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ヘルスケア 2023-06-09

整体院とピラティス。お客さまの要望に合わせて地域に根づいたサービスを展開【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.100/理学療法士・大沼勝寛さん】#2

「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回お話を伺ったのは、理学療法士・大沼勝寛さん。

もともとは病院で、理学療法士としてお勤めされていた大沼さん。今は独立され、猫背・姿勢矯正専門の整体院と、ピラティススタジオを開業されています。
前編では、そんな大沼さんに、理学療法士になったきっかけや現在の働き方について伺いました。
後編では、大沼さんの施術メソッドや、未来の理学療法士に向けたアドバイスを伺います。

普段の何気ないクセや姿勢を見直して
体全体のバランスを整えていくことが
王道であり最も近道のアプローチ

――大沼さんは「セルフケアで根本から治す コリと痛み改善BOOK」(ソシム)と、「猫背は壁1mあれば一瞬で治せる! 即効 姿勢アイロンストレッチ」(学研プラス)、2冊の本を出されていますよね。読者の中にも、いつか書籍を出したいと思っている人がいると思うのですが、こういうのは出版社に持ち込みするんですか?

いえ、僕の場合はありがたいことにお声がけいただきました。SNSを見ていただいたんだと思います。そう考えると、普段からSNSで発信しておくことは、お客さまだけでなく、こういったお話にもつながるきっかけになるのではないでしょうか。

――なるほど。ちなみに本に書かれているような独自のメソッドは、どういう風に出来上がっていったんですか?

正直メソッドという意識はなく、開業当初から「こういうことをやっていく」と決めていたことで、僕の中では王道というか、当たり前のように考えていたことです。より動きやすく、生活しやすくするために普段の姿勢から見直し、不調が出ている部分だけではなく、体全体のバランスを整えていくというのが、基本のスタイルになります。

――何かひとつ、簡単にできるストレッチを教えていただけますか?

では、最近多い「首猫背タイプ」の方におすすめのストレッチをご紹介します。

正しい立ち姿勢は右上の写真なのですが、スマホを見る時間が長い人や、普段から背もたれに寄りかかることが多い人は、左上の「新型猫背」になりやすいんです。本来は骨盤や背骨の傾きをケアするストレッチも必要ですが、ここでは第一ステップとして、頭の重みを支えるため、硬く縮こまってしまった首の筋肉をほぐすストレッチをお伝えします。

まずは、壁を背にして立ちましょう。かかとは壁から指2本分ぐらい離れていてOKです。後頭部、背中、お尻を壁に軽く触れる程度つけます。これがベースとなる、正しい姿勢です。

1.鎖骨中央部分の下を左手で押さえ、少し下に引っ張る。
伸ばしたいのは耳の下から鎖骨につながる筋肉なので、効果的に伸びるように鎖骨側の筋肉を固定します。

2.肩を下げ、首を左に傾ける。
この時、①でお伝えした筋肉が伸びていることを意識すると、よりいいですね。

3.目線は斜め上を見る。反対側も同様に①〜③を繰り返す。
目線を上げた時、顔ごと一緒に上がらないように、あごをしっかり引きましょう。そのまま数回ゆっくり呼吸。反対側も同様に①〜③を行います。

4.胸に手をあて、首の可動域をチェック!
最後に首の動きをチェックします。先ほどしっかり筋肉が伸ばせていれば、首の可動域が広がり、あごを引くと首がスッと伸びるはずです。胸を手で抑えるのは、あごを引かずに体が前に反ってしまうのを防ぐため。体が反るとかえって逆効果なので、壁に背中をつけたまま行うように意識しましょう。

――ありがとうございます! これなら本当に、本のタイトル通り「壁1m」あればどこでもできますね。

そうですね。でも、意識しないとまたすぐ筋肉が硬くなってしまうので、できれば毎日習慣にしてほしいです。慣れてきたら少し負荷を加えて、もうワンステッププラスすると、よりいいと思います。

右上の写真が、先ほどお伝えした、壁を使った正しい姿勢。ここから先ほどのストレッチを行ったわけですが、そのあともう一度この姿勢をとります。伸ばした筋肉を意識して、あごをしっかり引いたままにしておいてくださいね。

そしてそのままの姿勢をキープしながら、膝を曲げて下半身だけで屈伸をします。上半身は先ほどの正しい姿勢を保ったままですよ。これを何回か繰り返します。

「あごを引いて首を伸ばす」という姿勢を保ちながら他の動作を組み合わせることで、普段からこの姿勢をキープできるようにするためのトレーニングです。要は、「屈伸する」ということに意識を向けても、この姿勢が保てるか、ということ。このような複数の動作を組み合わせたトレーニングは、病院などのリハビリでもよく取り入れられています。屈伸にも慣れてきたら、左上の写真のように両手を前に伸ばした状態で屈伸してみましょう。

整体院、マットピラティス、マシンピラティス、
お客さまの要望に合わせた展開をしていくことで
地域に密着したサービスを提供したい

――この仕事のいいところややりがいはなんですか?

