家に仕事の疲れを持ち帰らない。美瑛町で親しまれる家族ファーストの個人サロン【three peace オーナー うらしままいこさん】#2
北海道美瑛町で営む個人サロン「three peace」。オーナーのうらしままいこさんは、3人のお子さんと毎日向き合えるようにと、自宅兼サロンを構えました。3人目のお子さんを出産した2ヶ月後に怒涛のスタートを切りましたが、今では満員御礼の日が続く人気サロンに。サロンが忙しいゆえに、仕事と家庭の両立に苦戦したこともあったと言いますが、あることを見直し、改善を図ってきたのだそう。
後編では、仕事と家庭のバランスを整えるために取り決めたこと、色々なサロン形態を経験してきたうらしまさんが思う地域密着サロンの良さなどをお話しいただきます。
教えてくれたのは
「three peace」オーナー うらしままいこさん
専門学校卒業後、原宿のサロンに5年勤務。その後、故郷の北海道に戻り、旭川市の大型サロンに8年勤務。2019年7月に地元・美瑛町に個人サロンをオープンし、家族で過ごす時間を大切にするための営業スタイルにシフト。10歳・8歳・3歳の男の子のママ。
営業後、家族で楽しく夕飯を食べられるように、予約を無理に詰め込まない
――地元の人は何を見てthree peaceを知るのでしょうか?
口コミ、紹介、Instagramですね。あとはGoogleにもサロン情報を載せているので、それを見て来てくれる方もいます。でもやっぱり紹介が一番多いかな。
――集客でいうと、これまであまり苦労はありませんでしたか?
オープン当初は1〜2時間くらい空き枠ができる日もありましたね。最初はすごく混むかな?と予想していたので、空いちゃうと不安を感じることもありましたが、そういうときは「赤ちゃんをちゃんと見なさいね」ということなのかなと思って。
最初は旭川からの来店が多かったですが、オープンして1年ちょっと経つ頃には美瑛町のお客様の来店が安定してきて、今では口コミや紹介による来店がほとんど。一昨年の11月くらいからずっと満席という状況です。
――Instagramでもずっと満員御礼を出していますよね。クーポンサイトは利用しているのでしょうか?
大手のクーポンサイトは昔も今も使っていません。必要なときが来たら使おうと思っていましたが、まだ一回も必要性を感じたことがなくて。
赤ちゃんの存在も理由の一つでした。クーポンサイトを出すとご新規のお客様がたくさん来てくれるわけじゃないですか。赤ちゃんを見ながらだと、それほどたくさんの数はこなせないし、急な予約が入っても対応できない。それに、ご新規のお客様は時間をかけて丁寧に接客したいんですね。だから、最初の1年間は自力で、自分のペースを掴みながらの方が良いかなと思って。
何かをたどってうちに来てくれた方一人ひとりに一生懸命向き合う。今はそれに集中するのみ。もしそれで結果がついてこなかったらクーポンサイトなどに頼ろうかなって。
――自分のペースでお店を回すためにも、あえてクーポンサイトを使わなかったのですね。それにしても、3児のママとサロンオーナーを両立しながら営業ペースを掴むまでに苦労されましたか?
やっぱり予約をいただくと「やりたい」という気持ちが勝ってしまい、時間がギチギチでも無理やり入れちゃうわけですよ。そして、営業が終わったあと、歩けないくらい足がパンパンになってしまったり。そのしわ寄せが行くのって家族なんですよね。息子たちはこれから美味しい夕ご飯を楽しく食べたいのに、私が忙しかったために料理も簡単なものになってしまったり、イライラしちゃったり。そうならないためのリズムを掴むまではすごく大変でしたね。
――家庭に仕事の疲れを持ち込んでしまうことも多かったですか?
