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ヘルスケア 2024-03-23

地域・社会・仲間とつながる加盟型認知症共創コミュニティ「BLG」の活動とは?【介護リレーインタビュー Vol.44/BLG品川(けめともの家・カンタキ西大井)】#1

介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。

今回お話を伺ったのは、

BLG品川(けめともの家・カンタキ西大井)の竹内留美子さん(ホーム長)と、石川裕貴さん。

前編では、BLGの活動内容や施設の特徴を詳しく伺います。

認知症でも社会と繋がりを持ち、
生きがいを持って生きる支援をしたい

――こちらの施設について教えていただけますか?

竹内さん(以下、敬称略):株式会社ケアメイトが運営する「けめともの家・カンタキ西大井」という看護小規模多機能ホームです。18年2月にオープンし、看護・訪問・通所・宿泊と4つのサービスを組み合わせて、メンバー(利用者)さん一人一人に合わせたケアを行っています。

あと、私たちにはもう一つ「BLG品川」という名前もあります。これはBLG株式会社が運営している「100BLG」という活動に加盟して、BLGからいただいた名前です。なので今は「けめともの家・カンタキ西大井」と「BLG品川」、両方の看板を掲げて運営しています。

――100BLGの活動について詳しく伺えますか?

竹内:認知症になっても地域・社会・仲間と繋がり、認知症の人とその家族が「ともに生きる拠点」を100箇所作ろう、自立支援のハブになる施設を作ろうという活動です。2012年に「BLG町田」からスタートして、そこのメンバーさんは洗車をしたり、ポスティングをしたり、有償ボランティアをすることで社会との繋がりやその人らしく生きる生きがいを持って過ごされています。

この思いに共感して、「私たちも加盟したい」と手を挙げたのが22年8月。ただ、私たちのホームのメンバーさんが同じことをできるか、というと少し不安もありました。

というのも、ここには重度の認知症だったり、寝たきりで看護を必要とするメンバーさんが多いんです。BLG町田のように、自分たちの足で有償ボランティアに出かけていくというのはなかなか難しい。

そんなときにBLGから言われたのは、「働くことが目的ではない」ということ。大切なのは、その人がその人らしく、地域の中で過ごすこと。生きがいを持って生き抜くこと。これを聞いて改めて、私たちも同じ思いで活動したいと思いました。

正直まだまだ課題は山積みです。でも私たちの活動がうまくいけば、今有償ボランティアで働いて生きがいを見つけている人たちが、今後もし寝たきりになったり、外に出て働けない状態になったりしても、支援し続けることが可能だと思うんです。

――なるほど。

竹内:私達らしく活動していく中で一つのモデルケースを提供できれば、100BLGへの恩返しにもなると、日々頑張っています。

認知症への理解を説くのも
介護士の役割

――具体的にここではどのような活動をなさっているんですか?

石川さん(以下、敬称略):一つは駄菓子屋ですね。ホームの一部を駄菓子屋にして、地域の方たちに買い物に来てもらっています。メンバーさんには店番をしてもらったり、そろばんができる方にはお勘定をしてもらったり。「私でも役に立てる」と実感してもらえる場を作っています。

竹内:メンバーさんが外に出て地域と関わることができない分、地域の方々にホームへ来てもらうことでつながりを持とうという仕掛け作りの一環ですね。

駄菓子屋は、学校が終わる時間になると、子どもたちがたくさん来てくれます。友達同士の待ち合わせ場所にもなっているようで、「〇〇ちゃんとここで待ち合わせしているけど、先に〇〇公園に行っているって伝えておいて」と、昔あった駅の伝言板みたいな役割も果たしているんですよ(笑)。

――楽しそうです!

竹内:そもそもここは出入りが自由。通所されていない地域の方たちもコーヒーを飲みに来たり、雑談しに来たり、オープンな場として提供しています。そうやって高齢者がいる空間が「日常」となることこそ、「地域で生きる」ということになると思うんです。

石川:あと、月1回交流カフェ(認知症カフェ)も開いています。

竹内:地域の方々に「認知症」の理解を深めていただくのも、私たちの役割。みなさん「認知症」という名前は知っていても、認知症の人と接する機会は少ないはずです。それだと、いざ対面したら「どうしていいかわからない」「お手伝いしたくてもできない」となってしまうと思うんです。

でも、ここで接点も持ってもらいきちんと理解してもらえれば、何かあった時に手を貸していただけるかもしれない。認知症は徘徊という症状もありますから、そういった時こそ地域住民の方の協力が必要不可欠です。

今でもすでにそうですが、今後ますます行政だけで高齢者、認知症の人たちを支えていくのは不可能です。「地域で支える」無くして成り立たない。そういう理解を説いていくのも私たち介護士の仕事の一つだと思っています。

多職種連携でサポートし、
多世代共生を日常に

――こちらは、保育園も併設されているとか。

竹内:はい。同じ空間で子どもたちとおじいちゃん、おばあちゃんが一緒に過ごしています。

石川:最近は核家族化で子どもたちと高齢者が接する機会が少ないので、おじいちゃんおばあちゃんにとっても、子どもたちにとっても、貴重な体験ができていると思います。特に女性のメンバーさんは子どもたちを見ると「かわいいわね」「私の孫もこんなだったわ」と、柔らかい表情になったり笑顔になったりしますね。

クリスマスや七夕などのイベントも合同で行ったりするのですが、みなさんすごく楽しんでくれますよ。

竹内:そうやって多世代が一緒に過ごす時間も、本来は「日常」のはずですよね。私たちはそれを大切にしたい。保育と介護で、一応それぞれ事業体は異なりますが、子どもたちが勉強する時間やお昼寝する時間以外は同じ空間で過ごしていただいています。

子どもたちがお散歩に行く時、「一緒に行きますか?」と声をかけて「行くわ」と言えば、メンバーさんも一緒に散歩に出かけたりもします。子どもたちが紙芝居を見ているそばで、一緒に眺めているメンバーさんもいます。いい意味で空気みたいな存在。一緒にいるのが当たり前な存在。それこそが「居場所」だと思っているんです。

――素敵ですね。ちなみに利用されている高齢者さんや子どもたち、スタッフさんの人数は?

竹内:ホームのメンバーさんは、登録が15名。一日7〜8名の方が通所されています。ここには、訪問だけ、通所だけ、訪問と通所両方といろんなメンバーさんがいらっしゃるのですが、その日の気分で「今日は家で過ごしたい」「今日はホームに行こう」と決める方もいます。

子どもたちもだいたい15名ぐらいですね。スタッフは介護が9名、保育が10名です。

ここでは「多世代共生」以外にもう一つ、「多職種連携」も大切にしています。というのも、ここには看護師・介護士・保育士・管理栄養士と、いろいろな職種のスタッフがいるのですが、それぞれ分業にはしていないんですよ。

例えば、看護師が入浴の介助をすることもありますし、介護士が子どもたちをみていたり、保育士がメンバーさんと一緒にコップを洗ったりすることもあります。そのために介護士も保育の勉強をしていますし、保育士も最低限介護ができる初任者研修の資格をとっているんですよ。

――すごいですね。

竹内:一人一人のメンバーさんをトータルで、みんなでサポートしようというのかこのホームの理念。役割に線引きなどしていては叶いません。ご家族、地域の方々、スタッフ、みんなが繋がって支える環境を作っていきたいと思っています。


後編では、ご利用者さまとのエピソードやこれから介護士を目指す方へのアドバイスなどを伺います。

取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄

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