地方開業成功の秘訣は自分の今を大切に、地元とのつながりを作ること【アイランドヒーリング株式会社 川島直己さん】#2
地方でヘルスケア事業に携わっている方に、集客や売り上げアップのための取り組みについてインタビューする本企画。前回に続き、沖縄県石垣島でセラピストとして活躍している、アイランドヒーリング株式会社 代表の川島直己さんにお話をお聞きします。
後編では、経営者となってから大切にしていることや、地方でサロン経営をしていくうえで大切だと思うことを教えていただきました。
お話を伺ったのは…
アイランドヒーリング株式会社 代表取締役 川島直己さん
静岡県出身。エステティックやセラピーを学んだ後、セラピストとして活動をスタート。10年後、沖縄県に移住。結婚や介護などのライフスタイルの変化に合わせ、アイランドヒーリング株式会社を設立する。沖縄県エステティック・スパ協同組合監事、THE Therapistスクール校長、INFA国際連盟インターナショナルエステティシャン、日本ケアセラピスト協会準講師など、幅広く活動中。
経営者もセラピストも「自分に今何が必要か」考えることが重要
――経営者になってよかったと感じることは?
自分の考えたこと、したいと思ったことができるのはメリットだと思います。大きな会社ではないので、「こういうことをしていきたいんだけど、どう思う?」とスタッフともよく話すんです。でも最終的な責任は自分にありますし、その分やりがいも感じられると思います。また多くの方と知り合えるのもいいところですね。
――事業展開も幅広いので、経営者としては大変そうだと感じます。
そうですね、頭のなかは大変です(笑)。だから常に意識しているのは、整理していくこと。自分の中で、今は何が必要で何がいらないのかを整理するのが、すごく大事だと思います。
とくにコロナ禍以降、すごく経営方針について自分でもいろいろなことを考えて、より一層必要か不必要か、自分の生き方まで、すごく見直しながら日々を過ごしています。
――土地柄も仕事柄も、コロナ禍での変化は大きかったと推察します。
そうですね。自社以外の社外取締役のお仕事もさせていただいていて、多くのセラピストさんたちの面接をする機会があります。そのなかでも、コロナ以前とは変化を感じます。とくにセラピストに応募してくださる方や、スクールを求めてくださる方の年齢層がとても高くなりましたし、意識も高まっていますね。
それはきっと、明日どうなるかわからない不安を抱えるよりも、今日何をしたいかを考えたいという方が増えたからではないでしょうか。面接でお聞きすると、「迷ったけど面接だけでもしてみようと思った」という方がとても多いんです。「まぁいいか」「今度でいいか」ではない生き方に変化している。
そういった考えは、今展開している『原点回帰』というディスティネーション・ウェルネスプログラムを始めたきっかけでもあります。またスクールでも、自分の内面を見つめること、自分を認めることの大切さや、「今何がしたいのか」を考えることの重要性をお伝えしています。石垣島は、その感覚を得るのにぴったりの場所なんですよ。
自分を大切にすることで「対価を払いたい」と思われる存在に
――川島さんがヘルスケアのお仕事をするうえで大切にしていることは?
今はやはり「今日という日を大切にする」ことですね。セラピストの仕事は、お金をいただいてお客様を癒やすものです。とくにホテルスパは、その金額も高額ですよね。お客様はセラピストにお金を払い、セラピストは癒やしのための時間と空間を提供する。その対価に見合ったものを提供するためには、セラピスト側がきちんと自分を大切にすることがとても重要なんです。
今の時代、お客様側の方が知識もあり賢くなっている。その分、安くても高くても、いいと思ったものにはお金を出す時代に変わってきたと感じます。「この人にお金を使いたい」と思われるセラピストでいるためには、日々の自分づくりをすごく大事にすること。そう生徒さんたちにも伝えていますし、自分自身も気をつけています。
――地方でヘルスケアのお仕事をするうえで大切なことは何だと思いますか?
一番は、地元とのつながりです。アイランドヒーリングも、元々は地元のお客様1人からスタートしました。資金も知人もいなかったので広告も出せませんでしたが、1人のクチコミから半年後には予約がとれないサロンになれた。それをお客様が作ってくださったんですよね。だからまずは、1人のお客様をすごく大事にする。そこから広がっていくんじゃないかと思います。
もうひとつは「極める」ということ。今は地方でも個人サロンさんが増えてきていますよね。そういった方々も、もちろんお勤めされている方々も、やっぱり「選ばれたい」じゃないですか。そのためには、「自分はこれだけは本当に極めている」と言えるものを持つことが、すごく大事だと思います。技術だけでなく、人間について学び続けることですよね。
そういった技術もそうですし、所作もそうですね。それは生き方にもつながっていくと思います。そうして自分を極めていくと、安心感が生まれるんです。地域のサロンにとって「お客様が安心できる」というのは、とても強みになります。安心できる場所からは、お客様は離れなくなりますから。
あとは、とにかく続けることですよね。壁にぶつかることは、お勤めしていても独立していても、あると思います。でも、その壁にぶつかったときって成長のタイミングなんです。だから、壁にぶつかったときは「ラッキー!」と思って欲しい。そうして壁を乗り越えながら続けていけたらいいんじゃないかなと思います。
これからも石垣島とともに発展していけるような事業を
――今後の展望を教えてください。
個人的には、「原点回帰 ディスティネーション・ウェルネスプログラム」に、もっと力を入れていきたいです。この事業は、いろんな地元の方と手を取り合っているんですが、もっと深いものにしていきたいし、期待しているんです。
またスクールでは、「リノベーションコース」という1dayプランがすごく好きで、力を入れています。内容としては、現役でお勤めされているセラピストさんたちが、石垣島に1日留学して、自分が持っているものを新しいかたちに生まれ変わらせるというもの。自分に自信をつけて「今の自分でよかったんだ」という気持ちを、石垣島で体感して、自分を認めて帰る。「これでいいのかな」と悩み始めた、成長のタイミングにいるセラピストさんたちに、このプランをもっと活用してもらえたらと思っています。
あと、この島でしか作ることのできないスパプロダクトを、少しずつ作っているところです。そのプロダクトを持って、いつか海外に出られたらいいなという夢は持っています。石垣島にある工場で作っているので、大量生産はできないのですが、本当に届けたい人に届くようなプロダクト作りをしていきたいです。
そんな風に、地元の活性化につながっていける仕事を、地元の皆さんと手を取り合ってやっていけたらいいなと思っています。
――最後に、地方で開業を目指す方にアドバイスをお願いします。
地元のことは住んでいる方ならわかると思いますが、移住してきて何かをするなら、まずはその土地を知ることですよね。やっぱり土地によって、顔が全然違いますから。そして、つながりを作っていくこと。それが成功の第一歩だと思います。
取材・文/山本二季