トレーナーを続けながら、もっと自由に動ける仕組みづくりを考える【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.112 鍼灸師・パーソナルトレーナー 柴 雅仁さん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
鍼灸師・パーソナルトレーナーの柴 雅仁さんは、「SPTパーソナルトレーニングサロン」を経営しています。一度独立し、挫折を経験しますが、整体と運動を組み合わせたパーソナルトレーニングを打ち出したところ、二度目の独立は見事に成功。トレーナー業のほかに、著書の執筆や一部企業と連携したアドバイザーなど多方面で活躍しながら、SNS運用にも積極的。総フォロワー数は約20万人にも及びます。
前編では、柴さんがトレーナーになるまでの経緯、「SPTパーソナルトレーニング」を考案するまでについて伺いました。後編では、「体軸理論」をもとに考案したSNSの活用方法やトレーナーの枠だけにはまらない取り組みについてお聞きします。
お話を伺ったのは…
鍼灸師・パーソナルトレーナー 柴 雅仁さん
横浜リゾート&スポーツ専門学校を卒業後、正社員としてスポーツクラブに1年4ヶ月勤務し、退職。パーソナルトレーナーとして独立を目指すべく、日本鍼灸理療専門学校に入学し、いろいろなスポーツ系のアルバイトを掛け持ち、実力をつけて独立。その後、一度挫折を味わうも再起を図り、現在では東京都立川市にてSPTパーソナルトレーニングサロンで治療や運動指導を行う。トレーナー業以外でも、本の執筆・監修、レンタルサロンの運営、雑誌の専門家監修なども行っている。体軸にフォーカスしたトレーニング方法が話題。(2023年8月現在)
集客が成功した秘訣は、ブログにあった!
――どんな客層の方が多い印象ですか?
ダイエットが目的!というよりは、身体の不調を改善したい人や、姿勢が気になる人からご利用いただいている印象です。あとは、過去に挫折経験がある人も見受けられます。
――「体軸理論」を学んだことで、幅広い悩みの方に対応できているようですね。
今までは筋肉と骨だけしか見ていなかったので視野が狭かったんです。でも、「体軸理論」を学んでから視野が広がり、症状などを俯瞰して見られるようになった結果だと思います。
――SNSの総フォロワー数は20万人だとか。最初に始めたSNSは?
ブログです。二度目の独立から4〜5年後くらいに「セルフケアラボ」と名付け、身体を調整するストレッチや身体に関する情報を発信を開始。「自分の身体は自分で正す」をコンセプトに、自分で行えるセルフケアの方法や負担をかけない身体の使い方が分かるようにしたんです。
それからツイッターやインスタグラムなど、集客を兼ねて活用するようになりました。どちらもブログ同様に、体軸理論を用いた身体の不調を調整するトレーニング方法を発信しています。
――SNSは、どんな目的で始めたのですか?
集客するにはやはりSNSが必要だと思ったことと、何か新しいことに取り組みたい気持ちがあったんです。
加えて、以前の僕のように体の使い方を間違っている人やそもそも身体に不調がある人などの役に立てるんじゃないかと思いました。
――では、SNSで注目を浴びるようになったきっかけは?
ツイッターがきっかけです。ある投稿に※今までにない反応やリアクションがきていて。そのツイートを分析して、見ている人が求めていることは何か考えながら投稿するようにしたら、一気に拡散され始めてグッとフォロワーが増えました。
当時は、身体を調整するとか体軸理論を用いたトレーニング方法のショート動画を発信している人が少なかったため、注目されるようになったのだと感じます。
トレーナー業に留まらず、視野を広げて活動していきたい
――パーソナルトレーナーとして再スタートしてから順調なようですね。トレーナー業以外にもSNS運用や執筆作業など…多忙な柴さんの1日のスケジュールをおおまかに教えてください。
トレーナーとして指導する日は、大体パーソナルトレーニングがメインです。出張も行っているので、依頼が入ると1日は拘束されるイメージ。出張先は決まっていて、神奈川県横浜市、埼玉県浦和市と都内は自由が丘ですね。
隙間時間はSNSの投稿・収録などに費やしています。あとは、レンタルスペースの管理や対応ですね。
――レンタルサロンの経営もしているのですか?
そうなんです。自由が丘駅周辺のマンションの一室を借りて、整体師、エステティシャンの方々にお貸ししています。
――どのような経緯でレンタルサロンを運営するようになったのですか?
一度目の独立から二度目の独立初期まではレンタルサロンをベースに活動していたのですが、サロンごとの設備や備品の充実度など気になる点が多々あって。「もっとこうしたら使いやすいのに」「なんでこういう構造なのだろう」など思っていたことを自分が運営側にまわって提供しようと思ったことが一番の理由です。
あとは、いろいろなことに取り組む時間が欲しいからです。トレーナーだけだと、どうしても時間の拘束があり、ずっと続けていくには体力的にも厳しいと感じていました。仕事もそうですが、家族や友人などプライベートな時間も確保したい。そこで、拘束時間もなく、一定の収入が得られるレンタルサロンの運営を思い付いたのです。
――どんな準備をしたのですか?
レンタルスペースの学校といってレンタルスペースの経営学が学べるアカデミーを受講しました。今も学んでいる最中なのですが、オンラインなので移動時間を取られず、不明点は先生に聞けるし、同じく生徒側でも情報を共有し合いながら学べるのは非常に楽しいですね。
――評判はいかがですか?
わりと評価は高いと感じます。
今まで僕自身もユーザー側だったこともあり、自分がこうであったらいいなと思う要素を詰め込めたと思っています。さらにレンタルスペースの運営について学んだおかげで、ユーザー視点だけでは思いつかないところのサービスができているのだと思います。
――幅広く活動していますが、ずばりトレーナーの魅力は何でしょう?
身体の構造に対して、学ぶことに終わりがないところでしょうか。
学べば学ぶほど、知らない仕組みや謎がたくさん出てくる。さらには、途中で情報が更新されることもありますよね。終わりがなく、楽しんで追求できる人には向いていると感じます。
身体の構造に興味がある人やマニュアル通りにいかなくても楽しめる人は、トレーナーを目指してみるといいかもしれません。
一度独立につまづいても再起がかなった3つのポイント
1.目標を達成するために、目の前のことからコツコツ取り組む
2.納得いかない点を徹底的に学び、一つでも多くの改善策や選択肢を増やす
3.一つのことに縛られずに、好きなこと、興味が持てることに積極的になる
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)
撮影/寺島 佑(fort)