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ヘルスケア 2020-07-19

【先輩教えて! 独立への道筋 vol.3】晴レヤカ鍼灸治療院 代表 松岡有理子さん「独立とは、自分が望むワークスタイルの実現」

健康寿命や予防医療、未病といった概念の浸透とともに注目を集める「ヘルスケア」のお仕事。セラピスト、柔道整復師、鍼灸師、ヨガインストラクターやスポーツトレーナーなど、将来は独立を考えている人が多いのも特徴のひとつ。この企画はそんな方々に向けて、先輩たちの独立経験談やアドバイスをご紹介します。

お話をお伺いしたのは…

晴レヤカ鍼灸治療院 代表 松岡有理子さん

40代で脱サラして鍼灸師の道へ。鍼灸専門学校卒後3年目の2018年、縁結びのパワースポットとして知られる東京大神宮そばに鍼灸マッサージ治療院をシェア形態で開業。女性鍼灸師による優しい施術で、『鍼』はもちろん『灸』も多用するスタイルが人気。プライベートでは、双子男子の母。座右の銘は「自分のしたことを愛せよ(映画ニューシネマ・パラダイスの台詞)」。

会社員ではない何か、『手に職』を求めて鍼灸師に

――鍼灸師になる前は、一般企業に長くお勤めされていたそうですね。

「そうなんです。大学卒業後、百貨店での総務・人事の仕事約18年弱、その後再就職した会社で1年半、トータル20年ほど会社員をしていました。」

――会社員を辞めて鍼灸師になろうと思ったきっかけは?

「鍼灸師になろうと思って会社を辞めたわけではないんですよ。1社目は早期退職制度を利用して辞めて。2社目は東日本大震災の影響で人手不足になって勤務状況が過酷になって。当時小学校低学年だった双子の子どももいたので両立が大変になってしまいました。自分のための時間も必要に思ったし、子どもとも遊べる時に遊んでおこうと思って辞めたんです。」

――それがどうして鍼灸師の道へ?

「また会社員で転職するっていうのは、子どものこともあるし、時間も自由にできないだろうから、違うスタイルがいいなと思ったんですよね。何か手に職をつけておくと、独立もそれ以外の道も選べるかなと。社会保険労務士などの事務系の堅めな資格も考えたんですけど、亡くなった父のことを思い出して鍼灸学校へ行くことにしました。」

――お父様の影響?

「父は医師だったんですけど、鍼灸にも興味があると言っていたのを思い出して。積極的に鍼灸師を選ぶきっかけがあったわけではないんですけど、自分の積み重ねてきたものの中からの最大公約数が鍼灸だったという感じですね。」

子育てや自分の時間とのバランス、40代という年齢的なこと、これまで生きてきた素地とこれからの人生への展望、いろんな要素が絡み合って鍼灸師になられたんですね。

この後は国試合格後、修行をする中で開業に至った経緯をお聞きします。

治療院を構えることで、場がある安定感を得た

――開業を決意したきっかけは?

「『ここでやりたい!』という物件に出会ってしまったからなんです。この場所は修行していた治療院へ通う時の乗換駅なんですけど、駅から空いていたテナントを眺めていて、自宅から1本で来られるし、ここならいいなーと思っていて。ある日ふらっとこの街を歩いていたら、このビルにテナント募集の看板が出ているのを見つけたんです。それで、これはもうやるしかない! と。」

「祖母が開業医だったのもあって、独立・開業という選択肢も自然に私の中にもともとあったのかも。開業には早いかも…とは悩みました。でも、卒後3カ所での臨床経験や師匠の治療院で勉強したことに自信を持って自分でgo signを出そうと。子どもの受験など家庭環境のことや自分の年齢的なこともありましたし、誰かがyes/noを判断してくれるわけでもないので。」

――開業すると、時間的余裕はなかなか難しい気もするのですが?

