2021年採用動向! コロナ禍の今こそ働き方の自由度を考える

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)で生活様式が大きく変わった2020年。

もっとも変わったといわれるのは対人関係ですが、ソーシャルディスタンスの徹底にともない、働き方についてはどの業界も大きな影響を受けました。テレワーク中心の生活を余儀なくされた方も多く、仕事の取り組み方が変わった方もいらっしゃることでしょう。

そのような時勢の中、接客がメインである理美容業界の働き方についてはどのように変化したのでしょうか。

2021年採用の現状とこれからを、今年のトレンド要素や経営の先読みをふまえ、船井総合研究所で美容室のコンサルタントを務める、田﨑(たさき)昌美さんにお話を伺ってきました。

お話を伺ったのは…

田﨑昌美(たさき まさよし)さん

美容室のコンサルティング部門の統括
20年以上に渡り300件以上の企業の業績アップに携わる。
手がけた企業の多くは即時に業績アップさせる
船井総研のレジェンドコンサルタント。
現在は長年の研究成果の集大成として
年商10億円突破企業の育成に注力。
年商10億円突破を目指す多くの経営者が船井の門を叩いている

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鈍る新卒採用から見た、欲しがられる人材とは

まず、今年の新卒採用の動きからみると、業種問わず内定取り消しや採用中止が連日ニュースで取り上げられていました。

ハローワーク(厚生労働省)の求人データ推移でみると、2020年8月の日本全体の新規求人は前年同月と比較すると27.8%減。

これを産業別にみると、一番打撃を受けているといわれた宿泊業・飲食サービス業が<49.1%減>、次いで生活関連サービス業、娯楽業が<41.0%減>と、理美容業界が含まれる生活サービス業もかなり打撃を受けていることがわかります。

『新卒採用については、例年であれば年に何度か開かれていたコンテストが全くない状況だったため、技術的な面での評価が難しい年でした。
毎年積極的に採用をおこなっているところは例年通りとっているところが多い印象ですが、全国的にみると新卒採用を控えるオーナーもあり、去年~今年は新卒を含めて人材が余りがちといえます。
数字的な特徴でいうと、新卒採用に力を入れているのは年商2~3億以上、店舗展開が5~6店舗以上の規模のサロンです』

大手サロンはあまり採用実績は変わらなかったようですが、規模の小さな個人サロンでの新卒採用が伸び悩んだため、結果的に業界全体での採用状況はやや下火になっています。

大手ヘアサロンの採用・教育の軸は「理念」の共有

今回のように技術評価が難しい年は珍しいことですが、ここ数年でサロン側の採用基準は技術ありきのところから少しずつ変わりつつあります。

もちろん技術が高いにこしたことはありませんが、人は会社の資産であり、いかに長く働いてもらえるか(=離職率を下げるか)という部分に重きを置くサロンが増えています。

『技術より理念を軸に採用を決めるサロンが増えてきました。美容師という仕事に対して信念をしっかりと持っている方の方が離職率が低く、採用の段階で価値観が同じ方向を向ける人かどうかを見極めています。そういったサロンは入社後も、社員の理念教育にかなり力をいれています。』

とくに新卒の場合、社会的なマナーやお客様とのコミュニケーション能力など、技術面以外での教育でも多くの時間をかけていきます。そこにかける時間や労力を無駄にしないためにも、いかに辞めさせないか、という点は重要といえるでしょう。

厚生労働省の雇用動向調査結果の概況によると、美容師を含む生活サービス業の年間での離職率は23.8%です。他業種の離職率と比較すると、金融業が11.1%、情報通信業が11.8%であり、美容をはじめとした生活サービス業の離職率は非常に高いといえます。

もちろん新卒以外も含めた人数ではありますが、美容師の離職率の高さはたびたび問題となっているので、近年では専門学校側でも対策をとっています。

たとえば、関西や九州で専門学校を運営するベルェベル美容専門学校では、就活サポートのプログラムとして「社会人に一番必要な挨拶やマナーを、知識や技術よりも先に身につける社会人力育成」にかなり重きを置いています。積極的にグループ制での授業やイベントをおこなうことによって、在学中にリーダーシップや協調性、積極性を養うことを目的とした取り組みです。

