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介護・看護・リハビリ 2021-05-22

介護業界全体を底上げするロールモデルになるために 介護リレーインタビューVol.13【理学療法士 龍嶋裕二さん】#2

介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。今回は、介護施設「株式会社ゴルディロックス」を運営する龍嶋裕二さんにインタビュー。

前編では起業のきっかけや運営が起動にのるまでのプロセスを伺いました。後編は外出支援のためのアプリ開発も視野に入れた今後の課題について伺います。

《プロフィール》

株式会社ゴルディロックス代表 龍嶋裕二さん…理学療法士。大学病院勤務を経て、2013年に株式会社ゴルディロックスを設立。訪問看護からのリハビリサービス、デイサービス、居宅介護支援事業所及び訪問看護サービスを都内で展開。経験豊富な介護・医療スタッフの連携により、きめ細かいサービスを提供する。

理学療法士から経営者にシフト。経営者のやるべきこと

打ち合わせなどの合間に、
各店舗の管理者とメールのやりとりなどを行う龍嶋さん。
業務効率のアップを図るため、
情報収集などにも余念がない様子

―龍嶋さんの一日の仕事内容を教えてください。

午前は採用業務で面談をしたり、コンサルタントの仕事もしているため、外でお客様に会ったりしています。社に戻ってからは、人事採用の仕組みについて業者の方と打ち合わせをしたり、利用者様に満足していただくための仕組みを考えたり。また、コンプライアンスの管理をするため組織構築に関わる情報収集や各店舗の管理者とメールのやりとりなども行います。

―仕事をする上で日頃から心がけていること、大切にされていることはありますか?

「諦めないで継続すること」。うまくいかないながらも続けることを優先しています。それが業界的にも重要なことだと感じていて。日頃からスタッフには「明確な目標がなくてもいい。ただやり続けることによって目標ができたりする。続ける方法を見つけなさい」と話をしています。

―普段からスタッフの方とのコミュニケーションは多いですか?

経営側にまわってからは現場に立つことが少なくなり、直接的なやり取りは以前と比較すると少なくなっていると思います。現在は、まず部門管理者に報告が上がり、そこから私のところに日報等であがってくる仕組みです。

ー現場のスタッフの声に対して、どのように応えていますか?

今は部門管理者を介して伝えるようにしています。新入社員は、わからないことがあったら誰に聞いたらいいか迷ってしまうことがあります。曖昧なまま、利用者さまに接していると不誠実だと捉えられることもあります。なので、わからないことがあったときは恥じる必要はないので、誰かに聞くように伝えています。

私でなくても、社内で共有して答えることができれば、利用者さまやそこに関わる人は幸せになれると思うんです。そのためにも「ほうれんそう」の仕組みの精度を上げていきたいです。こちらから出す言葉も定義を明確にし、業務を通してどう教育していくか、経営者としての課題だと思っています。

機能訓練だけでなく、外出支援、生活指導もリハビリの仕事

介護業界の課題を掲げ、ロールモデルを作って
業界全体を底上げしていきたいと話す龍嶋さん

―思い出に残っているエピソードはありますか?

人工関節の利用者さまが通われて半年くらい経ったとき、「先生、銀座のレストランに行ってもいいですか」と相談があったんです。そこで、「杖をついて付き添いの方と行く」、「足をあまり使って欲しくないのでタクシーで」、「駅ではエレベーターを使って欲しい」と、具体的なアドバイスをさせてもらいました。

すると当日、「食事に来れたよ、ありがとう」と電話をいただきました。先立たれた旦那さまとの思い出のレストランで、毎年家族と行くことが定例になっていたそうです。とても喜んでいらっしゃいました。

―感謝の気持ちが伝わってきますね。駅のことも調べてお伝えしたのですか?

はい。情熱が必要にはなりますが喜んでいただけると嬉しいので。今後は、リハビリを継続可能にするために、そういった外出支援もスムーズに提案できるシステムをアプリなどで構築していく必要があると思っています。

テクノロジーが進化している時代なので、日々の業務をどう効率化していくかが課題です。改善できるとこの業界全体が盛り上がると思います。できるならばロールモデルを作って、厚生労働省などに提案していきたいです。

―ロールモデルや効率化が図れるアプリができたらとても便利になりますね。外出支援などもリハビリの仕事のひとつなのですね。

外出の支援や生活指導などはリハビリ業務ではないと思っている人も多いので、面接のときに我々がやっていることは、リハビリに関わる在宅評価や外出支援も仕事のひとつだとお伝えしています。

例えば、公共交通機関の段差は、大体25センチかそれ以下。ワンステップバスではないバスは、30センチの段差があります。利用者さまが遠出をしたいと相談してきたとき、それらの段差を登れない人に外出許可を出してOKか? 結論からいうとダメです。

その場合に私たちは、外出するために25センチの段差を登れるようになりましょうと提案します。このような背景をわかった上で利用者の方に説明ができないと、「どうしてこんな練習をしないといけないんですか?」と不信感をいだかせてしまいますから。

―ただ「歩く練習をしましょう」ではなく、段差を登れるように練習をしましょうと、理由がわかれば納得がいきますね。

そうなんです。ここが業界的に定着していないところだと思っています。目標設定をしている割には説明がなく、明確性に欠けている。利用者様のニーズを知って、どうアプローチしていくかを伝える必要があります。そこのミスマッチが起こらないように、利用者様が描いている現実と、こちら側が描いている現実をすり合わせすることが、医療関係者の重要なところになるのかなと思います。

スタッフや利用者さまに齟齬を生じないように、
あらかじめ定義を明確にしたり、
言葉選びにも気を配る龍嶋さん

―お仕事をするうえで苦労されたことはありますか?

前述の「ほうれんそう」の課題にもなるのですが、人によって解釈が違ったりするので、ものの伝え方に齟齬を生じやすいのが悩ましいです。ですから、論点がずれないように、現状の定義をしてからお話をするように心がけています。

―最後に理学療法士を目指す方に魅力を教えてください。

率直にいうと、こんなに「感謝」してもらえる仕事はないです。また、学問領域の幅が無限大。健康全般に関われることは専門職のなかでも稀です。ドクターは3分診断など言われたりしますけれど、この仕事はひとりのかたに対して関わる時間も長く、生活に関わる幅も広い。とてもやりがいのある仕事だと思います。

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利用者さまの生活にしっかり寄り添い、最後まで何かしらのサービスで関われたら、と話す龍嶋さん。利用者さまとスタッフのことを第一に考え、現状に甘んじることなく、システム構築やアプリ開発なども視野に取り組んでいる姿が印象的でした。貴重なお話しありがとうございました。

▽前編はこちら▽
目指す形は、高齢化社会を支えるインフラサービスになること 介護リレーインタビューVol.13【理学療法士 龍嶋裕二さん】#1>>

取材・文/ながいまき

Infomation

株式会社ゴルディロックス

住所:東京都板橋区仲町38-3 コープエンリッチ1F
TEL:03-6905-9367

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