激痛で眠れない日々。不調で気付いた「健康」と姿勢改善の可能性 姿勢改善トレーナー・向出みほさん
神奈川で姿勢改善トレーナーとして活動する向出みほさん。2023年12月末にはパーソナルコンディショニングサロン「eny」をオープンするなど、活躍を続けています。
前編では、ヨガインストラクターとしてキャリアをスタートさせた向出さんが、どのようにステップアップしてきたかを伺いました。
後編では、コンディショニングトレーニングを軸としたパーソナルトレーナーに転向した理由を伺います。きっかけは2020年に起きた肩の不調。なんと3年近く不調が続き、当時は腕があげられないほど、重症だったといいます。インストラクターとしての活動も満足にできず、落ち込む日々だったといいますが、それを機に健康について改めて考え直したことが、人生の大きな転機となったそうです。
今回、お話を伺ったのは…
向出みほさん
姿勢改善トレーナー/ヨガ・ピラティスインストラクター
製薬会社の営業として働いていたが、2017年にRYT200を取得してヨガインストラクターへ転向。ヨガスタジオでのレッスンと自主開催レッスンを並行して行い、経験を積む。2020年、長女を出産。育休中に肩の不調を経験して、健康に対する考え方が変わったのを機に、ピラティスインストラクターの養成講座に通う。その後、パーソナルトレーナーとしての学びも深めていく。
2023年12月末にはパーソナルコンディショニングサロン「eny」をオープン。呼吸トレーニングなどを取り入れながら、姿勢改善を提供するパーソナルトレーニングは不調改善やスタイルアップに繋がるとお客さまからの信頼も厚い。
「今までの自分は健康を提供できていたか」。不調から生まれた問い
――ヨガインストラクターとして活躍していた向出さんが、姿勢改善トレーナーとなったのは何かきっかけがあったのでしょうか?
いくつかのきっかけと経緯が重なったのですが、まず一番大きかったのが、私の身体の不調を機に、健康について改めて考え直したことでした。私は2020年に出産し、育休をとっていたのですが、そのころに左の肩を壊してしまったんです。最初はなんとなくの違和感から始まって、症状が悪化。とにかく痛くて夜も眠れないですし、腕があがらなくなってしまい、自分では服も着られない、シャンプーもできないくらいの状態になってしまいました。
当然、ヨガインストラクターとしての活動もできなくなってしまいました。それまでの私は、ヨガのアーサナ(ポーズ)を綺麗にとったり、難易度の高いアーサナができるようになることが目標であり楽しみのひとつで、その方法を生徒さんへお伝えするようなレッスンが多かったように思います。でも肩の不調を機にもっと身体の健康に深く関わっていきたいという想いが強くなりました。
――肩の不調の原因は何かあったのでしょうか?
はっきりした理由は分からないのですが、病院では、子育て中の授乳や抱っこするときの姿勢が影響しているのではないかと言われました。このときに初めて、姿勢が身体の不調を招く原因になるということを実感したんです。手術も2回しましたし、昨年末にやっとリハビリを卒業できたくらいでした。
――そこからどのように方向転換を?
そのころにまず私が出会ったのはピラティスでした。インスタグラムからあるピラティススタジオの投稿を目にして、とても魅力的に感じたんです。そのスタジオでは、ローラー(一般的には「ストレッチポール」などと呼ばれる物)を使って行うファンクショナルローラーピラティス(FRP)を提供していました。
ピラティスは元々リハビリからスタートしているので、肩を怪我している私にもできると思い、興味がわいて。そこでスタジオオーナーさんにDMして、肩の状態を伝えたうえで働きたいと伝えたんです。そこから迷うことなく即決で養成講座に通い出し、ピラティスインストラクターとしても活動をスタートさせました。
――ピラティスに惹かれた理由は?
ヨガはメンタルの安定をゴールとしている部分があると思いますが、ピラティスはヨガと比べてフィジカルの要素が強いところです。私はヨガインストラクターのころから、フィジカル的な側面に興味が強く、解剖学も別で学んでいたので、自分の不調を通して、よりフィジカルな方向性に進みたいと思うようになりました。ヨガは今でも好きですが、ピラティスの方が私の提供したいことに近いと感じました。
不調に寄り添えるパーソナルトレーナーに転身
――その後、パーソナルトレーナーになっていったのですか?
