ADLを意識して個々に合ったケアを続けたい 介護リレーインタビュー Vol.18【介護福祉士 山下翔太さん】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。前回に続き、地域の回復期・慢性期医療を担う「永生病院」の介護福祉士・山下翔太さんにインタビュー。
前編では、介護業界に進んだきっかけや、お仕事の内容やこだわりについてお話を伺いました。
後編では、介護のお仕事の楽しさと大変さ、今後の目標などをお聞きします。
《プロフィール》
永生病院 介護福祉士 山下翔太さん…高校卒業後、専門学校で介護の基礎を学び、永生病院に入職し、勤務10年目。実務経験を積み、3年目から介護福祉士に。現在は医療療養病棟に勤務し、病棟内スタッフをまとめている。
患者さんからの「ありがとう」が続ける原動力に
―山下さんがお仕事に感じるやりがいは何ですか?
僕の仕事内容は患者さんの日常的な身のまわりのサポートです。寝たきりの方も多いので、ご本人からの反応がないこともあります。でも業務の中で何かしてあげたことに、患者さんから「ありがとう」と笑顔でお礼が返ってくることもあって。やっぱり嬉しいですし「やっていてよかったな」と思えますね。
―年配の方と接する機会が多いかと思いますが、気をつけていることはありますか?
言葉遣いは意識しています。失礼にならないように、気を使いながらお話していますね。人手が足りなかったり忙しくなってくると、どうしても「ちょっと待ってて」と言いがちなので…。そういうことは極力言わないようにして、ケアしていきたいなと思っています。
それはスタッフに対しても同じです。介護職の場合、年齢を重ねてから「新卒」として入職してくる方も多く、年上の後輩も多くなるんです。でも立場上は、若くても在職歴の長い僕が教える立場になります。後輩とは言え年上なので、失礼にならないようにというのは気をつけています。
体力面は大変。患者さんと協力して、お互いに良いケアを意識
―お仕事のなかで大変だと思うことは何ですか?
体位交換やおむつ替えなどは、体力を使うので大変ですね。でも全ての動作を僕がしてあげてしまうと大変なんですが、患者さん本人にも手伝ってもらえるとグッと楽になりますし、患者さんにとっても良いんです。
例えば、僕が体を横に向けてあげれば、そこからはベッドの柵につかまって協力してくれる患者さんもいます。使える機能を使うことはADL維持にも大切なことです。「できることはやってもらう」のは、患者さんにとっても介護スタッフにとってもメリットになります。もちろん大変な業務なんですが、そのなかでいろいろ工夫しながらケアを行っています。
―コロナ禍になってから感じる大変さはありますか?
大変というか、もどかしさを感じることはあります。一番は、患者さんとご家族が直接面会できないことです。以前は病棟にご家族が来て面会してもらっていました。今はご家族でも病棟には入れませんから、例え具合が悪くなっても会えないんです。
そこで少し前から、タブレット上で面会できるようになりました。受付でタブレットをお渡しして、画面越しですがお話していただいています。会話ができない患者さんでも、ご家族からすると顔が見られるだけでも違いますから。もどかしいですけど、できることを考えながら対応していけたらと思っています。
患者さんにもスタッフにも、思いやりを忘れずに働きたい
―大変なことも多いお仕事ですが、リフレッシュ法は?
4歳の娘がいるので、休日は子どもと一緒に遊んだりして過ごしています。まだ人が集まるところには行けないので、自宅の近くにある公園に行ったり、家で一緒にアニメを見たり。充実した休みを送れていると思います。
―今後の課題や目標を教えてください。
勤続10年目になり、スタッフの教育をする立場になりました。患者さんはもちろん、スタッフのことを思いやりながら、仕事をしていきたいなと思っています。介護職ですし、チームワークが大切な仕事なので、「思いやり」は大切だなと感じています。
「これをしておいたら他のスタッフが助かるな」とか、そういう小さいことから思いやること。その積み重ねが、個々の負担を減らすことにつながると思います。身体的に大変になると、どうしても辞めざるを得なくなる。極力負担が減らせるように、業務を改善して、少しでも長く働いてもらいたいですね。
そして患者さんに対しては、個々に合わせてADLを意識したケアを提供することに、今まで以上に取り組んでいきたいなと思います。
病棟介護のお仕事、ここが魅力!
1. 病棟に関わるさまざまなスタッフとチームでケアできる
2. 患者さん、ご家族からの「ありがとう」が活力になる
3. 患者さんの日常生活を考えた深いケアに取り組める
終始、真摯にインタビューに答えてくださった山下さん。患者さん、スタッフのことを思いやったお話に、これから永生病院の介護職を良くしていきたいという気持ちが感じられました。そしてスタッフの方々についてお話する時の笑顔に、とてもいいチームと働かれているということが伝わりました。介護職のなかでも大変なイメージの病棟看護。でも思いやりあえる仲間がいれば、楽しく続けられるのだと確信できるインタビューでした。
▽前編はこちら▽
みんなと連携しながら患者さんをケアする「病棟介護」の仕事 介護リレーインタビュー Vol.18【介護福祉士 山下翔太さん】#1>>
取材・文/山本二季
撮影/奥村亮介(スタジオバンバン)