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介護・看護・リハビリ 2020-06-03

介護現場には体力だけでなく知力・洞察力も必要 介護リレーインタビューVol.5【相談員&ケアマネジャー 木村淳子さん】#1

介護業界にはどのような職種や働き方があるのかを具体的にお伝えするべく、実際に介護現場に立つ方々にインタビューする本連載。

介護を必要とする人にとって窓口となるのが相談員&ケアマネジャー。今回取材に伺ったのは、介護老人保健施設「プラチナ・ヴィラ 小平」(ツツイグループ)で働く相談員兼ケアマネジャーの木村淳子さん。木村さんは、相談室の室長として毎日たくさんの業務をこなしていらっしゃいます。

前編では、介護業界に入るきっかけとこの仕事の魅力や苦労したこと、後編では、相談業務をする者としての心構えと今後の目標についてお話を伺いました。自分の仕事は相手に意見を押し付けてはいけないとお話しする木村さん。相手の真意を見抜くことを心がけているようです。

《プロフィール》

木村淳子さん(60歳)…大学の文学部を卒業後、一般企業でOLとして働く。結婚・出産を機に介護業界に入り、介護士からスタート。ケアマネジャー歴11年。豊富な知識と経験を持つベテラン。

介護業界に入ったきっかけ

障害のある子どもを持ったことがきっかけ

――介護業界に入られたきっかけを教えてください。

障害のある子どもを持ったことが一番大きなきっかけです。実は、学生の頃に障害のある子どもが通う施設にボランティアで行ったりしていたんですね。でも、当時はまだ若かったので、福祉業界ではなく、企業でOLをしたいという気持ちの方が先に立ってしまったんですよね。OLとなり3年半後に結婚して子どもを産んだことで、はじめてこの業界に強く惹かれたんです。また、将来的に両親の介護が必ず必要になるだろうと思い、介護業界の制度や社会資源について勉強しておきたいという気持ちもありました。

――介護業界に入って最初にどの職種に就かれたのですか?

最初はデイサービスの介護職員をしていました。週3日のパートからはじめたのち、正社員になり、デイサービスの主任をさせていただきました。その後、入所サービスで24時間のケアも経験しておきたかったので、特別養護老人ホーム(以下特養)に移ったんです。そのあとにケアマネジャー(以下ケアマネ)の資格を取り、介護老人保健施設(以下老健)で通所、デイケアの相談員として仕事を始めました。こちらの施設には9年前のオープンと同時に入社し、現在はご入所の方の相談員とケアマネを兼務しています。

――介護職を経てケアマネの資格を取られた理由は何だったのですか?

私は相談員とケアマネ員との隔たりを考えておらず、とにかく相談窓口をやりたかったんですね。自分が障害のある子どもを持ったときに、制度も、そして何を誰に相談すれば良いのかさえ全くわからなかったんです。そんなときに、市の担当者と相談業務をしている方々が導いてくれました。本当に丁寧に案内してくださったおかげで、自分も自信を持って子育てをすることができました。だから、介護業界に入るのであれば、まずは介護の勉強から始めて、最終的には介護が初めてでお困りの方々に安心してもらうように案内する仕事をしたいと考えていました。そして、ご本人らしく生活できるような、またご家族をサポートできるようなプランを立てていく仕事をしたかったんです。

相談員・ケアマネの仕事内容

利用者様の個室や病院に伺い、状態確認をする

《ある一日の仕事の流れ》

――木村さんの仕事内容を教えてください。

まずは全体朝礼に参加して、全館で注意事項のあるお客様の情報を得ます。その後、各フロアの申し送りを聞きに行きます。場合によっては、注意事項のあるお客様のご状態を確認するためにお部屋に伺うこともあります。一通りの情報確認を終えたら支援相談員としての業務に取り掛かります。ご入所希望のお客様からの電話受付、利用者様のご家族との面談などですね。

ケアマネの専門業務としては、プランニングしたものをご家族に説明して、モニタリングしたものをサービス担当者会議に提出し、見直しが発生したら再度プランを立ててご家族に説明してサインをいただきます。また、体調を崩された方の手続きも行っています。老健で生活を続けていくことが難しくなった方がいらっしゃれば、医師や看護師、リハビリ職員で会議を開き、ご家族をお呼びして説明することもあります。

膨大な量の書類を抱え、日々パソコンに向かっています!

――老健ならではの業務はありますか?

うちの施設は病院からお客様が移って来られることが多いんです。そのため、お客様が退院される前に病院に出向かせていただき、病院のソーシャルワーカーさんと連絡を取って、判定会議にかけて、ご入所日を決めるというパターンもあります。また、老健は中間施設なので退所支援もしなければなりません。入所された方は全員、うちを出たあとにどの施設に移るか、在宅復帰をするのかなどのご意向を伺いながら相談させていただきます。

――利用者様の個室や病室に伺うこともあるのですね。

居宅ケアマネの場合もご自宅に伺うこともしますが、物理的にすぐにというのは難しいです。施設のケアマネは、その点、早く対応できますね。

――業務内容が多岐に渡っていてとても忙しそうですね。

入所されてからもご家族がお話を聞きにいらっしゃることもありますので、その都度30分~1時間ほど割かなければいけません。そうなると、パソコン作業がどうしても後回しになってしまい残業となる日もありますね。

相談員・ケアマネの魅力と大変なところ

相談員は相手に考えを押し付ける仕事ではない

――どんなときにやりがいを感じますか?

