介護支援専門員(ケアマネジャー)になるには?受験資格とあわせて試験概要や合格率を紹介
超高齢社会の現在、介護や支援を必要とする人をサポートする仕事の需要が増えています。
なかでも、介護支援専門員(ケアマネジャー)は、ケアプランを作成したり、介護などのサービスを利用したい人と行政機関やサービス提供者をつないだりといった重要な役割を担う、ニーズの高い資格職です。
試験を受けるための受験資格が厳しく、合格するのも簡単ではありません。
この記事では、介護支援専門員の受験資格とあわせて試験の概要や合格率を紹介します。
介護支援専門員とは?
介護支援専門員とは、介護や支援を必要とする人が自立した日常生活を送るために必要な援助に関する専門家です。介護保険法で定められた公的資格で、各都道府県が管轄しています。
介護支援専門員の役割は、介護や支援を必要とする人の相談に応じ、心身の状況に合わせて、介護サービスなどが受けられるようケアプランを作成することです。
ほかにも、行政機関やサービス事業者などと連絡を取り、連携をはかったり利用調整をおこなったりする役割も担っています。
具体的には、次のような業務があります。
・介護や支援を必要とする人との面談
・面談に基づいたアセスメントとケアプランの作成
・関係者とのサービス利用調整や会議
・サービスに関する定期的なモニタリング など
引用元
厚生労働省:介護支援専門員(ケアマネジャー)
e-Gov法令検索:介護保険法
介護支援専門員になるためには?|試験と研修を受ける必要がある
介護支援専門員になるためには、次の3つの手順に沿う必要があります。
1. 受験資格を満たし「介護支援専門員実務研修受講試験」を受験する
2. 「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格後「介護支援専門員実務研修」を修了する
3. 「介護支援専門員実務研修」修了後、介護支援専門員の登録申請をする
それでは、ひとつずつ項目を確認してみましょう。
1. 受験資格を満たし「介護支援専門員実務研修受講試験」を受験する
各都道府県で年に1度実施される、介護支援専門員実務研修受講試験を受験します。試験を受けるためには、受験資格を満たさなくてはなりません。受験資格や試験概要はのちほど詳しく説明します。
2. 「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格後「介護支援専門員実務研修」を修了する
試験合格後、介護支援専門員実務研修を受講します。東京都の研修内容は、87時間の講義・演習と原則3日間の実習です。ケアマネジメントの基礎学習をはじめ、アセスメントやケアプランの作成などケアマネジメントの実習・症例による学習などが実施されています。
引用元
東京都福祉保健財団:東京都介護支援専門員実務研修
東京都福祉保健財団:第25回第2期東京都介護支援専門員実務研修の受講者の募集について
3. 「介護支援専門員実務研修」修了後介護支援専門員の登録申請をする
実務研修終了後、3カ月以内に介護支援専門員資格登録の申請をおこないます。介護支援専門員として働く場合は、同時に介護支援専門員証の交付手続きも必要です。
資格は5年間有効で、5年ごとに更新研修を受け更新手続きをおこないます。最初の登録を受けてから、5年を経過して介護支援専門員証の交付を受けていない場合は、再研修の受講が必要です。
受験資格|2つのうちどちらかの業務を5年かつ900日以上
基本的な受験資格はどこの都道府県でもほぼ同じですが、地域によって多少異なる場合があります。
東京都の受験資格は、次の2つです。
①受験資格の対象となる業務に従事している人は勤務地が東京都であること。従事していない人は住所地が東京都であること。
②「特定の国家資格などに基づく業務に従事」あるいは「特定の相談援助業務に従事」のどちらかを、5年以上かつ900日以上満たすこと。
他の道府県は、下記のページから受験資格や試験概要について確認することができます。
社会福祉振興・試験センター:[介護支援専門員]
特定の国家資格等に基づく業務と、特定の相談援助業務について詳しく紹介します。また、実務経験における注意点についてもおさえておきましょう。
特定の国家資格|医師や看護師など
特定の国家資格は以下の通りです。
特定の国家資格として認められる
資格一覧 |
医師 |
歯科医師 |
薬剤師 |
保健師 |
助産師 |
看護師 |
准看護師 |
理学療法士 |
作業療法士 |
社会福祉士 |
介護福祉士 |
視能訓練士 |
義肢装具士 |
歯科衛生士 |
言語聴覚士 |
あん摩マッサージ指圧師 |
はり師、きゅう師 |
柔道整復師 |
栄養士(管理栄養士含む) |
精神保健福祉士 |
特定の相談援助業務|生活相談員や支援相談員など
特定の相談援助業務として認められている業務は、次の通りです。
資格名 | 対象となる施設や業務内容 |