美容師のような技術職の場合、どうしても技術面に目がいきがちですが、今後は長い目線で人間力の高い人材、伸びしろのある人材の確保が欠かせなくなりそうです。

採用担当の場合は、そういった人間力を見極める目線を、これから美容師を目指す方の場合は美容師としてのあり方や将来的なキャリアアッププランの目線を持てるようになると、いざ採用の場面でもしっかりと対応ができるようになるでしょう。

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再度注目が集まるキャリア採用・フリーランスの動き

 

大手の動きとしては、あまり変わらない新卒採用ですが、新型コロナの影響で売上に打撃をうけた個人店の動きとしては、人件費をいかに削減するかという点も今後重要となってきます。

その点で再度注目が集まってるのが、即戦力となる中途採用です。

『中途採用に関していうと、今まであまり人気はありませんでした。大手サロンの場合、会社の理念や他のスタッフとの協調性を考えると、中途よりも新卒の方が人材としては扱いやすく、離職率の面でも新卒採用のスタッフの方が長く働いてくれるからです』

中途の人材の場合、ある程度の経験値があるため自分自身のやり方や価値観がすでに定まっている場合も多く、採用の段階で考え方のすり合わせをしっかりおこなわないと後々衝突する原因となります。

もちろん、中途採用にもメリットはたくさんあります。

まずひとつは、即戦力であるということです。これは新卒スタッフと比べると、費用対効果は歴然です。教育にかける時間が最小限で済むので、他のスタッフに負担をかけず、業務に入ってもらうことができます。

また、中途採用の場合、自分の顧客を抱えていることもあるので、その場合はみずから集客もでき売上アップにも貢献してくれるので、採用のためにかかったコストもすぐに回収できることでしょう。

中途採用のネガティブ要素としては技術よりも、理念や前職の退職理由など心理的な部分が大きいので、採用の際には前の職場への不満やこれからやりたいことなど、できる限り価値観の確認をおこないましょう。

フリーランスや面貸しはどうなる

そうはいってもやはりこのご時世、雇用そのものがリスクだと感じているオーナーさんも少なくないようです。その場合、フリーランスや面貸しも検討してみる価値があります。

サロン側としては人件費をおさえて土日だけスタッフを補填したり、余っているセット面の活用をしたりと、コスト面のリスクを最小限におさえながらスポットでの人材活用が可能です。

引っ越しや出産を機にやめてしまったなど、実力はあるけれども就業時間や立地がネックで働けなかったスタイリストにとっても、フリーランスや面貸しの活用は、収入・働き方の自由度アップにつながるでしょう。

厚生労働省が調べた令和元年賃金構造基本統計調査によると、美容師を含む生活サービス業の年収平均は男性で297.7万円、女性で221.7万円と他業種に比べると決して高い水準とはいえません。

業務委託形式での独立に近いフリーランスや、面貸しでの副業は、収入への不満があるスタイリストのモチベーションアップにもつながっており、このコロナ禍でも継続して注目を浴びています。

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働き方の5年計画で時代の変化に備える

今までは新卒・中途採用・独立して自分のサロンを出店というのが主な美容師の働き方でしたが、今後はそれ以外の働き方ももっと活発になってきます。

『理美容業界は、フリーランス、面貸し、のれん分けやフランチャイズなど、雇用ではない部分で急激に進化を遂げています。
フリーランスについては、新型コロナの影響も受けて今はしばし逆風の状況です。しかしこの数年間で気運は非常に高まっており、働き方の流れとしてはまさにターニングポイントを迎えているといえるでしょう』

よくも悪くも、新型コロナの影響で各業界の働き方が大きく変わりましたが、理美容業に関しては働き方の自由度がより高まってきており、「雇用」という概念が古いものになりつつあります。

フリーランスや面貸しは新しいビジネススキームとして引き続き注目されているので、現在美容師として働いている場合も、美容師を雇用している側も、新たな選択肢のひとつとして検討しておきましょう。

出典元:
厚生労働省 一般職業紹介状況(令和2年8月分)について
厚生労働省 -平成 30 年雇用動向調査結果の概況-
大阪ベルェベル美容専門学校 就職サポート
厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査

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