ご家族とご本人のご意向に差異があることが多いんですね。ご家族のご意向で入所が決まってしまうことがほとんどなのですが、ご本人は家から離れて暮らすストレスと、いつ家に帰れるのだろうという不安を抱えているんです。そのため、入所されてから色々なトラブルが起きてきます。相談員というのは調整役なので、時間をかけて双方の気持ちを聞きながら、少しでも歩み寄ってもらえるようお手伝いをするんですね。それで、ご退所のときに、双方にわだかまりがなくなり、「ありがとうございました」と言っていただけたときはとても嬉しいですね。

また、体調が悪くなり病院やほかの施設に移る方がいますが、ご家族が把握しているご本人の状態と、我々専門職が見たご本人の状態が異なっている場合もあるんです。ご家族からすると「もっとこの施設にいさせてもらいたい」と思いますよね。だから、お互いしこりがあるまま退所支援することもあります。でも、退所されたあとにわざわざお電話をくださったり、こちらに足を運んでくださったりして「あのとき説明を受けて疑っていたけど、実際に退所して次のところに行ってみたら、これが本人にとって一番いい方法だったことがやっと分かりました」と言っていただけることもあるんです。私たちが支援したことが少し役に立ったのかなと思うと嬉しいですね。

――大変だと感じるところはどこですか?

ありがたいことにケアマネ業務や相談業務で挫折を味わったことはありません。でも、業務量の多さにへこたれそうなときはあります。ご家族も色々な想いを抱えていますから、高いコミュニケーション能力が必要になるんですね。職員間でどうしてもスキルにバラつきがありますから、大きなトラブルにならないように代わりに自分が出なくてはいけないこともあります。そうなると自分の業務量が肩にのしかかってパンクしそうになるんですよね。ほかのメンバーが育ってくれて、みんながある程度均一に対応できるようになるまで時間がかかるという点においては、やっぱり悩みますね。

――スタッフを教育する上で、相談業務・ケアマネ業務ならではの苦悩や必要なスキルはどんなことですか?

相談室に就くまでのキャリアもそれぞれ違いますし、もっと言えば、その職員が生きてきた環境や経験値なども違いますよね。相談業務というのは相手をジャッジしてはいけないんですね。「これはおかしい、これは間違っている」という風に自分の考えを相手に押し付ける仕事ではないので、この方はどういう生き方をしてきたか、どういう考え方を持っている方なのかを一回振り返って、自分が抱えている固定概念を把握してもらわなければいけないんです。指導する上では、やはりそこが難しいところですね。それに、お客様にも色々な想いがありますから、言葉には表れない本音や真意を掴んでいかなければいけません。そのようなスキルを職員全員が持たなければいけないんです。

――先ほどコミュニケーション能力が必要と伺いましたが、ただ会話がポンポン続いていれば良いというわけではないのですね。

そうなんですよ。例えば、ご家族の関係性が良くないと、「たまたまこの人が同席してしまったから本音が言えなかった」という場合もあるんです。表情からそれを読み取れたときに、あとで個別に電話して「あのときはあんな風におっしゃっていましたけど、実際どうでしょうか?」とお聞きしていかないと、入所してからご家族とご本人がギクシャクしてしまうんです。口でおっしゃっていることとお腹の中で考えていることに違いはないかを、表情や口調などから読み取り、うちの施設の条件と合うのか、うちの施設のシステムをご理解されている方なのかを確認していかなければいけません。

――読み取れる力が必要なんですね。

施設でその方らしい生活をするためには、その方が生きてこられた生活歴などを頭に入れてケアをしなければいけません。だから、体力だけで介護するのではなく、知力も必要なんです。そして、観察力と洞察力もね。難しい仕事ではあるけれど、ご本人の気持ちに寄り添ってケアできたときに感謝のお言葉をいただくと、こんなに喜びを感じることはありません。だから、介護の仕事をしたいと思っている人がいるなら、ぜひ一緒に働きませんか?という気持ちでいるんですけどね。

施設の相談員として、ケアマネとして、本当に多くの業務をこなされている木村さん。忙しくとも利用者の方やご家族にきちんと向き合いたいという気持ちをあきらめず、日々葛藤しているようです。そんな木村さんが口にされた「コミュニケーション能力」という言葉にとても重みを感じました。次回は、忙しく働く木村さんの休日に対する考え方や老健の多様性についてお聞きしました!

▽後編はこちら▽
相談業務は一生勉強、毎日道場 介護リレーインタビューVol.5【相談員&ケアマネジャー 木村淳子さん】#2>>

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/山﨑裕一

Store Data

プラチナ・ヴィラ 小平

住所:東京都小平市鈴木町1-85-1
電話:042-349-3505
URL:http://www.platinum-villa.jp/kodaira.html

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