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介護・看護・リハビリ 2025-08-24

患者さんだけでなく家族もケアできるのが看護師の魅力【介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画 看護師・卒モラ講師 長谷川みゆきさん】#1

業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画」。今回は、看護師・卒モラ講師の長谷川みゆきさんにお話を伺います。

大規模病院、心臓血管外科の専門病院、訪問診療同行看護師など9年の看護師キャリアがある長谷川さんは、育休中に社会との繋がりを失ったことでモラ妻(家庭内でモラルハラスメント行為を行う妻)を経験。この前編では看護師としてどんな仕事をしてきたのか、モラ妻のリアルな状況、バランスボールと人間関係の学びでモラ妻を卒業するまでを伺います。

お話を伺ったのは
看護師・卒モラ講師
長谷川みゆきさん


大学卒業後、大規模病院の神経内科病棟看護師として勤務。4年後、兼ねてから希望していた心臓血管外科の専門病院に転職。その後、訪問診療同行看護師やデイサービスの看護師を経験。看護師のキャリアと産後のモラ妻経験を活かし、2024年12月「卒モラ7daysプロジェクト」発足。現在卒モラ講師として活躍中。2人の女児ママ。

患者さんだけでなく家族もケアできるのが看護師の魅力


「病院ではどちらかというと患者さんがお客様ですが、訪問診療では看護師が『おじゃまします』という感じ。生活の一部に入れてもらうことにやりがいを感じていました」

――看護師としてのキャリアを教えてください。

新卒で1000床規模の大規模病院に入職し、神経内科の病棟看護師として勤務。パーキンソン病やALSなどの患者さんが多く、最終的に人工呼吸器をどうするかの選択に寄り添うことが看護の中心にありました。後から気づくのですが、これがいちばん看護師としての存在意義が発揮できる領域でした。でも当時はもっと治療に関わりたいという気持ちが強く、4年後どうしても働いてみたかった心臓血管外科の専門病院に転職しました。

――心臓血管外科でのお仕事はいかがでしたか。

憧れの心臓血管外科でしたが、呼吸器が不要になったら退院する方が多いので、ここでわたしは看護師としてなにができるんだろうという疑問が…。憧れていた領域だったけど、自分が大事にしているものと重なる部分が少ないなと感じ、今度は訪問診療同行看護師に転職しました。

――訪問診療同行看護師とは?

医師の訪問診療に同行する看護師のことです。これはめちゃくちゃ面白かったですね。患者さんとご家族の暮らしがある場所で働くことに、神経内科の病棟看護師時代に通じるやりがいを感じました。病棟を離れて地域に出るとケアマネージャー、訪問看護師、訪問歯科、ヘルパーなど多職種の方との関わりができ、その繋がりの中でよりよく生きるサポートをしていく一致団結感が心地よかったです。

――当時から患者さんがよりよくという気持ちが強いんですね。

そうですね。看護師を目指した理由も心優しい気持ちからというより、悔しい気持ちが先行していて。小3のときに父が手術のために入院したんですが、母も子どもたちに心配かけまいと詳しい話はしなかったんですね。面会に行ったときに看護師さんに「お父さん大丈夫ですか」と聞いたら「はい」とだけ。小3ながらに「なんなのこの人?」って。わたしだったら「大丈夫だよ。お父さんがんばってるから」とか言ってあげるのに。その悔しさから看護師になろうと決めたんです。そんな経緯もあって、患者さんだけでなく家族もケアするという気持ちは強いかもしれませんね。それがやれるのは医師ではなくて絶対看護師だと当時から思っていました

――訪問診療同行看護師は長く続けたのですか。

一生続けたいと思っていた矢先に結婚・妊娠。やっぱり子どもが生まれたことは人生の大転機。保育園を見学してみると、爆発的にかわいいこの子を預けてまで?というジレンマに見舞われ、家族を大事にしながら働くことを模索し始めたのが産後半年のとき。苦しくもこれがモラ妻絶頂期と重なるんです。

結果や賞賛で自分を承認してきた人がモラ妻になりやすい

産後半年くらいから夫への不機嫌ハラスメントが。

――モラ妻とはどんな状態だったんですか。

長女がかわいすぎて夫がやること全部ムカつくんです。子どもが泣いているから、寝ないから、洗濯物ができない、食事が摂れない。今日やろうと思っていた家事がまったくできない。不満が蓄積して産後3ヶ月くらいから夫に対する暴言が始まりました。いま振り返るとたぶん社会と繋がっていたかったんですよね。自分の体は変えずに子育てもできて社会との繋がりもそのまま保っている夫が羨ましくて仕方なかったんです。

