性が自分の中でつながったんです。

もう少し、こうした心理的な変化を与えられるようなサービスや技術を磨きたい。ひとりでも多くの方に、このサービスを届けたい――そう考えるようになって、今の僕があるんです。

――“本当の意味での美容を届けよう”そうした願いから廣田さんは会社を立ち上げ、ソーシャルビジネスの一端を担うようになったそう。20代の葛藤、未来の見つめ方、美容師として思うことなど、胸の内の変化を赤裸々にお話いただきありがとうございました。

profile

02_%e8%bf%b4%ef%bd%be%e8%9c%92%e3%83%bb428_8534_1-min

廣田純也さん

33歳/神奈川県出身/株式会社Herts代表取締役/山野美容専門学校卒業後、「SHIMA」に入社。美容師としての経験を積み、25歳のときにフリーランスとして独立。美容を通した社会貢献活動を行う傍ら、中学校での講演や、シンポジウムでのセミナー開催等を精力的にこなしている。

Information

株式会社Herts
神奈川県横浜市中区桜木町1-1-7 TOCみなとみらい10F
https://www.facebook.com/hearts.beautybank/

廣田 純也 interview#2:福祉専門美容師が見つめてきた、美容による生命力の向上>>

この記事をシェアする
廣田純也さん

編集部のおすすめ

関連記事

近くの美容師求人をリジョブで探す

株式会社リジョブでは、美容・リラクゼーション・治療業界に特化した「リジョブ」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