「ヤル気を出させる指導法」で、結果が出るトレーニングを【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.38 INSTRUCTIONS 清水 忍さん #3】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
パーソナルトレーナーとして活動しながら、トレーナーの育成に尽力している「株式会社 INSTRUCTIONS」の清水 忍さん。これまで前編では、仕事のベースとなっている経験について、中編では仕事に感じる魅力と続けていくための心得をお聞きしてきました。
後編となる今回は、清水さんが提唱している「ヤル気を出させる指導法」についてインタビュー。「伝え方で結果が変わる」という真意を紐解きます。
お話を伺ったのは…
「株式会社 INSTRUCTIONS」代表 清水 忍さん
トレーニングジム「IPF」ヘッドトレーナー。パーソナルトレーナーとしてプロアスリートから一般まで幅広いトレーニング指導を行う傍ら、トレーナー専門学校での講師、企業での健康プログラムの作成、ジムのアドバイザーなど教育を軸に活動。講師として輩出してきたトレーナーは2000人以上。メディアでの監修・出演なども多数。
その人の願望と運動につながりがなければ「運動したい」とは思えない
―清水さんが指導の時に重視しているという「やりたいと思わせる伝え方」について、詳しく教えてください。
人によって運動する理由はさまざまです。理由に見合った伝え方をしないと、その運動が必要なことだという認識が持てません。同じスクワットをするにしても「何のためにやっているのか」という意識付けが大切なんです。
例えば短距離走のアスリートにスクワットをさせたい場合。アスリートが運動する理由は「勝ちたい」からです。だからスクワットが何故勝つために必要なのか、という意識付けが大切になります。スクワットを「脚力を鍛えるため」ではなく、「地面を強く押す能力を上げるため」と伝える。それだけでパフォーマンスが格段に良くなります。
同じスクワットを、ボディメイクがしたい人なら「この筋肉を刺激する」というスタンスでやる。生活習慣病の人なら「長く歩いても腰が痛くならない体を作るため」と伝える。
クライアントに必要なことを見極めたうえで、同じ動作でも切り口を変えて伝える。その運動をする理由が明確だと、しっかりやろうと思えるし、動きも変わってくるんです。
―なるほど。運動する理由、願望をしっかり汲み取ることが大切なんですね。
人の行動は、願望がないとスタートしません。願望を持たずにしていることは、強制力がなくなった瞬間に止めてしまいます。
だから、願望が明確でない場合は、願望を持たせることから始まります。運動する「理由の提供」です。肥満の改善などは「本気でヤセたい」と願望すれば、すごく簡単なことなんです。だから本気が出せるように、根っこにある願望を探っていきます。
そして、これができれば課題が解決できるという知識をゴールまで持たせ、その道筋のなかに運動を組み込んでいくんです。
現状を自覚させ、必要なことを提示する。そのために運動が必要だと納得させる
―実際の指導は、どんな流れになりますか?
例えば「メタボ改善」を願望する人が来たとします。最初にするのは、現状を自覚するところからです。いろいろな動作をしてもらい、同じ動作を僕がやって見せます。そして、何が違うと思うか考えてもらいます。
僕は食事や運動に気をつけているタイプではありません。では何が違うかと言うと、僕は一日中動いている。でもあなたは動かない生活をしている。だから、「あなたに必要なのは、日々ラクに動ける人間になることなんです」ということを伝えます。これができればメタボ改善につながるという道筋の提供です。
そして「日常の動作がラクになる」というテーマで、運動の指導につなげていきます。例えば、ラクに立ち上がるための動作として、スクワットを指導する感じです。
清水さん流「立ち上がり動作」の指導
言葉によって意識付けを変えていくと、動作にも変化が生まれます。一度スクワットの動作をしていただき、「地面を強く足で押すという意識だとどうですか」と聞くと、自然と正しいポジションになっていきます。「地面を強く押す」となると、ジャンプするのと同じ意識になるので、つま先やかかとに体重がかからなくなるんです。
トレーナーがチェックするのは、荷重しているポイントがどこにあるか。荷重ポイントをくるぶしの少し前あたりに調整し、そこに向かってグッと体重を押し込むようにすると、適切な立ち上がり動作になります。そして立ち上がった時は、くるぶし少し前から真っ直ぐ上に引いたラインの中に、体が全部入るように導きます。
―最後に、今後の展望や目標を教えてください。
漫画『タイガーマスク』に「虎の穴」というプロレスラー輩出機関があるんです。敵なんですけど、「そこを出てきた奴はすごい」という機関でもあるんですね。
僕はトレーナーの「虎の穴」になりたい。「すごいやつは全部あそこの出身だ」と言われるのが目標です。そのためにトレーナー養成機関「清水塾」を展開しています。
トレーナーという仕事をする人たちの教育を、「教えるのが上手」という僕なりのスタンスで行うこと。「教え方が上手い」と言われるトレーナーを、これからもたくさん育てていきたいと思っています。
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ただ技術力が高いのではなく「教えるのが上手いトレーナー」という清水さんの考えは、きちんと結果につながる指導には不可欠なもの。しかし、「それを可能にするためには、確かな知識が必要である」とも清水さんは言います。指導する相手の人生を変えるかもしれないトレーナーの仕事は、とてもストイックなものなのだと感じました。もっと詳しく清水さんの考えを知りたい人は、ぜひ「清水塾」にお問い合わせを!
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指導者への教育からトレーナー業界を変えていく!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.38 INSTRUCTIONS 清水 忍さん #1】>>
取材・文/山本二季
撮影/片岡 祥