――羨ましさすべてがご主人に向かったのですね。

その映像がいまも焼き付いてるんですけど、ある日夫がお皿を洗ってくれていたんです。で、その後ろ姿に「私のことを皿も洗えない女だと思っているのか」って言ったんですよね。言った瞬間からそんなわけないじゃん。明らかに私たちのためにやってくれてるのに。おかしいのは夫じゃなくて私だ。もう終わりだとものすごい危機感に襲われたのを覚えています。

――そのときご主人は?

「ミユが育児をがんばってるのに、僕には家事しかできることがないから皿を洗ってるだけ」と。夫は、産後の女性全員がこうなる。いつか終わるから、いまは耐えしのぐ時期だと思っていたみたいです。

――でも産後の女性全員がなるわけではない?

それまでに蓄積してきた自分の存在理由の構築の仕方に起因するところが大きいと思います。今プロジェクトをやっていて分かるんですけど、私と同じように結果や賞賛で自分を承認してきた人たちがスルッとモラ妻の谷に落ちているように感じます。存在意義が危ぶまれたときに人を攻撃することでしか立っていられない非常に不健全な状態がモラ妻。これはどうにかして家の外に出なきゃと必死の思いで始めたのがバランスボールの習い事でした。

バランスボールでモラ妻を卒業できるかも!?

――バランスボール教室?

教室では、まずバランスボールで揺れながら子どもを寝かせてそっとヨガマットへ。そこから約1時間のレッスンが、産後の泣けなしの体力を引き上げ、乱れていた自律神経を整えてくれました。結果や人の評価で自分を図るクセがある人がモラ妻になりやすいと言いましたが、その他に産後の体力の低下も要因のひとつ。ちゃんと真面目に取り組めば、モラ妻を卒業できるかもしれない。レッスン3回目には「わたしバランスボールの先生になる」と公言するほど惹きこまれていました

――3回目で先生になることを決意? 

実は、育児でいちばん苦しかったのは寝かしつけがうまくいかないことでした。わたしじゃないと寝ないので、よけい夫が嫌いになってしまって。でも揺れ方に個人差がないバランスボールで夫も寝かしつけができるようになったんです。めちゃくちゃ困っていたことをダイレクトに解決してくれたのがバランスボールだったので「本当にありがとう。これは世に広めねば」という気持ちになったんですよね。

――講師としても活動を?

産後6ヶ月の長女を連れて、バランスボールインストラクター、体力指導士、産後指導士、最終的には指導士養成講師の資格を取得。最初は生徒さん2人だったのでレンタルスペースからスタート。次はちょっと広いスタジオを借りて。家を買ったタイミングで自宅へ。そのうち地域ケアプラザや子育て支援拠点など行政から依頼を受けるようになりました。1才になった子が卒業すると、また0才児のママが入ってきてといいサイクルでまわっていました。

――人間関係の学びもモラ妻卒業のきっかけになったという投稿がありました。

そうなんです。バランスボールでモラ妻解消!と意気込んでいたときに、急に限界を感じることがあって。私はコミュ力がまあまあですが、体力もついて自律神経が整っても夫婦での対話が苦手な人はずっとこじらせていることに気づいたんです。そこで新たにコーチングと能力開発セミナーを学びました。

――その学びの成果は?

コミュニケーションの取り方を教えてあげれば解決できると思っていたんですが、そんなに簡単ではありませんでした。自分のことを棚にあげて言うんですけど、モラ妻になる人はだいたいが真面目なんです。だから正しいコミュニケーションなんて教えてしまったらもっとがんじがらめになってしまう。むしろ背負っているものを下ろしていくべき人たちなんだということに気づきました

わたし自身、コミュニケーションを学んだのにそれを実践できないことへのギャップにまたモラ妻を再発しそうになり、生徒さんに正しさを教えることは正義ではないことを確信しました。

後編では、バランスボールと人間関係の学びから構築した「卒モラ7daysプロジェクト」について詳しくお伺いします。

撮影/森末美穂
取材・文/永瀬紀子

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