この仕事は経験を積み重ねることが何よりの成長なので、多くのお客さまを施術すればするほど、お客さまにもいいサポートができるようになることです。やればやるほどスキルアップできて、お客さまをよくしてあげる質と量が増える。それが一番のやりがいです。

正直、病院で働いていた頃は、本や資料をベースに勉強していました。もちろんそれが今の礎になっていて、その時があったからこそ今があるのですが、今は一人一人のお客さまをとしっかり向き合うことが知識を積み上げることにつながっています。

また、YouTubeをやっていたのもよかったと思います。動画を撮るためには企画を考える。どういう風にしたら伝わるかな、どういう風にしたら簡単で効率的にケアできるかな、と考える工程が、頭の整理になっていた気がします。

――今後力を入れていきたいことや、新しい目標などはありますか?

先ほども少しお話ししましたが、今は新しいマシンピラティスのスタジオを作ることが、僕の中で一番ホットな目標です。その理由の一つとして、マシンピラティスがすごく体にいいと認知されてきたこと。

もともとピラティスはマシンからスタートしました。戦争で傷ついた兵士がベッド上でできるエクササイズとして考案されたのがピラティス。マットピラティスはそこから派生したものです。マットだとマシンがいらないのでどこでもできるし、グループレッスンを行うこともできます。

でもマシンにはマシンなりのよさがある。マシンは負荷を加えるだけでなく、アシストにもつながるんです。正しく使えば、自然と理想のポーズや姿勢が取れるので、効果的にアプローチできます

痛みがあって、プロの細やかなケアが必要な人は整体院でしっかり診させていただきつつ、コストパフォーマンスよく、継続しやすいケアをしたい人は今あるフロアスタジオ、よりアクティブに楽しみながら、効率的に体を改善していきたい人は新しいマシンスタジオ。このトライアングルで、地域の人たちに密着したサービスを提供していきたいと思います。

独立には独立の、組織には組織のいいところがある。
自分が目指すべき未来をよく考えて選ぶことが大切

――今後、理学療法士や整体師を目指す人が学んでおくといいこと、経験をしておくといいことなど、アドバイスをお願いします!

「将来こういう人になりたい」という人を見つけて、その人が実際提供しているものに触れたり、勉強会に参加すると近道になると思います。理想とする人の近くで学ぶと、モチベーションにもつながりますし、おのずとどういう風に勉強していくべきかもわかる気がします。

といいながら、残念ながら僕はそれができていなかったんですけどね。どちらかというと「負けたくない」という気持ちが先に出てしまうタイプだったのかもしれません。できていなかったからこそ、やっておいた方がいいと強く思います。

「こうなりたい」という考えはみなさんそれぞれ。もちろん仕事だけでなく、自分の好きなことを楽しむ時間も人生には必要なので、そのバランスが大事。自分に余裕がないと、いいサービスは提供できません。

――ちなみに、すでに整体師をしていて、「もっとステップアップしたい」という人は、どうですか?

ステップアップにもいろいろな目標があると思います。収入面をアップさせたいのか、技術面をアップさせたいのか。そもそも、組織に入って働きたいのか、自分で開業したいのか。

この仕事は、独立して開業することが全てではありません。オーナーになるということは、自分自身も商品の一つになるので、情報管理も必要ですし、生活のためにはお金のことも考えなくてはいけません。組織に入っていれば、仕事にのめり込むことができるので、技術を磨くことに専念できます

なので「コレ」という一つの答えを出すことはできませんが、もし僕と同じように独立して開業したいということであれば、視野を広げていろいろな物事に触れることをお勧めします。今はSNSもあって情報キャッチはしやすいですが、逆にありすぎて難しい面もあります。うまく取捨選択して、正しい情報を見極めるようにしてくださいね。

――ありがとうございました! では最後に、「理学療法士の3ヶ条」を教えてください。

・引き出し力
お客さまの話を聞いて、その人その人、症状に合わせていろいろな提案ができるように、普段から経験や知識を積み重ね、「引き出し」を増やしておくことが大事だと思います。

・聞く力
問診力ですね。お客さまは何に悩んでいるのか、それをどう思っているのか。解決策を導くには、その人の生活を知ることも大切です。一人一人に寄り添う気持ちで接しましょう。

・行動力
先ほどのアドバイスでも、「『将来こういう人になりたい』という人を見つけて近くで学ぶといい」とお伝えしましたが、そういうところに飛び込む行動力も必要です。飛び込んでしまうと、ある程度の時間とお金をそこに注ぎ込むことになりますから、気も引き締まるというか、より真剣に取り組むようになるはずです。自分の中にある答えだけでなく、どこかに飛び込むことで、自分にはなかったアイディアや考えが少なからず増えるので、歩む速度も早くなると思います。

取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄

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