最初はめちゃくちゃありました。母が毎日来て家のことを手伝ってくれていましたが、「子どもたちをきちんと見てあげなきゃダメだよ」と口酸っぱく言われていたんです。それに対して「わかってるけど…!」が私の口癖でした(笑)。でも、頭ではわかっていても行動に移せていなかったんですよね。お客様を断る勇気がなかったんです。
やっぱり予約をギュウギュウに詰めると、後から予約できた方はラッキーかもしれないけど、先に予約してくれていたお客様にはご迷惑をおかけしちゃいますよね。予約を詰めすぎるとパフォーマンスが下がることをこの3年間で身をもって学びました。「一人ひとりを最初から最後まで丁寧に接客したい」という当初の目標に立ち返り、「無理な予約は入れないようにする」を突き詰めてこの1年間はやっていたんです。
今なら「すみません、今日は本当に難しいです」としっかり断れるし、「別の日はいかがですか?」という誘導も上手にできるようになりました。お客様もわかってくれますよ。
閉店時間になったら、サロンの片付けは後回しにしてまずは家に帰る
――北海道で美容サロンを経営する上で大変なところってありますか?
冬ですね。例えば富良野から車で来る場合は峠を越えなければならず、吹雪いたときは本当に危ないんですね。1〜2月は路面がツルツルになるときもありますし。前の日に「明日吹雪いたら行けないかも」と連絡をしてくれる方もいますが、私も「危ないので来ないください!」「キャンセルして全然大丈夫なので、状況を見てまたご連絡ください」といつも言っているんです。
直前キャンセルされたとしてもあまり気にしません。今は新規のお客様がたくさん来るわけではないですし、顧客様と信頼関係ができているからでしょうね。
――都内を経験してきたことで、地方での店舗経営に有利に働くことはありますか? 例えば技術力とか…。
技術も薬剤もどんどん変わってきているので、昔身につけた技術にすがることはしません。今、オンラインサロンは3つ加入していて、10分でも15分でも、少しでも空いている時間があれば動画を見るようにしています。新しい塗布の仕方、新しい薬剤など日々吸収して、今でも試行錯誤しながらやっていますよ。
――どんなときに地域密着サロンの良さを感じますか?
近所のおばあちゃんが庭に咲いたお花を「ドライフラワーにしたからあげる」と持ってきてくれることもあるんです。見頃が終わったお花は「ありがとう」と言って捨てるようにしているんですけど、20代の頃の自分では考えられない(笑)。ご近所さんからの好意を大事にしたいし、いただいたお花一つにも心から感謝の気持ちを持てるようになりました。本当に地域密着でやっているから、そういう気持ちになるのかなと。
――地方で美容室を営むコツとは?
地元の友達、母の友達、先輩や後輩、友達の子どもの髪を切れるのが今すごく幸せです。私の場合は地元での開業だったので少し有利だったかもしれないけど、一人ひとりに一生懸命に向き合って1〜2年続けていれば、どこでスタートしても、ゼロからのスタートだとしても、お客様は必ずつくと思います。
――うらしまさん流の子育てと仕事を両立するコツとは?
今でも毎日毎日模索しながらなんですけど。私もつい仕事に偏りすぎて、家族にしわ寄せがいっちゃったりもしたけど、それで悩んで、爆発して、改善して。積み上げてきたものを壊し、「ああしてみよう」「こうしてみよう」と試行錯誤して、また一からやり直す。その繰り返しです。
仕事の時間は仕事を徹底する。営業が終わったらサロンがぐちゃぐちゃでも、取りあえず家に帰って家のことをして、子どもたちが寝たら片付けに戻って来る。仕事の時間と家庭の時間はきちんと分けること。3年やってきて、このスタイルで少しずつ上手く回るようになったかなと思っています。
お客様の中には先輩ママさんもいらっしゃるので、後悔や助言をたくさん聞くことができ、自分にとってすごく勉強になるんです。毎日色々な先生に会っている感じですね。
子育てとサロン経営を両立するコツ
1.家に帰っても楽しく家族と過ごせるように、過労にならない程度の予約数に調整する
2.子どもが小さいうちは、予約調整をしずらいクーポンサイトはなるべく使わない
3.仕事の時間と家庭の時間はきっちり分ける
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)