要支援・要介護認定の基準
介護保険制度では、寝たきりや認知症、意識障害などの理由で常に介助が必要である「要介護状態」なった場合や、家事や身支度などの日常生活に支援が必要である「要支援状態」になった場合は介護サービスを受けることができます。
要支援・要介護状態であると認められることを、それぞれ要支援認定・要介護認定と言い、市町村に設置されている介護認定審査会で判定されます。要支援は2段階、要介護は5段階に区分されており、認定される区分によって受けられる介護サービスの種類や介護サービスの給付金額も変わるので、認定基準は客観的かつ公平に判断されるように全国一律で定められています。
要介護認定を受けるための手順と審査基準
介護保険を使うと、介護サービスを1割の自己負担で利用できます。しかし介護保険は医療保険のように保険証を提示すれば目的のサービスを受けられるというものではなく、要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定を受けるためには下図のような流れと審査が必要です。
【1】認定申請
まず、要介護認定を受けたい人が住民登録してある市区町村の役所窓口で認定申請をします。申請手続きには以下の書類等が必要です。
1.要介護認定申請書(窓口にあります)
2.介護保険被保険者証
3.健康保険被保険者証(第2号被保険者の場合)
4.申請者の印鑑(家族以外の代理申請の場合)
5.主治医(かかりつけ医)の名前、医療機関、所在地が分かるもの
6.被保険者本人の個人番号(マイナンバー)が確認できるもの
7.申請者の身元・住所が確認できるもの(運転免許証など)
※申請は本人以外にも家族や、住宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)、地域包括支援センター、介護保険施設などに代行してもらうこともできます。
【2】意見書
主治医(いない場合は指定医師)が心身の状態についての意見書を作成し、介護認定審査会に提出します。
※主治医意見書は市区町村の指示により主治医が作成します。
【3】訪問調査
役所の担当者や介護支援専門員(ケアマネジャー)が家庭を訪問し、自宅での日常生活での行動を見たり、本人への声かけ、家族へ心身の状況について聞き取り調査を行います。調査員は公平な判定を行うため、全国共通の調査票を一次判定で使用し、調査票に記入できない箇所は特記事項として二次判定に使用します。
【4】一次判定・二次判定
要介護認定の基準は「介護の手間を測るものさし」であり、病気の重さではありません。つまり、“要介護2の認知症高齢者の症状が悪化したら要介護3になる”という単純なものではないのです。症状が悪化しても介護の手間が変わらなければ要介護度も変わりません。
介護の必要度合いの判定は公平に行うため、調査票の内容を元にコンピュータによる一次判定を行い、その結果と訪問調査の特記事項、主治医意見書から保険、医療、福祉の専門家で構成する介護認定審査会が調査する二次判定の結果、要介護度が判定されます。
<要介護認定等基準時間の分類>
直接生活介助 | 入浴、排泄、食事等の介護 |
間接生活介助 | 洗濯、掃除等の家事援助等 |
BPSD関連行為 | 徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等 |
機能訓練関連行為与 | 歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練 |
医療関連行為 | 輸液の管理、じょくそうの処置等の診療の補助等 |
上記の項目に対してどれだけの介護時間(要介護認定等基準時間)が必要かを算出し、その時間と認知症加算の合計から要支援1~要介護5に判定されます。
<要介護認定等基準時間の分類>
要支援1 | 要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要支援2 要介護1 |
要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護2 | 要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護3 | 要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護4 | 要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護5 | 要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態 |
認定調査項目は1群から5群までの62項目があり、様々な部位の確認動作があります。
第1群 身体機能・起居動作
四肢麻痺(左上肢・右上肢・左下肢・右下肢)、寝返り、立ち上がり、洗身、視力、聴力など13項目
第2群 生活機能
