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介護・看護・リハビリ 2021-05-21

目指す形は、高齢化社会を支えるインフラサービスになること 介護リレーインタビューVol.13【理学療法士 龍嶋裕二さん】#1

介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。今回お話しを伺ったのは、都内を中心に介護施設を運営する「株式会社ゴルディロックス」代表の龍嶋裕二さん。

前編では、大学病院で理学療法士として働いたのち、介護施設代表へ転向した経緯と運営が起動にのるまでのプロセスを、後編では理学療法士の視点を活かした経営者としての取り組みや今後の課題を伺います。

《プロフィール》

株式会社ゴルディロックス代表 龍嶋裕二さん…理学療法士。大学病院勤務を経て、2013年に株式会社ゴルディロックスを設立。訪問看護からのリハビリサービス、デイサービス、居宅介護支援事業所及び訪問看護サービスを都内で展開。経験豊富な介護・医療スタッフの連携により、きめ細かいサービスを提供する。

サッカーで足首を痛め、理学療法士を志す

理学療法士になるために専門学校に通った経緯を話す龍嶋さん。
働くようになって思い描いていた仕事内容との
ギャップに戸惑いもあったと言います

―理学療法士を目指したきっかけは何ですか?

中学からサッカーをやっていましたが、高校一年生の時に足首の変形性関節症になり、名医に手術では治らないと言われて愕然としました。当時はリハビリという分野が発達していなかったこともあり、整骨院にも通いましたが完治せず、プレーヤーとしてはそこで終わってしまいました。

でものちに調べてわかったのは、完治はできなくてもリハビリしていれば結果が違っていたかもしれないということ。あの時、もっと違う説明や知識を教えてもらえていれば…という悔しい思いから、同じような人を出さないためにスポーツに関わる仕事に就きたいと思うようになりました。

―その後、高校の先生の勧めで理学療法士の専門学校へ。理想と現実のギャップに一度はやめようと思ったこともあったそうですね。

学校の実習では後遺症が残っている障害者の方に対して、心のケアができるか自信が持てずにいました。それに患者さんへの説明も「〜ということであろう」という断定ではない表現が多く、「ただ寄り添えばいい」というメンタル論のようにも思えて。状況は理解できるのですが、どうもしっくりきませんでした。

それを担任の先生に話すと、実習先からの評価は高かったようで、「気持ちはわかるが、仕事は自分のためにやるのではなく、求められて必要とされていれば、それが一番いい」と言われたんです。理学療法士には向いていないと思っていましたが、その言葉がきっかけで、そのまま病院に入職しました。

―実際に病院で働き始めてどうでしたか?

毎日辞めたくて仕方なかったです。リハビリで何ができるのか、まだよくわからなかったんです。それでもがむしゃらに続けて、楽しくなってきたのは4年目くらいから。年間300人以上のリハビリに携わり、やっと柔軟に対応できるようになって看護師やドクターから信頼をいただいているのかなと思えるようになりました。

順風満帆のなかの転機。リハビリ施設の起業を決意

大学病院に勤めて5年ほど経った頃、
ビジネスフレームワークというものに
興味を持ち始めたという龍嶋さん。
ビジネス書など読み漁ったそう

―順調にお仕事をされるなか、どういった経緯で起業することになったのですか?

病院が早期退院を導入したんです。すると退院後に調子が悪くなり、再診する方が結構いて。ひとりの患者さんをきちんとフォローしてあげたいという気持ちがあったので、病院の体制に違和感を感じるようになりました。

そんな中、病院の近くに誰でも通えるリハビリ施設がないか調べてみると、民間のデイサービスやデイケアはあっても、理学療法士など専門のセラピストがいる施設はほとんどなかったんです。当時は医療保険ではなく介護保険でリハビリを促す過渡期で、いい施設があったとしても公開している情報がわかりづらく、患者さんに情報が届いていない状況でした。

そんな現状を見て、「それなら僕ができることをやろう」という想いに変わっていきました。

すべての人にサービスを提供し続けることが医療や介護の本分

―元同僚と一緒に26歳でリハビリをメインに行うデイサービス施設を設立。オープン当初の様子はどうでしたか?

初月の利用者は2名だけでした。「施設の情報がわかりにくい」という疑問を抱いていたにも関わらず、自分たちの情報を周りに全く告知していなかったのが原因です。恥ずかしながらビジネスの知識はゼロ。当時は倒産してしまうのではと不安に思うこともありました。

―そこからどうやって利用者を増やしていったのですか?

チラシを配ったりしたのですが効果はなく。そのうち、地域の方やケアマネージャー、ドクターと交流できる機会を活かして、施設のサービスを猛アピールしました。

同時に最初に来てくださった2名の利用者さまが健康になるよう全力を注ぎました。すると利用者さまが他の方を紹介してくださるようになり、口コミも広がって、翌月に2名、4ヶ月後には定員を達成できたんです。

それからは、このケアをすると身体にどう影響するかを事細かにご説明し、方法論を考えつくして利用者さまのためになることをやり続けました。それが地域の方やケアマネージャーさん、ご家族に信頼を得たのかと思います。結果、利用者さまも増え、定着するようになりました。

―リハビリが気軽に受けられるようになって、利用者さまはとても喜ばれたのでは?

はい。今までにないサービスを実現してくれたと、皆様からびっくりするくらい感謝されて、やりがいというところをあらためて感じた瞬間でした。原点に立ち返りますが、「周りが求めることをちゃんとやる仕事は素晴らしい」と。そしてそれをやり続けるのが医療や介護の本分だと再確認しました。

介護が水道といったインフラになるよう、
社会を変えていきたいと熱く語る龍嶋さん

―介護施設のほか健康に関わる自費サービスなど多岐に渡る事業を展開していますよね。お客さまのニーズに合わせて広げていったのでしょうか?

そうですね。水道といったインフラのように、利用する方々が自分のペースでいつでも使用できるようなサービスに育てる。それが今後のミッションだと思っています。

今は介護事業がメインですが、ゆくゆくは子どもから大人まで年齢問わず利用できる、健康に関するサービスを提供したいと思っています。介護保険、医療保険の枠ではないサービスも、事業として成立させたいですね。

―若い世代も健康維持のために利用できるサービスがあると心強いですね。

習慣化していただかないと意味がない業種業態ですので、習慣にしてもらうにはどんなことをしたらいいのかも考えなくてはいけません。運動学習の方法論やどうしたら行動的に動けるのかなど、利用者に理論をきちんと説明し、解決方法を提案し続ける団体でありたいですね。

そのためには、思いがあるスタッフが集まらないと難しいと思っているので、スタッフの成長を信じながらやっています。

―お仕事でやりがいを感じるのはどんなときですか?

スタッフが「楽しい」と言ってくれるときです。それと利用者の皆様が会社や僕自身の成長も含めて喜んでくださること。「よく作ってくれたね、あってよかった。生きがいのひとつになっているよ」と言っていただくのが嬉しくて、また頑張れます。

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老若何女、誰もが最良のサービスを継続して利用できる社会を目指しているとおっしゃっていた龍嶋さん。誰でも受けられる、先を見据えた新しいサービスの形に期待が膨らみます。後編では、理学療法士の視点が活かされた龍嶋さんならではの「経営者としての取り組み」や「今後の課題」についてお伺いします!

▽後編はこちら▽
介護業界全体を底上げするロールモデルになるために 介護リレーインタビューVol.13【理学療法士 龍嶋裕二さん】#2>>

取材・文/ながいまき

Infomation

株式会社ゴルディロックス

住所:東京都板橋区仲町38-3 コープエンリッチ1F
TEL:03-6905-9367

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