インストラクターの仕事はお客様とのエネルギーの循環【もっと知りたいヘルスケアのお仕事Vol.165 フィットネスインストラクター 佐藤麻未さん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「もっと知りたいヘルスケアのお仕事」。前編に続き、暗闇サイクリングのパイオニア・株式会社トキノカンパニーが運営する女性専用フィットネスジム「Freedom」統括ディレクターの佐藤麻未さんにお話を伺います。
前編では、エアロビクスなどスタジオ系・トレーニング系のインストラクターとして活躍された大手フィットネス時代について、トキノカンパニー入社までの経緯とトキノの代名詞でもある暗闇サイクリングの魅力についてお伺いしました。
この後編では、ピンクのライトを浴びながらレッスンを行う女性専用フィットネスジム「Freedom」の特徴、お客様もスタッフも全員女性の職場だからこそ心がけていることなどお話いただきました。歴26年の佐藤さんが語るインストラクターという仕事とは?
お話を伺ったのは
Freedom統括ディレクター
佐藤麻未さん
大手フィットネスクラブ社員、フリーランスインストラクター、パーソナルトレーナーを経て暗闇サイクリングのパイオニアであるトキノカンパニー入社。営業部部長兼トキノカンパニーが運営する女性専用フィットネスジム「Freedom」統括ディレクター。女性同士だから共有できる喜びや悩みを分かちあいながらきめ細かなレッスンを提供している。インストラクター歴26年。
自分自身を開放して自由になれる女性専用スタジオ
――佐藤さんが統括ディレクターを務める女性専用フィットネスジム「Freedom」の特徴を教えてください。
以前わたしがひとりで運営していたときは「B-Freedom」(自由になろうよ)という屋号だったのですが、現在は「B-」がとれて「Freedom women’s fitness」に変更されました。そこには、結婚して妻になり母になり、また社会的な肩書を持って忙しくしている女性もみんなFreedomに来たときは「個」。だれかの奥さんでもお母さんでもないあなた自身を開放してほしい。そもそも自由だよねという気持ちがこめられています。
――そういったコンセプトがあるのですね。
はい。それを手助けするのがベビーズコラ・ライトです。ベビーズコラ・ライトには、630ナノメートルの赤ピンクの光の波長で女性の気持ちを穏やかにする心理的効果があるといわれています。
それだけでなく、ベビーズコラ・ライトを浴びることで体内のコラーゲン生成が活性化され、肌の潤いやハリを守るというNASAの検証結果も。都内にはこれを利用したコラーゲンヨガもあるようですが、フィットネスでとり入れているのはここだけだと思います。
――レッスンにはどんなメニューがあるのですか。
べビーズコラ・ライトを浴びながら行うピラティス、ダンス系の少人数制グループレッスンのほか、1回60分の短期集中パーソナルトレーニング、肩や腰のつらさなどなかなか改良しないお悩みにはパーソナルストレッチ&アロマオイルケアのリラクゼーションメニューも用意しています。
女性同士共感できるのが女性専用スタジオのメリット
――女性専用スタジオのメリットはどんなところですか。
お客様も女性、スタッフも全員女性なので女性同士共感できる点は大きなメリットですね。お客様がどういう気持ちや感情から運動しようと思っているのか。そういうところまで思いを馳せて、ひとりひとりに寄り添うレッスンを行っています。
――女性専用スタジオということで留意されていることは?
館内をとにかくクリーンに保つこと。それから女性がかわいいと思う雰囲気や空間づくりを心がけています。例えば「Freedom」のロゴはエメラルドグリーン×ピンクなんですが、これもお母さんや妻という役割からひとりの女子に戻れるような雰囲気づくりを意識して生まれたものなんです。
――訪れるだけで楽しくなるような工夫があるのですね。お客様もインストラクターも女性のみという観点から心がけていることはありますか。
女性独特の群れる雰囲気をつくらず、お客様同士がさっぱりとした関係性が築けるように心がけています。そのためにはレッスン中の環境コントロールはもちろん、スタッフの教育も大事。スタッフとの個人面談などを設けて、楽しんで働いてくれているか、働きやすい環境になっているかなど状況をしっかり確認するようにしています。
インストラクターの仕事はお客様とのエネルギーの循環
――佐藤さんはインストラクター歴26年ということですが、いま改めてインストラクターの仕事はどんな仕事だと思いますか。
個人的には、天職だと思っています。インストラクターの仕事って、私たちがお客様に元気を与えるイメージが強いと思うんですが、実はお客様とのエネルギーの循環なんです。26年やってきて、あー今日は眠いしちょっとしんどいなという日ももちろんありますが、辞めたいと思ったことは一度もなくて。ここまでやり続けられたのはやっぱりお客様のおかげだなと思っています。
――自分が大変なときは逆にお客様に元気をもらえたり?
その通りです。うちでは、坂道をバイクこいでアウトドアに出かけたり、ランニングしたりいろんなツアーがあるんですが、ツアー先でお客様と心に残る思い出が作れたりと、運動したその先にすごい感動するシーンがあったりするんですよね。
――お客様とのふれあいはスタジオの中だけではないのですね。逆にインストラクターの難しい点は?
自分がバイクのインストラクターとしてデビューするときも、人をデビューさせるときもそうですが、何にでもスタートの労力っていうのはありますよね。でも自転車と一緒でペダルをこいで走り出してしまえば、あとはやるしかない。練習する過程を経て自信がついてくるので、もう練習あるのみ。
――では今後の目標を教えてください。
フィットネスって、まだまだ娯楽の延長みたいな位置づけにあると思うんですよね。でも実は医師が「適度な運動をしなさい」と推奨して、それを指導する役割の必要不可欠な仕事。インストラクターやトレーナーの社会的認知度を上げるためにも、今後ますますこだわりを持って活動し続けたいと思います。
またお客様にとってフィットネスで運動したり痩せたりというのは入り口の目的だと思うんですね。多くの方がその先にもっと何かしたいことがある。わたしたちはさらにその先へまわって、ポジティブなサプライズを提供できるチームでありたいなと思っています。
――最後に業界を目指す人にアドバイスをお願いします。
ありきたりですが、思いがあるなら諦めないこと。そして素直に感動できる気持ちを持ち続けることでこの仕事はきっとうまくいくし、その結果ライフスタイルも充実してくると思います。
健康であることは、人生の土台をつくることです。そういう意味ですごくやりがいのある仕事だし、インストラクターやトレーナーになりたいと思う人は、そもそも人をサポートするのが好きな人。なんかつらいなと思ったときにそういう本質に立ち戻る感覚を持っているといいと思います。
佐藤さんがインストラクターとして長く活躍している理由は
1.教育チームの仕事やフリーになって仕事の幅を広げてきた
2.感動できる気持ちを持ち続けている
3.元気を与えるだけでなくお客様とエネルギーを循環させる
日焼けした笑顔と通る声が印象的な佐藤さん。佐藤さんが26年間第一線でインストラクターとして活躍されているのは、エネルギッシュなだけでなく、言葉の端々にあらわれるお客様やスタッフへの感謝の気持ちも大きいのではないかと感じました。
撮影/スティーブ林
取材・文/永瀬紀子