感覚を頼りに体を調整する操体法に魅了され、ヘルスケアの道へ!川名操体治療室 川名慶子さん
世田谷区と川崎市麻生区の2拠点で「川名操体治療室」を営む、川名慶子さん。幼い頃から健康に興味を持っていた川名さんは、ある日出会った本によって「操体法」に魅了され数人の先生に師事し、プロの道へ進むことになったそうです。
今回、お話を伺ったのは…
川名慶子さん
世田谷区と川崎市麻生区にて「川名操体治療室」を経営する整体・鍼灸師・あん摩指圧マッサージ師。
大学卒業後、特別養護老人施設に勤務し介護職に従事した後、出産。子育てをしながら、操体法を学ぶ。秋葉原の津田温古堂にて10年間、臨床経験を経つつ、東京医療専門学校を卒業し、独立開業。東京都渋谷区千駄ヶ谷で18年間開業し、移転。臨床家や一般の方向けのセミナーも実施している。季刊雑誌『うかたま』農文協社刊に『はじめての操体法』を5年間連載。
操体法に魅了され、介護職からヘルスケアの道へ
――川名さんは現在、整体や鍼灸、あん摩指圧マッサージや操体法などの技術を駆使して多くの方の心身の健康を支えていらっしゃいます。どのような経緯でヘルスケアの道に進まれたのでしょうか。
幼い頃、体が弱く体調を崩しがちだったこともあり、昔から健康については強い関心を持っていました。大学時代は史学を専攻し、ヘルスケアの分野からは離れたところにいましたが、「健康や身体にまつわる仕事をしたい」「すぐに現場に入りたい」という思いから、卒業後に特別養護老人施設で介護職に就くことになりました。
その後は結婚と出産を経て育児に専念しましたが、ヘルスケア領域、とくに身体を治療するような分野への興味はずっと持ち続けていました。
大学在学中、ヨガや太極拳など精神世界や身体についてのブームが起こり、その流行の一つであった「操体法」の原理について触れた本を読んだことが、操体法に興味を持つようになったきっかけでした。
――「操体法」について教えてください。
「操体法」というのは、仙台で医師をされていた故・橋本敬三先生がまとめた健康学の一体系です。
調整技術・手技療法などの「調整法」、セルフケアなどの「養生法」、気持ちよい感覚に着目した「痛み緩和に有効な感覚論」、思想や哲学のような「生き方指標としての健康論」などいくつかの側面を持っているのが特徴です。
橋本先生は「もともとはよくできている人間の体は、歪みによって不健康になる」と説いており、歪みを治すために「気持ちよい感覚」を頼りにして体を動かせばよいというのが操体法の原理になっています。私は橋本先生の書籍を読んだ際、そのシンプルで明快な原理と言葉に興味をひかれました。
操体法は最初は一部の人の間での流行でしたが、1980年頃にテレビに取り上げられたことで一躍有名になりました。
操体法に具体性をプラス 「わかりやすさ」が人気の秘訣!
――操体法が大切にしている「気持ちよさ」というのは、感覚的なものです。施術を行う際やセルフケアする方法を患者さんに伝える際、その感覚を伝えるのは難しいこともあるのかなと想像しました。
操体法は感覚重視ということもあり、実際に取り組んでみると「これでいいのかな?」「この方法で調整できているのか?」と不安になることもあるかと思います。
当院ではそれを解消するべく私なりに操体法を解釈し、感覚の後ろに隠れている身体の原理などもプラスして、極力、具体的・理論的に方法をお伝えするように心がけています。セルフケアの一環として操体法を取り入れたい方にも、わかりやすいと好評をいただいていますよ。
――川名さんはどのようにして操体法を学ばれたのですか?
最初は、カルチャーセンターで開講していた操体法のクラスに通いました。まだ小さかった子どもを抱えて教室に通ったり、今で言うフェスのはしりのようなものに泊まり込みで参加して操体法のワークショップを受けたりもしましたね。
ヘルスケアの技術というと多くの方はひとりの先生に師事することが多いかと思いますが、私の場合は複数人の先生に師事して技術を教えていただきました。多くの先生に教えていただくことで、操体法の輪郭が段々とつかめるようになっていった印象です。
操体法とともに鍼灸、あん摩指圧マッサージの資格も取得
―― そこからどのようにプロへの道に進まれたのでしょうか。
ある日教室が終わった後、ご挨拶がてら先生に「教養としてではなく、操体法を仕事としてするために勉強をしたいと思っています」とお話しに行ったんです。
すると「よかったら私の治療室で働きますか?」と声を掛けていただき、秋葉原にあった津田温古堂で働くことになったんです。そちらでは10年ほど、臨床経験を積ませていただきました。
―― 川名さんは治療室で整体や鍼灸、あん摩指圧マッサージなどの施術も行っています。そうした技術はどのように習得されたのですか?
医療専門学校に通って習得をしました。
「操体法などのケアを仕事にするならばもっと知識を蓄えたい」、「さまざまな治療方法を身につけたい」という思いと、津田温古堂のスタッフの勧めがあり専門学校で学ぶことを決意しました。専門学校では解剖生理や西洋医学なども一通り勉強し、体の原理を理解したうえで、鍼などの国家資格なども取得をしました。
資格取得後も引き続き鍼の勉強を続けており、今は筋膜など結合組織のリリース、鎮痛効果目的や自律神経調整に有効とされている鍼電極低周波治療器を使った鍼灸治療、美容鍼灸メニューも行っています。鍼の治療も操体も目指すのは「軽やかにしなやかに疲れにくく動く体」。体のなかからも外からも動きをつけて、そうした体を実現するお手伝いをしています。
後編では、川名さんが独立するきっかけやその後の経営についてお伺いします。長年勤めた治療室を退職し、独立した後は都内で開業をしましたが、ビジネス的なノウハウがなく大変な思いをされたこともあったそう。現在は、世田谷区と川崎市麻生区の2拠点で開業し、多くのリピーターを抱えていらっしゃるそうです。
川名さんの開業にまつわるエピソードを覗ける後編もお楽しみに!