移乗(ベッド・車いす)、嚥下、排便など12項目
第3群 認知機能
意思の伝達、生年月日を言う、場所の理解など9項目
第4群 精神・行動障害
被害的、感情が不安定、介護に抵抗など15項目
第5群 社会生活への適応
薬の内服、金銭の管理、買い物など6項目
認定結果通知書は原則、申請してから30日以内に認定結果が記載された保険証と一緒に届きます。
要介護状態区分 | 心身状態の例 |
---|---|
要支援1 | 日常生活の能力は基本的にあるが、入浴などに一部介助(見守り・手助け・付き添い)が必要。介護予防サービスにより生活機能が維持または改善する可能性が高い状態。など |
要支援2 | 食事や排泄はほとんど自分でできるが、時々介助が必要な場合がある。立ち上がり等に不安定さがみられることが多い。重い認知症等もなく心身状態が安定しており適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持や改善が見込まれる状態。など |
要介護1 | 食事や排泄はほとんど自分でできるが、時々介助が必要な場合がある。立ち上がり等に不安定さがみられることが多い。心身の状態が安定していないか認知症等により部分的な介護を要する状態。など |
要介護2 | 食事や排泄に介助が必要なことがあり、身の回りの世話全般に介助が必要。立ち上がりや歩行に支えが必要。など |
要介護3 | 排泄や身の回りの世話、立ち上がり等が自分でできない。歩行が自分でできないことがある。など |
要介護4 | 排泄や身の回りの世話、立ち上がり等がほとんどできない。歩行が自分でできない。問題行動や全般的な理解の低下が見られることがある。など |
要介護5 | 食事や排泄、身の回りの世話、立ち上がりや歩行等がほとんどできない。問題行動や全般的な理解の低下が見られることがある。など |
非該当(自立) | 歩行や起き上がりなど、日常生活の基本動作を自分で行うことができ、薬の内服や電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある状態。 介護保険によるサービスは利用できないが、市町村が行う保健・福祉サービスなどを利用できる場合がある。 |
【5】更新
認定の有効期間は新規の場合、原則6か月です。変更申請をした場合も同様に6か月で、更新申請をした場合の有効期間は12か月という制限があります。
有効期限を超えると介護サービスを利用対象外になってしまいますので、継続して介護サービスを利用する場合は更新申請手続きをする必要があります。
認定結果に納得できない場合
「要介護と認定されてもおかしくない状態なのに、要支援の認定を受けた」もしくは「非該当(自立)と判断されて、介護保険が利用で来ない状態になった」などのケースは全国であるようです。
そのように、認定結果に納得できない場合の対処法応は2つありますが、まずは、お住まいの市区町村の担当窓口で、そのような認定結果になった理由を確認しましょう。
それでも納得できない場合の対処として「不服申し立て」と「区分変更申請」の2つがあります。
<不服申し立て>
介護保険法に基づいて、各都道府県に設置されている「介護保険審査会」に対して、不服申し立てをします。それにより、認定が不当であると判断された場合は、市区町村の認定を取り消して改めて調査を行います。
しかし不服申し立ては、通知があった翌日から60日以内に行う必要があり、更に結果が出るまでに数か月かかる場合があります。
<区分変更申請>
これは通常、要介護度が変化したと判断した段階で申請するものです。しかし、要介護認定の結果を不服としている方には頻繁に利用されています。区分変更申請には申請時期の決まりはなく、再調査の結果は30日以内に出ます。
ただし、区分変更申請をして審査を行ったとしても、希望する要介護度に認定されないかもしれないので、「不服申し立て」も「区分変更申請」も一長一短であると言えます。
よくある質問・相談
ここでは、要介護認定関連のよくあるご質問・ご相談について回答していきます。
Q1.他県に引っ越ししたら祖母の認定が要介護から対象外になってしまいました。県によって基準が違うのですか?
Q2.義理の母は要介護度4で、左右もわからない状態です。ところで、障害者が身内にいると自動車税が免除になると聞いたのですが、要介護度4はこれに該当しますか?
Q3.要介護認定がおりるまでに1か月かかりますが、それまでは介護サービスは利用できないのですか?
Q4.要介護度が上がると、金銭的にも安価になるのですか?
まとめ
介要介護認定を受けることにより、介護保険で介護サービスを利用できるようになります。そのための申請や申請は手間と時間がかかりますが、自己負担額が1割になったり、介護にかかる手間や費用を軽減できたりなど、相応のメリットはあります。面倒だと思って認定を受けていない人も、これを機に介護認定を受けることをオススメします。