介護リフォームをする前に優遇制度を調べよう
当然ですが、一般家庭の家は介護に適しているとは言えません。そのため、もしあなたがご家族の在宅介護をすることになった場合、家で介護をし易いように、利用者の負担軽減のため、家庭内での事故や怪我が起きないようにするために自宅をリフォームすることになるかもしれません。
例えば、スロープを取り付けて段差をなくしたり、ユニットバスに手すりを取り付けたりなどの改修です。そういったバリアフリーの概念に基づいて、介護をしやすいように住まいのリフォームをすることを、「介護リフォーム」といいます。今回は、その介護リフォームについて手続きの流れや助成制度の基礎知識をご紹介します。
介護リフォームに特化した優遇制度
たいていの介護リフォームには大がかりな工事が伴うため、かなりの金額がかかります。しかし、「高齢者住宅改修費用助制度」という、介護保険を利用してリフォームの自己負担額を工事費用の10%に抑えることができる制度が存在します。しかし、この制度を利用するためには以下のポイントを満たす必要があります。
1.要介護認定を受けている
お住まいの市区町村で「要介護」または「要支援」に認定されている必要があります。例えば年齢が85歳であっても体は元気で、要介護認定がされていない場合は利用できません。
2.自宅を改修する
リフォームする場所は利用者の自宅である必要があり、「頻繁に来る祖父のための改修」というのは対象外になります。要介護認定を受けている本人が住んでいる家の改修のみが対象となります。
3.支援対象となる改修内容である
支援対象となる改修とそうでない改修があります。詳しくは後述の「介護保険を利用できるリフォーム」をご覧ください。
介護保険での受給金額
介護保険を利用した上での住宅改修補助金額は最大20万円までと定められています。20万円までは1割の自己負担(9割の補助)で利用できます。補助金額上限の20万円は一回のリフォームで使い切る必要はありません。数回に分けてリフォームを実施し、利用することも可能です。
介護保険を利用できるリフォーム
「助成金を使えて介護が楽になるなら、あっちもリフォームしよう! こっちもリフォームしよう!」と、考えてしまうかもしれませんが、残念ながらすべての介護リフォームに対して助成金が支給されるわけではありません。実は、「高齢者住宅改修費用助成制度」の対象となる工事内容は、狭い範囲に限られているのです。ではここで、支援対象となるリフォームの内容を見ていきましょう。
内容 | 条件 | 対象になる場合 | 相場金額 | |
---|---|---|---|---|
1 | 手すりの取り付け | 廊下・階段・浴室・トイレ・玄関などの転倒防止や移動目的で設置するもので、取り付け工事を伴うもの。 | ・福祉用具貸与に該当する手すりの設置 | 20,000円~150,000円 |
2 | 床の段差解消 | 部屋・廊下・トイレ・浴室・玄関などの各室間の床の段差を解消するための住宅改修(敷居を低くする工事やスロープの取り付け工事、お風呂場の床のかさ上げなど)。 | ・昇降機、リフト、段差解消機等、動力により床段差を解消する機器を設置する工事 ・福祉用具貸与に該当するスロープの設置 ・福祉用具購入に該当する浴室用すのこの設置 |
50,000円~200,000円 |
3 | 滑り防止及び移動の円滑化のための床材の変更 | 車椅子での移動に向かない畳や歩行時に滑りやすい床材を、板製床材やビニル系床材への変更。 | 面積や材質により大きく異なる | |
4 | 扉の取り替え | 出入口の開き戸を引き戸、折り戸、アコーディオンカーテン等に取り替えるといった扉全体の取り替え。ドアノブの変更、戸車の設置等も含む。 | ・引き戸等への扉の取り替えに合わせて自動ドアとした場合の、自動ドアの動力部分の設置 | 100,000円~150,000円 |
5 | 洋式便器などへの便器の取替え | 和式便器から洋式便器への取り替え。 ※暖房便座・洗浄機能付の洋式便器への取替えも可。 |
・洋式便器から洋式便器への取替え | 200,000円~600,000円 |
