【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.26】スポーツアロマ・コンディショニング® センター 軽部修子さんが語る、トレーナーのお仕事の魅力
ヘルスケア業界のさまざまな職種にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』の企画。
前回に続き、ご登場いただくのは、スポーツ選手へのアロマトリートメントを取り入れたケアを行っている「スポーツアロマ・コンディショニング® センター」の軽部修子さんです。スポーツ業界で培った経験と人脈から、ライフワークにしていたアロマトリートメントをお仕事にしていったという軽部さん。今回は、そんな軽部さんが感じている、トレーナーのお仕事の魅力や必要な素質について教えていただきます。
教えてくれたのは…
スポーツアロマ・コンディショニング® センター
チーフトレーナー 軽部修子さん
一般社団法人スポーツアロマ・コンディショニング®代表理事。プロスポーツ選手を中心にケアサポートをすると共に、一般の方の健康促進のためのフィジカル・アロマテラピーを行う。各種セミナー、講演活動を通じたスポーツアロマテラピーの啓蒙、トレーナーの養成も。著書に、スピードスケート菊池彩花選手との共著『菊池彩花式 トリバランス・トレーニング』(2020年)など。
止まらず動き続けることで、新たな道を切り拓く
―軽部さんが感じる、トレーナーのお仕事の魅力を教えてください。
アスリートの方への施術ですと、スポーツなので結果が目で見えるでしょう。お客様がいい成績を残されたり、レースで表彰されたりすると、やっぱりうれしいですよね。表彰台が全員、私のお客様だったりしたら、すごくうれしい。私のおかげじゃないんですけど、興奮して応援できますし、臨場感ある生活ができるというか。
あと、うちはアスリートだけでなく、一般の方もよくいらしてくださるんです。足に不調のある年配の方が、「先生に出会えなかったら今頃歩けていなかったかも」なんて言っていただけるのも、すごくうれしいですね。
―逆に、お仕事での苦労はありましたか?
今になると笑い話ですけど、やっぱり生活ができないほど収入がなくなった時期はつらかったですね。1年くらいでしたけど、貯金もなくなって、家の電気を点けるのも悩むくらいでしたから…。
でも、そういう時でも、誰かが助けてくださって今があるので、本当に人とのつながりには感謝しています。
あとは、私がしてきたことを全否定されることもありました。アロマ業界では精油を使った強めのアプローチは禁忌とされているんですが、私は取り入れていますし、いわゆる国家検定というものを持っていないこともあって。それで、ナショナルチームの帯同を一度外されたり。
今まで人がしてこなかったことをしているんだから、仕方ないかなと思いますけど、やっぱり攻撃されると気持ちが凹みますよね。
―それは、どうやって乗り越えたんですか?
その渦中にいる時は、あんまり気にならないんです。やりたいことがあれば、なんでも我慢できるというか。だから、夢中でいることが良かったのかなと思います。自分がコレって決めると、全員に反対されてもやれちゃう性格なので(笑)。
不安になって頭でいろいろ考え出すと、身体が止まっちゃうじゃないですか。そうならないように、「動け」って自分に言い聞かせていますね。やらなくなるよりも、やってみて上手くいかなければ、上手くいくように変えてやってみる。とにかく、やってみることですよね。
ヘルスケア業界で必要なのは、「好き」なことを「追求」できるか
―ヘルスケア業界でやっていく上で、必要な素質は何だと思いますか?
私は、その仕事が「好き」であるかが、一番大事だと思います。仕事って、起きているうちの8割くらいしていませんか? それなら、そのものが好きかって、すごく大切。仕事に対して、情熱を持てるかどうかですよね。
あと、ヘルスケアだと、オタクであることも重要かも(笑)。私の場合はアロマですけど、何でも良くて。要は、新しいものをどんどん追求して、取り入れて、進化していけるか。
うちの場合も、お客様へのアプローチの仕方も、スクールでのプログラムも、どんどん変わるんです。いいと思うものはバリバリ取り入れて、進化し続けています。
―軽部さんは、学ぶことがお好きなんですか?
勉強は好きじゃないんですよ(笑)。アロマや施術の勉強も、「スクールに行って勉強する」と思うとできないので、「情報を収集しに行っている」と思ってやっています。興味を持って、面白がって知識を得る、という感じ。
―「これは学んでおいたらよかったな」と思うことってありますか?
国家検定は、持っていたら、もうちょっと楽に仕事ができたかなと思いますね。私は今更、取るつもりはないですよ、勉強嫌いだから(笑)。でも、特に若い生徒さんとか、この仕事でやっていきたいっていう方には、「なんでもいいから、身体を触る国家検定を持っておいたほうがいいですよ」というアドバイスはします。それにプラス、私のやってきたことを取り入れてください、と。
―軽部さんが大切にしているマインドとは?
「思えば叶う。まずはやってみる」ということですね。
失敗がなければ成功もないというか。今だって、こういう状況ですし、スポーツ業界もヘルスケア業界も厳しいですよね。やっぱり不安になることも多いです。そういうメンタルになると、人ってすぐ止まっちゃう。そうなると、どんどん悪い方へ考えちゃうでしょう。
私、もともと負け組からスタートしたので、何かあるとそっちに気持ちが行っちゃうことがあるんです。でも、その性格を自分でよく知っているので。今、そういう状態だっていうことを、客観的に気づけるように気をつけています。そして、何かやってみる。全部を変えなくても、ひとつ変えれば上手くいくかもしれないですから。
―今後の展望について、お聞かせください。
私がしてきたこと、積み重ねてきた経験や情報を、みなさんに伝えていきたいです。トレーナーとして私が第一線で、というよりも、私に変わってやってくれる人を育てていきたい。そういう方たちが、私が作ってきたものをベースに、また新しいものをどんどん作り上げていってくれたらいいなと思うんです。
というか、トレーナーとして活動していただかなくてもいいんですよ。柔道整復師でも、理学療法士でも、もちろん何も資格がない方でも。今ある自分の技術に私が経験してきたものをプラスしていただいたり、セルフケアとして自分の生活を高めていただいたり。どんなかたちでもいいので、私が集めた情報を役立てていただけたら。
あとは、コロナ禍で施術をしてあげられないもどかしさ、セルフケアの大切さを感じたので、遠隔でセルフケアを伝えることも考えています。そして、そうなった時に使えるような、商品開発も始めました。効率的に効果が感じられるアロマジェルなど、「これを使ってセルフケアしてね」と言えるものを、積極的に作っていけたらと思っています。
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不安になりがちな状況下でも、自らを「動け!」と鼓舞することで、新しい展開を作り出してきたという軽部さん。そうすることで、どんどん新しい知識と技術を取り入れ、進化させていくことができたんですね。次回は、軽部さんが行っている「スポーツアロマ・コンディショニング® 」の技術について教えていただきます。
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取材・文/山本二季
撮影/高嶋佳代