会社員とヨガ講師を両立。ヨガの現場で得たことは本業でも活かせる【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.58 ヨガインストラクター 伊藤香奈さん】#1
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、「股関節ヨガ」で話題のヨガインストラクター 伊藤香奈さんにインタビュー。鎌倉を拠点に、スタジオとオンラインの両方でレッスンを掛け持ちしている人気講師です。実は、伊藤さんの本業は会社員。ダブルワークという形でヨガインストラクターの仕事をしているようで、そんな今っぽい働き方にも注目です!
前編では、ヨガインストラクターとなったきっかけ、オンラインレッスンで教えるにあたり工夫していること、副業と本業を両立させるコツをお聞きします。
教えてくれたのは…
伊藤香奈さん
鎌倉に拠点を置き、スタジオとオンラインでレッスンを抱える、フリーのヨガインストラクター。平日は会社員として働き、休日はヨガインストラクターとして活動。20年間デスクワークによるむくみに悩まされた経験から「股関節ヨガ」を考案し、脚の歪みや、肩こり・腰痛などの日常的な不調を抱える人たちからも支持を得ている。
Instagram:@itokanayoga45
YouTube「股関節ヨガチャンネル【伊藤香奈】」
コロナ禍で人に教える時間ができ、インストラクターに挑戦
――伊藤さんがヨガに出会ったきっかけとは?
ヨガとの出会いは15年ほど前。前の会社に勤めていたとき、仕事帰りにヨガを習いはじめたのがきっかけです。学生時代にソフトボールをやっていたのですが、屋外でハードだったこともあって、今度はもっと静かで、心を落ち着けられる運動がしたいなと思ったんです(笑)。もともと運動神経は良い方だったので、飲み込みは早かったですね。次々に難易度の高いポーズにチャレンジしていくのが楽しかったです。
――なぜインストラクターになられたのですか?
前の会社を辞め、転職活動をしている間にヨガインストラクターの資格を取っておいたんです。今の会社に入社したときにコロナ禍になり、時間ができたのでヨガを教えてみようかなと思い、副業としてヨガインストラクターの仕事をはじめました。
最初はスタジオでインストラクターデビューをし、まもなくしてオンラインレッスンも並行してはじめました。オンラインレッスンが好調だったために、インストラクターの活動をどんどん増やしていったというのが経緯です。
――ヨガインストラクターとなり、どんなことが大変でしたか?
やっぱり自分が思っているよりも全然上手くできませんでしたね。自分が言っていることと、生徒さんがやっていることがズレていることが多く、要はインストラクションが下手だったんです(笑)。「手はそこじゃなくて、こっちですよ」といつも訂正してばかりでした。
あと、解約が続いたときは堪えましたね。年末から4月にかけて「子どもの進学準備で忙しい」「職場の異動で」が増え、毎日のように届く解約メールに気持ちがすり減っていたこともあります。
――オンラインレッスンの方は順調に進められましたか?
オンラインレッスンは完全に自主開催だったので、Instagramで告知していました。専門のアカウントをつくり、2020年の6月からはじめました。
最初は生徒さん3人くらいからのスタートでしたが、そこから徐々に受講者数が増えていき、最大で120人くらいの方にご参加いただいたこともありました。
――120人はすごい!集客が上手くいった秘訣は何ですか?
ヨガライターの仕事をしていたことも、大きく役立ってくれたんです。SNSに載せた写真や動画を記事に書き、その読者が私のSNSをフォローしてくださる。そして、そのフォロワーさんからリクエストをいただき、動画を撮って、またそれを記事に書く。といった感じにすごく良い循環ができたんです。
――ちなみに、オンラインレッスンをはじめるにあたり、機材は一式揃えたのでしょうか?
はい。ライト、広角カメラ、延長コード、あとはパソコンを一台買い足しました。総額で大体30万くらいでしょうか。生徒さんを映すモニターは家庭用テレビを使用しています。
――オンラインの場合、「ポーズこれで合ってる…?」と戸惑う人もいそうですが、教える上で工夫していることはありますか?
やっぱり対面レッスンと同じやり方では伝わらないときもあります。対面レッスンでは、生徒さんのポーズを近くで見てチェックすることができるのですが、オンラインの場合はそれが難しいので、自分がくるくる回って、色々な角度からポーズを見せるようにしています。
あとは、生徒さんからよく聞かれる質問や、よくある間違いを先回りでお伝えするようにしています。「こういう姿勢になってしまう人が多いので気をつけてくださいね」「ここが痛い人はこうすると良いですよ」とか。自分が見て回れない分、わかりやすく説明することが必要になります。
本業と副業の相乗効果でより働きやすく
――伊藤さんの1日のタイムスケジュールを教えてください。
現在は、平日は金曜日の夜にオンライン1コマ、土曜日はオンライン1コマ、日曜日はオンラインで1コマ、スタジオで1コマをこなしています。
――ダブルワーク、しかもオンラインとスタジオの併用となると忙しそうですが…。
そうですね。ダブルワークをするとやっぱり休日はなくなります。過去に、スケジュールを詰め込みすぎてしまうという失敗もありましたね。生徒さんから依頼があればプライベートレッスンも引き受けたり、他の要望にもその都度応えたり…というのをやりすぎて、これ以上やったら病んでしまうんじゃないか…?というくらいスケジュールがパンパンだったことがあります(笑)。オンラインレッスンが終わり、モニターをパチンと切った途端にぐったりしたりとか。でも、それじゃダメだということに気づきました。
ヨガによって本来はストレスを解消したり、リラックスできたりするもの。自分がそれを実証できていなければ、忙しい方に「ヨガ良いですよ」なんて言えないですよね(笑)。だから、仕事としてヨガをやるというより、自分の生活を乱さないためにヨガを活用するという意識でやるようにしました。
――ダブルワークをしていて良かったと思うことは?
本業でマーケティングやカスタマーサービスの仕事をしているのですが、そこで学んだことをヨガインストラクターの活動に活かせるんです。例えば、SNSの発信や生徒さんとの関係性の築き方とか。
ヨガインストラクターの仕事で得たことを本業に落とし込むこともあります。会社員の場合は、予算や申請などの都合もあって「試しにやってみる」ということがなかなか難しいのですが、ヨガインストラクターは完全にフリーランスでやっているため、自分の好きなようにチャレンジできる。そのため、ヨガの現場でマーケティングのテストをすることも多いです。両方に相乗効果が出ていますね。
――ダブルワークでヨガインストラクターの仕事をしたいと思っている人に何かアドバイスはありますか?
「人生の全てをかけてヨガインストラクターに挑戦する」という考え方の人が多いですよね。世の中的にも「好きなことをやると収入がなくなる」と思われがちな気がします。ですが、私のようにダブルワークとしてはじめるとラクですよ。会社員で安定して収入を得た上で、副業で自分の好きなことをすると、精神面と経済面の両方のバランスが取りやすいのでおすすめです。
平日は会社員、休日はヨガインストラクターという多忙の生活を送る伊藤さん。しかし、ヨガはあくまで体を整えるものという意識をきちんと保ち、気持ちの面でも上手くコントロールができているようです。後編では、伊藤さんの代名詞といえる「股関節ヨガ」について詳しくお聞きします。
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/石原麻里絵(fort)