「時給を上げると労働力が低下する」とはどういうことなのでしょうか。
原因は介護職員の雇用形態にあります。
現在、全国に177万人いると言われている介護職員、そのうちの約70万人が非常勤として働いています。そして、非常勤で働く職員の多くはパートの主婦であり、彼女らは夫が「配偶者控除」を受けられる額に収まるように働いているのです。
つまり、年収が103万円以内になるように調整しながら働いているのです。
「103万円を超えるので、これ以上は働きません」
事業者がパートの主婦からこんな言葉を聞くのは珍しいことではないそうです。
「残業してもいいですけど、サービス残業にしてください」
と言われることもあるそうですが、当然そんなことできるわけがありません。
これで、さらに時給が上がれば当然、年間に働ける総時間は減るわけです。これが「時給を上げると労働力が低下する」という矛盾を生むカラクリなのです。
あるところでは時給を100円上げたことにより、従業員の総労働時間が100時間減ったという事業所もあるそうです。
さらに問題なのが、パートの主婦には介護技術が高い人が多く、技術が高い人に働いてもらえないという状況に事業者は頭を悩ませていると言います。
事業者としては、より良いサービスをしたいと考えています。そのため、従業員の技能向上のために資格取得を進めるのですが、その資格を取得すると賃金に反映されます。すると、労働時間が減ってしまう。そのためより良いサービスを提供できないという、本末転倒な結果になってしまうのです。
しかし、全国の介護職員の6割が常勤として働いているわけです。彼らにとっては賃金が上がることは喜ばしいことでしょうし、新しく介護職員を採用するためには時給を上げる必要があります。
単純に「介護職員を増やすためには賃金を上げれば良い」という考えは安易なものであり、それに関わるいろんな制度を改定する必要がありそうです。
2017/07/14
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