相談業務は一生勉強、毎日道場 介護リレーインタビューVol.5【相談員&ケアマネジャー 木村淳子さん】#2
介護を受ける側にとって最初に対面するのが相談員&ケアマネジャー。今回は、介護老人保健施設「プラチナ・ヴィラ 小平」(ツツイグループ)で相談員とケアマネジャーを兼務されている木村淳子さんにインタビュー。
前編では、介護の仕事には体力だけでなく、利用者の方の本心や生活歴を把握する知力や観察力が必要だと教えてくださいました。この後編では、人と接する仕事をする上での休日の捉え方や今後の目標について語っていただきます。「心に余裕を持って仕事をするためには私生活は大事」というお話にとても説得力を感じました。
《プロフィール》
木村淳子さん(60歳)…大学の文学部を卒業後、一般企業でOLとして働く。結婚・出産を機に介護業界に入り、介護士からスタート。ケアマネジャー歴11年。豊富な知識と経験を持つベテラン。
休日の過ごし方
休みの日は家にも気持ちの中にも仕事を持ち込まない
――子育てと仕事の両立は大変ではありませんでしたか?
この仕事を始めるときに自分に課したのが「無理は禁物」ということ。だから、最初はパートから始めて、子どもが育って手が離れていくタイミングを見ながら少しずつ勤務時間を延ばしていったという感じです。無理をしないように、でも長く仕事を続けられるように仕事量と家庭の時間をコントロールしてきました。実は、私生活は非常に大事だと思っているんですよ。相談業務をする上で、精神的なバランスをきちんと保っておくことはとても重要なんです。どのお客様とお会いしても同じトーンで対応しなければいけませんからね。
そのためにも、私生活が上手くいっておらず、心配ごとを抱えていたりイライラしていたりすると、いくらプロでもお客様と真摯に向き合うのは難しいです。職員間でも、イライラしていて感情的にものを言う人がいると声をかけづらいですよね。だから、お休みの日にしっかりリフレッシュしておかなければいけないんです。
――私生活に手を抜かないということは仕事のためにも大事なのですね。では、木村さんはお休みの日、どのようにリフレッシュされていますか?
仕事とはまったく関係のないことをするようにしています。庭で花を育てたり、楽曲を考えることが好きなのでギターやピアノを弾いたり。映画や料理、絵を描くことも、それだけに集中して余計なことを考えなくて済むので良いリフレッシュになっていますね。休みの日はなるべく仕事を家にも気持ちの中にも持ち込まないように努力しています。
老健の可能性
老健は総合的に勉強できる場所
――介護業界のどんなところに課題を感じていますか?
受け皿の数が足りなくて困っている方が多いですよね。現在、医療現場では治療することが最優先なので、治療が終わると退院を迫られるという方も多いんですね。ですから、状態が不安定なままなのに療養型の病院に入れる条件ではないし、家での生活も難しい…という方が多くいらっしゃるのが現状です。特に東京は、ご家族が共働きをされている家庭が多く、老老介護や認認介護のケースが多いんですね。そういう社会の実情を受け、うちの施設では認知症専門棟や、4年前くらいからターミナルケアも始めたんです。
よくお客様には「介護老人保健施設(以下老健)そこまでやっているんですか?」と言われます。特別養護老人ホーム(以下特養)と老健で大きく違うところは、入所されてから終身までケアできるかどうか。特養はターミナルケアを行うところが多いので最期までケアできますが、老健は中間施設のため長期間の入所は難しく、施設で最期を迎えられるわけではないんです。でも、特養は空きが出るまで長く待たなければならず、そしてご家族はケアできない。そんな困っている方々の居場所をつくりたいと考えているんです。
――老健という枠にとらわれていては今の社会に追いつけないのですね。
うちの施設にはさまざまな方がいらっしゃいますね。もちろん在宅復帰される方やデイケアを利用して在宅生活を継続されている方がいることはこちらとしても嬉しいです。そのほかにも、季節に合わせて家と施設のどちらで過ごすかを選べるというシステムも導入しています。夏の暑い時期と冬の寒い時期はどうしても家にこもりがちでリハビリが進まないので、その間は施設を利用して、気候の良い秋や春などは家で生活するという方もいらっしゃいます。どんどん介護サービスが多様化しているんですよ。
――老健の良さとはどういうところですか?