6 | 1~5の工事に付帯して必要となるもの | ・手すり取り付けのための壁の補強 ・浴室の段差解消(浴室の床のかさ上げ)に伴う給排水設備工事 ・床材の変更のための下地の補強や根太(床板を支える横木)の補強 ・扉の取替えに伴う壁又は柱の改修工事 ・便器の取替えに伴う給排水設備工事、便器の取替えに伴う床材の変更等 |
※上記金額はあくまでも相場です。実際にかかる金額については事業者に問い合わせてください。
リフォーム-受給の流れ
1.要支援・要介護認定を受ける
前述したように、受給するには「要介護・要支援」の認定を受ける必要があります。要支援・要介護認定の方法については、過去の記事「要支援・要介護認定の基準」で紹介してありますので、ご確認ください。
2.担当のケアマネジャーにサービス利用の相談をする
担当ケアマネジャーに、リフォームをしたい旨の要望を伝え、検討してもらいます。リフォームすることが決まったら事業者探しをしてもらい、事業者が決定します。
3.家の下見と改修プランの作成
事業者が家の状態を下見に来ます。普段の生活状況を見たり、改修に必要なスペースがあるかなどを見ます。下見の結果から、事業者が住宅改修プランを作成するので、改修内容や費用に納得できたら契約します。
4.工事と支払い
工事を開始し、終了したら費用を支払います。この時、ひとまず全額支払います。
5.受給申請
リフォーム後、以下の書類を市町村の介護保険課に提出・申請します。
・リフォームの領収書(本人名義)
・工事費内訳書
・改修完了確認書(改修前・後の写真を添付したもの)
※自治体によっては事前申請が必要な場合もありますので、市区町村の窓口で確認してください。
失敗しないリフォーム業者の選び方
「作業が雑」、言葉巧みに騙されて「不要な工事をされて多額の工事費を請求された」のようなリフォームに関わるトラブルは実際に存在します。このような悪質なリフォーム業者に関わらないようにするためには、良い業者と悪い業者を見極める力が必要です。
しかし、生涯の内に何度もお世話になるわけでもないリフォーム業者を見極めるのは至難の業と言えるでしょう。そこで、良いリフォーム業者を選ぶためのチェックリストを作りましたので、実際にリフォーム業者を選ぶ時には是非利用してください。
□利用者の立場に立ってリフォーム案を提案してくれるか
□介護保険の内容を正しく理解しているか
□過去に介護リフォーム、バリアフリーリフォームの実績があるか
□福祉住環境コーディネーターが在籍しているか
□申請に必要な書類の準備など積極的に対応してくれるか
再度リフォーム費を受給できる場合
介護保険を利用した上での20万円の補助金は原則として一生に一度と決まっていますが、以下の場合は再度利用できます。
・転居した時
自治体によって、上乗せの補助をしている場合がありますので、詳しくはお住まいの市区町村窓口で確認してください。
よくある質問・相談
ここでは、リフォームに関するよくあるご質問・ご相談に回答していきます。
Q1.賃貸マンションのリフォームでも助成金の対象になりますか?
A1.条件を満たしていれば介護保険の助成金対象になりますが、賃貸の改修の場合はマンションの管理人の承諾が必要になります。
Q2.リフォームはケアマネージャーの指定した業者でないとダメなのですか? 自分で探した業者の方が安いようなのですが……
A2.リフォーム業者は利用者が指定しても構いません。しかし、ケアマネはリフォームに慣れている業者や良心的な業者を知っている場合が多いです。ケアマネに、「なぜこの業者を選んだのか」を聞いてみると、納得できる理由があるかもしれません。
Q3.「高齢者住宅改修費用助成度」以外にも補助金給付・減税される制度ってありますか?
A3.介護に特化したものは少ないですが、無いわけではありません。バリアフリーなど特定のリフォームの場合に利用できる「住宅ローン控除」や、自治体での独自の補助金支給制度などで、金銭的な負担が更に軽くなる場合もあります。お住まいの地域の役所に相談してみましょう。
リフォームに対して介護保険を利用して補助金を受けるためには、条件はあるもののメリットは大きいものです。介護リフォームにはかなりの費用がかかってしまいますので、補助金を受けるための決まりをしっかり把握して補助金を受給し、少しでも介護における金銭的な負担を軽くしましょう。