「そうですね。毎日毎日、朝から晩まで貼り付いて仕事するイメージは無かったですね。自分や家族との時間も大切にしたいので時間的な自由度やアソビの部分も欲しかったんですよね。売り上げに追われても、いい治療は出来ないとも思ってて。一国一城を何が何でも一人で守り抜くっていうような勢いでやるのは、私には合っていないなと。」

――なるほど。だから「シェア治療院」なんですね。

「そうなんです。独りでやるのには不安もあったし、家賃負担もキツそうだったので、周りの信頼できる鍼灸師に声をかけて、一緒にやってくれそうな仲間を探しました。相談しながら進めるメリットも大きいと思って。」

――「シェア」って、どこをどうシェアしているんですか?

「開業にあたっての契約や内装などの費用負担は私がしています。『代表』と名乗るからにはその辺りのことは私がしっかりしておこうと思って。あとは、営業を曜日で担当してもらって、家賃などを担当分シェアしてもらっているという形です。」

――シェアオフィスのような感じなんですね。開業にあたって大変だったことは?

「当初シェア予定だった仲間が家庭の事情で参加できなくなったことですね。条件を修正して参加出来るか協議したんですけど、合意できなくて。最終的には諦めて、プランを修正しての開業となりました。」

――現在は松岡さんを含めて3人で運営されているそうですね。代表として気を付けていることはありますか?

「施設設備を共有するのでお互いに不愉快にならないように気を付けています。あとは、共同運営なので細かいことを決めすぎないこと。例えば、基本、曜日で担当していますが、その人の患者さんが担当曜日ではない日を希望されているなら、他の曜日でも使っていいよとか。」

――独立で大変なことは何だと思いますか?

「やっぱり、開業後すぐには収入が安定しないことと、固定費が必ずかかることですね。」

――どのように対策されているんですか?

「新規の患者さま獲得と固定化及び患者数拡大が最大の解決策ですが、優待などで患者さまを増やすより、治療そのものの効果を実感して頂き、信頼して継続利用して頂くことがいちばん大切だと思います。」

――独立して実感したメリットは?

「場があるという安定感は、治療院を構えたからこそ得られたもの。患者さまにも信頼して頂けますし。雇われだと声をかけにくい知人友人にも利用してもらいやすいのもいいです。あとは、得意分野を活かして特色が出せることですね。灸って独特な香りがあって煙も出るので治療に用いない院が多いようなのですが、ここだと3方向窓なので気兼ねなく使えます。」

松岡さんの考える「開業準備に大切な3つのこと」

「すべてがキレイに回っているわけじゃない。これまで人の入れ替わりもありましたし、悩むこともあります。」そう話す松岡さんですが、自分の思い描くワークスタイルで伸びやかに働かれているのが雰囲気ににじみでています。そんな彼女に、開業にあたって大切だと思うことを聞きました。

1.資金の確保

「開業も開業後も、最も大切です。本業だけが難しければ副業もプラスして考えるといいと思います。」

2.同業をよく見ておく

「私も鍼灸学生時代から色々な特色ある治療院に行って治療を受けました。治療そのものもそうですし、院の運営や店構え、内装なども目にするので開業の際にとても役立ちました。」

3.人脈

「人脈は作ろうと思って作るより自然に周りにいた方々に助けられていたり協力したりするものだと思っています。今回の開業や営業にあたっても様々なキャリアや業種の方にアドバイスを戴きました。ただ、決めて実行するのは自分なので、それを履き違えるべきでは無いと思います。」

――最後に、独立を目指す人たちへアドバイスをお願いします。

「大切なのは、自分を『よいコンディション』に保つことだと思います。無理しすぎたり作り込み過ぎたりしても長続きしない、と私は思うので。その『よいコンディション』が独立という形態なのであれば、独立を目指したらよいのではないかと思います。切符は必ずしも片道でも一方向でもありません。そう思えば、チャレンジもしやすくなると思います。」

(晴レヤカ鍼灸治療院 代表 松岡有理子さん)

取材・文:細川光恵
撮影:高嶋佳代

Salon Data

晴レヤカ鍼灸治療院

住所:東京都千代田区富士見2-3-3 タロービル4階
電話:03-6261-0915
URL:https://www.hareyaka0915.com/
Facebook:https://m.facebook.com/hareyaka0915/

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