老健は、医師や看護師、リハビリ職員、薬剤師、管理栄養士、ケアマネ、色々な職種が一同に介してケアをしている場所なんです。他職種との連携がこの施設の中で完結しているので、色々な角度から勉強できると思いますよ。私はこれまでデイサービスも特養経験してきましたが、老健は総合的に勉強できるところだなと今改めて感じています。
――一人あたりの業務量が多いことや激務という世間のイメージについてはいかがですか?
どうしても3K、4Kと言われてしまいますが、正直そういうところもあります。こちらが良かれと思ってやったことを強く拒否されることもあれば、心が折れることだってあります。でも、そこで心が折れて一人でふさぎ込むのではなくて、なぜその方がそのような態度を取るのかをみんなで洞察・観察すれば良いんじゃないかなと思うんです。相談員としてご家族からお話を伺ったりすると、ここに来る前の生活で色々なストレスを抱えていたとか、こういうことには猜疑心があるのだとか、理由がだんだん見えてくるんですね。介護士からは「そういう情報をもらったので声掛けが変わりました」と言われることもあります。そうやってチームで向き合っていけたら良いですよね。私も、もっとお客様の情報を収集して仲間に伝えなきゃと思っています。
――チームで利用者様を迎え入れるのですね。その中で木村さんはトップバッターですね。
私は施設の顔として第一印象が決まる場所に立っていますから、立ち居振る舞い、言葉遣い、表情には特に気を付けていますね。スタッフにもよく教えています。でも、最初の印象をいくら良くしようと思っても、施設に入所してしまえばどのみち中身が分かってしまいますよね。だから、誰か一人だけ前に出てお客様に接するのではなく、チームみんなで情報を共有して、みんなで考えていく、これが大事だと思うんです。
今後の目標
今後の目標
――木村さんの今後の目標を教えてください!
施設職員としての目標は、地域の方が困ったときに「プラチナ・ヴィラ 小平の相談室にちょっと電話してみようか」と思っていただけるような相談室をつくっていくこと。相談室には現在6名のスタッフがいて、今はまだ各人スキルにバラつきはありますが、どのスタッフが電話に出ても、相手が安心できるようなご案内ができるようにしていきたいです。個人的な目標としては、実は私、あと5年で定年なんです。5年はここの施設で頑張らせていただいて、定年後は自分の住んでいる地域で自分がこれまで学んできたことを活かしていきたいと思っています。本当にお困りの方はまだまだたくさんいますので、何かの形でお役に立てたらなと。だから、定年後も介護の仕事はずっと続けるつもりです。
――最後に、木村さんが仕事する上で一番大事にしていることは何ですか?
冷静と誠実ですね。何があってもカッとならずに冷静に受け止めて誠実に対応することです。外部のお客様に対しても内部の職員に対しても。そうやって余裕を持って対応できるためにも自己研鑽ですよ。知らないこと、未熟なことはまだたくさんありますから、毎日が勉強ですね。
――木村さんのような方でも、まだ勉強されるのですか?
一生勉強ですよ。相談業務は特にね。毎日道場に通っているつもりでいますよ。
【相談員・ケアマネジャーのここが魅力!】
1.利用者とご家族の不安や悩みに向き合える
2.収集した情報が他の職種や場面で生かされる
3.「ありがとう」の言葉を聞ける
【編集後記】
相談業務には感情のコントロールが大事だと教えてくださった木村さん。職場でいつも冷静に仕事ができるように私生活をおざなりにしないと凛とした口調で言い切る姿がとても印象的でした。さまざまな想いや感情が交錯する介護の現場では、木村さんのような「無理は禁物」という考え方が必要なのかもしれませんね。
▽前編はこちら▽
介護現場には体力だけでなく知力・洞察力も必要 介護リレーインタビューVol.5【相談員&ケアマネジャー 木村淳子さん】#1>>
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/山崎裕一
Store Data
プラチナ・ヴィラ 小平
住所:東京都小平市鈴木町1-85-1
電話:042-349-3505
URL:http://www.platinum-villa.jp/kodaira.html