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介護・看護・リハビリ 2025-10-05

「お客さまに喜んでいただきたい」。この気持ちがすべてのベースに【介護リレーインタビューvol.67/美容室かみ・ゆ 小松貴美子さん】#2

介護業界に携わる皆さまのインタビューを通して業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。

お話を伺ったのは…
美容室かみ・ゆ 小松貴美子さん

高校在学中に通信教育で美容師免許を取得。地元の美容室でのインターンを経て就職。同じサロンに勤めていた先輩美容師の小松信行さんと出会い結婚。別のサロンに転職後、その店舗を信行さんと引き継ぎ、2000年に現在の場所に移転。通常のサロンワークと並行して、夫婦で病院への訪問美容、発達障がいの子どものカットを行っている。

前編では、中学生の頃からの夢だった美容師になり、同じく美容師のパートナーとお二人で店を切り盛りするようになったことを中心にご紹介しました。
後編では、相模大野駅近くにあったお店が立ち退きを迫られて現在の場所に店舗を移転するまでのいきさつ、訪問美容を始めるようになったきっかけ、発達障がいのある子どもたちに携わるようになった理由などを伺います。

子どもたちの「転校したくない」のひと言が後押しに

現在の店舗は、当時の住まいの近く。お子さんたちは転校を回避できました。

――前オーナーから引き継いだお店を、こちらに移転したのはなぜですか?

ビルの大家さんから「売却が決まったから立ち退いてほしい」と、言われてしまったんです。それで移転先をいろいろ調べ始めました。子どもたちは「転校したくない」と言い張るので、当時の住まいに近いところで土地や店舗がないか、友人の不動産屋さんに探してもらいました。

――それが、こちらの店舗なんですね。

もともとここにはアパートが建っていて、「取り壊すらしい」という情報を耳にしたんです。ここは元の住まいとほんの少ししか離れていないので、子どもたちは転校しなくてもいいし、登校班も変わらずに済みました。

――お客さまはいかがでしたか?

相模大野駅からひと駅離れるんですが、おかげさまでお客さまもこちらにいらしていただいています。

――前の店舗と今の店舗とで、特に変えた部分はありますか?

店の段差をなくして、車いすが通れるように間口を広くしました。前の店舗は階段があって、古くからのお客さまが車いすでいらっしゃったとき、上がってこられなかったんです。その反省もあって、車いすのまま店に入れるようにしました。

――お住まいとお店は同じ?

三階建てにして1階は店舗、2階は私の両親、3階に私たちの住まいがあります。お客さまがいらっしゃらなければ合間に家事ができるので、だいぶ負担がなくなりました。

――訪問美容をなさるようになったのは?

この店のすぐお隣に森下記念病院があって、そのご縁でお声がけいただいたのがきっかけです。以前は別の理容師さんが担当していたようですが、体調を崩されたようです。病院の方から「入院患者さんたちの髪を切ってもらえないか」とおっしゃっていただいたんですよ。

――訪問美容を担当しているのは貴美子さん?

私ではなく夫が行っています。意識のない方などサポートが必要なときだけ、同行しています。病院にはシャンプー台がないので、入浴のタイミングで髪を切りに行くことが多いですね。入院患者さんには、「お店にいらしていただければ、シャンプーもできますよ」ってお伝えしています。

――寝たきりの方のヘアカットは難しくないですか?

夫は理美容室の代表たちが集まった組合の役員をしていて、年に何回か介護施設へ髪を切りに行っていたんです。その経験もあったので、そんなに難しくはないと思います。
寝たきりで管が何本も入っている方の場合は、看護師さんに介助をお願いすることもあります。

「発達凸凹さんヘアカット」への参加で、認知もアップ

信行さんは訪問美容、貴美子さんは発達障がいのお子さんを担当しているそう。

――発達障がいの方はお二人で担当しているんですか?

私が担当しています。お子さんたちが夫になつかないので(笑)。

――どんないきさつから発達障がいのお子さんのカットをすることに?

この店には高齢者の方も車いすの方もお子さんもいろんな方がいらっしゃいます。前から障がいがあろうとなかろうと、別に分け隔てなく受け入れていたんです。
でも「発達凸凹さんヘアカット」のサイトに携わっている方から「それではダメなんです。もっと広く告知しないと、発達障がいを持っている子どもの親御さんに情報が届かないんです」と言われました。

――そうなんですね。

親御さんはいろいろなサロンに行って、そのたびに「うちでは切れません」とか「動き回ったり、泣き叫んだりする子はお断りします」って言われてしまうそうです。拒絶されれば傷つきますよね。親御さんたちは、どんな子どもでも断られないサロンがどこにあるのかを知りたがっているんですって。

――その情報が載っているのが「発達凸凹さんヘアカット」なんですね。

発達障がいについてきちんと理解したうえで、障がいのあるお子さんを受け入れている、全国のヘアサロンが載っています。「そんなに需要があるのかしら?」って思っていたら、サイトに掲載した途端、お問い合わせの電話が入りました。親御さんは本当に困っているんだなと実感しました。

――発達障がいにはいろいろなタイプがありますよね。

実は私たちの孫も発達障がいなんです。言葉を発しない子で、特別学級に通っています。孫ですから髪は私たちがカットしているんですが、娘によると同級生のお母さまたちから「髪型すてきね。どこでカットしているの?」って聞かれるそうです。理美容室に連れて行けないので、たぶんご自宅で親御さんがカットしているんでしょう。

――身近なところでもニーズがあったんですね。

泣き叫んだり動き回ったりすると、親御さんたちは申し訳なさそうになさるんですよ。そんなに気を使わなくてもいいのに。
発達障がいのお子さんをカットしているとき、たまたま常連さんがいらしたんです。真っ赤な顔をして泣き叫んでいる様子をご覧になって「疲れちゃったよね。少し休憩したら?」って。お客さまも温かく見守ってくださるんですよ。

――アットホームな雰囲気なんですね。これから美容と福祉の道を目指したい方にアドバイスをお願いします。

まず「好き」という気持ちを大切にしてください。地道な努力を続けながら、人と同じことだけで満足しないで「自分らしさ」を忘れないでください。

貴美子さん流! 発達障がいヘアカットの心得三か条

1.「お客さまに喜んでいただきたい」をモチベーションにする。

2.障がいについてきちんと学び、情報を発信する。

3.「美容が好き」という気持ちを大切にする。

撮影/森 浩司

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