生活相談員 | ・特定施設入居者生活介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護 ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 ・介護予防特定施設入居者生活介護 ・介護老人福祉施設 |
支援相談員 | ・介護老人保健施設 |
相談支援専門員 | ・計画相談支援事業
・障害児相談支援事業 |
主任相談支援員 | 生活困窮者自立相談支援事業 |
無資格・未経験で上記の業務に従事するためには、社会福祉士などの資格や数年単位の実務経験が必要とされるため、介護支援専門員の受験資格を得るにはさらに3年以上かかります。
実務経験における注意点
5年以上かつ900日以上の実務経験が必要とされますが、試験日前日までを従事期間としてカウントすることができます。つまり、受験の申し込みをした際に日数を満たしていなくても、試験日前日までに満たすことができれば受験が可能です。
この場合、受験申し込みのときに「実務経験(見込)証明書」を提出する必要があります。
また、実務経験として認められる業務に従事しているかどうかもポイントです。特定の国家資格を所有していても、事務や営業などの業務に従事している場合、実務経験として認められません。
相談支援専門員の場合は、計画相談支援と障害児相談支援の業務に限定されています。基本相談支援や地域移行支援などは実務経験として認められないため注意が必要です。
2018年度から受験資格が厳格化|廃止された受験資格
2018年度から受験資格が厳格化されています。それまで受験資格として認められていた、「介護職員初任者研修を修了し、介護の実務経験が5年以上ある人」や「無資格で介護の実務経験が10年以上ある人」の受験が認められなくなりました。
また、相談援助業務の実務経験に関しても、生活相談員や支援相談員などといった具体的な業務内容が規定され、相談援助業務に従事していても一部の業務は受験資格の対象外となっています。
引用元
厚生労働省老健局振興課:「介護支援専門員実務研修受講試験の実施について」の一部改正の概要
試験概要と合格率
ここからは、介護支援専門員試験概要や試験科目と、合格発表がすでに終了している令和4年度までの過去5年の合格率などを紹介します。
令和5年度の試験概要|東京都
令和5年度の試験概要は次の通りです。
令和5年度 東京都介護支援専門員
実務研修受講試験 概要 |
|
試験日時 | 令和5年10月8日(日)午前10~12時
※午前9時30分着席 ※試験開始後30分まで入室可。それ以降入室不可。 |
試験時間 | 120分 |
申込み方法 | 簡易書留による郵送のみ
※書類に不備がある場合受験不可 |
申込み期間 | 令和5年6月1日(木)~令和5年6月30日(金)
※当日消印有効 ※期限後払込不可 |
受験料 | 12,400円(+払込手数料148円) |
合格発表 | 令和5年12月4日(月)
※受験者全員に郵便にて結果のお知らせ |
引用元
東京都福祉保健財団:令和5年度 東京都介護支援専門員実務研修受講試験
試験科目
試験科目は、介護支援分野と保健医療福祉サービス分野の2つです。具体的な出題範囲は次表をご確認ください。
出題範囲 | |
分野 | 内容 |
介護支援 | ・介護保険制度の基礎知識
・要介護認定などの基礎知識 ・ケアマネジメントの基礎知識 ・居宅や施設サービスでの計画作成/課題分析/モニタリング など |
保健医療福祉サービス | ・医学/福祉/臨死分野における総論
・保健医療や福祉サービスの知識 など |
出題形式は、5つの選択肢から正しいものを複数選択する五肢複択のマークシート方式。介護支援分野25問・保健医療福祉サービス分野35問の計60問で、各分野正答率70%程度が合格基準となっています。
令和4年度までの過去5年の合格率|難易度は高め
令和4年度までの過去5年の受験者数・合格者数・合格率は次表の通りです。
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成30年度 | 49,332 | 4,990 | 10.1 % |
令和元年度 | 41,049 | 8,018 | 19.5 % |
令和2年度 | 46,415 | 8,200 | 17.7 % |
令和3年度 | 54,290 | 12,662 | 23.3 % |
令和4年度 | 54,406 | 10,328 | 19.0 % |
毎年受験者数は増加していますが、合格率が20%を切ることが多く難易度の高い試験となっています。
介護支援専門員になるためには特定の実務経験が必要!自身の受験資格を確認しておこう
2018年までは、介護職員初任者研修修了者であれば5年以上の実務経験、無資格の場合は介護などの仕事を10年以上していれば介護支援専門員の試験を受けることができました。
しかし現在は、特定の国家資格や特定の相談支援業務で通算5年以上かつ900日以上の実務経験が必要です。試験日の前日までを実務経験の日数にカウントできるので、受験資格を満たしているかどうかしっかりと確認しておきましょう。