はい。フィジカルの方向性でいくのであれば、個人の身体の悩みや不調に寄り添えるパーソナルトレーナーの方がいいのではないかと思うようになったからです。「パーソナルトレーナー」で検索すると、マッチョマンの方が負荷をかけて行なう筋力トレーニングばかりが出てきて、それは私の提供したいものとは違うなと思っていました。
そんなときに、女性でコンディショニングトレーナーの方を見つけて、DMを送り色々お話を伺いました。自分の提供したいものと合っていると感じ、その方から直接学ばせていただくことになりました。
――コンディショニングトレーニングとは、どんなものなのでしょうか?
簡単にいうと、姿勢や呼吸などを改善するトレーニングです。トレーニングのなかでも一番基礎、土台になります。例えば姿勢や呼吸が改善されていないまま筋トレを行なってもその効果は半減しますし、身体を痛める原因にもなりかねません。なので、運動不足の方や身体に何らかの不調がある方は、まず土台となるコンディショニングの部分のトレーニングから始めることをおすすめします。
――なぜ呼吸のトレーニングをする必要があるのでしょうか?
呼吸というのは1日2万回以上行われている「運動」です。しかし2万回以上する運動において「エラー」が出ている方が非常に多いのが現状です。現代の生活スタイルや環境により、リラックスすべき場面においても無意識に「浅く・速い」呼吸になっている方が非常に多いです。
私たちが普段の生活で行なっている安静時呼吸では横隔膜が70%~80%の仕事を担います。しかし横隔膜がうまく機能出来ないと、代わりに働いてしまうのが、本来20%~30%だけを担っている、肩や首周りに付いている筋肉になります。つまりこれらの筋肉が過剰に働くことが、肩を引き上げたり、腰を反らせたり、肩を内巻きにしてしまう原因になってしまうんです。
どちらが先かという問題はありますが、呼吸がうまく行なえないと身体は肋骨を開いて空気を取り込もうとするため、体幹の不安定さや姿勢の崩れにもつながってしまうんです。こういったことを改善するためにも呼吸のトレーニングは必須になります。
姿勢改善を通して、自分であることを楽しんでほしい
――2023年12月末にはサロンを開かれたそうですが、きっかけは?
それまでパーソナルトレーニングの依頼をいただいたときにはレンタルサロンを借りていたのですが、起業をしている友人から、自分のサロンの横の部屋が空いていることを教えてもらい、見に行ったら駅からも近くとてもいい場所だったんです。
サロンを構えるとなると、お金がかかるので躊躇していた部分もあったのですが、これも別の友人から小規模事業者持続化補助金という制度があることを教えてもらい、申請してみることにしました。申請が採択されるか確定していた訳ではないままサロンオープンの準備をしていたので、ドキドキしましたが結果オーライでほっとしました。適用外になる費用もありますが、経費の3分の2が補助金として出る仕組みで、私にはとても大きな額でした。
今後はこのサロンを通して、呼吸トレーニングをベースにピラティスも活かしながら、1人1人の身体の悩みに寄り添う姿勢改善トレーナーとしての活動をしていきたいと思っています。
――最後に、今後の目標を教えてください。
まずはサロンの立ち上げをしたばかりですので、軌道に乗せたいと思います。私は姿勢が与える影響は身体だけではないと思っています。自分を振り返ってみても物事を悲観的にしか考えられなかったころの写真を見返すと、猫背で巻き肩、どう見ても姿勢不良でした。胸を張って落ち込んでいる人はいないし、背筋が伸びて目線が上がるだけで前向きな気持ちになる。姿勢と心は互いに影響しあっているものだと思っています。
姿勢改善を通して、身体の不調改善、スタイルアップはもちろん、いくつになっても前向きに自分であることを楽しんでほしい、そんな風に思っています。サロンにはそんな想いを込めて「enjoy yourself」からピックアップして「eny」と名付けました。
もう1つの目標として、今私の元に通ってくださっているお客さま同士がつながれるようなコミュニティを作れたらと思っています。サロンの営業日が平日のみなため、通ってくださっているお客さまは専門職や起業されている方も多いです。お仕事のマッチングや、仲間作りができる、家庭でも職場でもない、第三の居場所のような場を作ることができたら嬉しいです。今後オンラインで全国の方々とつながれる機会も増やしていきたいです。
お話を聞いていて驚いたのは、向出さんの圧倒的な行動力。「これだ」と思ったことにはすぐに飛び込んでいく姿勢で、自分の道を切り開いている姿が印象的でした。パーソナルトレーナーとして活躍したい方はぜひ参考にしてみてくださいね。