【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.15】スタッフの行動を「えこひいきよ! 不公平だわ!」と訴えるKさんへの対処法は?
介護技術だけでなく、コミュニケーション力や人間性、倫理観など、さまざまな知識・能力が求められる介護職。利用者の背景も様々で、日々の業務は多岐にわたります。当企画では、そんな介護現場で起こりがちな困りごとの対処法をご紹介します。
「えこひいきよ。不公平だわ!」と訴えるKさんの場合
老人ホームに入居しているKさんが近寄ってきて、スタッフの〇〇さんのえこひいきがひどいと訴えてきました。話を聞くと、Kさんが話しかけても知らん顔なのに、Fさんが声をかけたら嬉しそうにして大笑いしながら夢中で話していたとのこと。「不公平だと思わない?」と少々ご立腹の様子です。
利用者が不公平感を抱いた時、直接本人に訴えるのではなく、第三者的立場のスタッフに訴えることの方が多いようです。こういった場合にどのように対応するのがよいのか、ポイントをおさえながら見ていきましょう。
ポイント1:利用者の訴えを否定しない
身近な同僚であればあるほど、そんな人じゃないという思いから「そんなことないですよ。」「気にしすぎじゃないですか?」などと、利用者の訴えを否定する言葉を返しがちです。ですが、そう返された利用者は、仲間をかばって、私の言うことは信じてくれないのだと思ってしまいます。ここは一旦、否定も肯定もせず、「そうなんですか?」と訴えを受け止め、どうしてそう思うのかを聞きましょう。
ポイント2:○○さんの代わりに謝らない
Kさんの訴えを聞いた時に、同じスタッフとしてという気持ちから「ごめんなさい」と謝ってしまう人もいるかもしれません。ですが、ここで謝ってしまうと、えこひいきを認めてしまうことになってしまいます。これは後日、問題を大きくしてしまいかねないので、事実確認もできていないこの時点で謝罪をする必要はありません。
ポイント3:誠実に訴えを聞き、当事者に伝える
不公平感や不満を訴える利用者に対して、誠実さが伝わりやすいのは「訴えにきちんと耳を傾ける」ということです。その上で、「当事者に伝える」、場合によっては「事業所として検討する」ということをKさんに伝えましょう。後日、話を聞いた当事者(この場合〇〇さん)が早い段階でKさんに謝罪に行くなどの対応をすれば、問題を終息させやすくなります。
「不公平を訴える」利用者へやってはいけない2つのこと
1.スタッフ都合のものさしを用いる
2.スタッフ側の事情を利用者に理解してほしいと思うこと
利用者に不公平感や不満が生まれる背景には、もしかしたら、一時的なスタッフ不足や、別の利用者への急な対応などの事情があることも考えられます。ですがそれは、あくまでケアスタッフの都合によるもの。思いを表現できる人、遠慮する人、人の手を借りたくなくても借りざるを得ない人など、利用者も様々です。不公平感を与えないためのひとつの取り組みとして、例えば、ケアスタッフが利用者全員に話しかけるというルールを作ってみてはどうでしょうか。スタッフ人数分は話しかけられる機会ができるので、予防にはなるでしょう。
文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社、「ケアスタッフの言葉かけ接遇会話集」日総研
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。