客単価40万円の物販ミラクル、コロナ禍で強化すべきはあらたな収益柱作り

新型コロナウィルス感染症(covid-19)の流行から早1年、私たちをとりまく環境は大きく様変わりしてきました。

理美容院などのいわゆる接客業は、不要不急の外出の自粛、ソーシャルディスタンスなど対人関係の変化によって、苦戦を強いられた店舗も多いことでしょう。

その中でも、サロンの方針をうまくシフトして収益を維持し、売上が前年度よりも2倍以上に上がっているサロンもあります。

そのような成功実例と今サロンがやるべき取り組みを、多くの理美容院で経営をV字回復させた実績をもつ、船井総合研究所で美容室のコンサルタントを務める、田崎(たさき)昌美さんにお話を伺ってきました。

お話を伺ったのは…

田﨑昌美(たさき まさよし)さん

美容室のコンサルティング部門の統括
20年以上に渡り300件以上の企業の業績アップに携わる。
手がけた企業の多くは即時に業績アップさせる
船井総研のレジェンドコンサルタント。
現在は長年の研究成果の集大成として
年商10億円突破企業の育成に注力。
年商10億円突破を目指す多くの経営者が船井の門を叩いている

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2020年最も動きがあったのは物販

2020年に売上が好調だったサロンの特徴のひとつとして、物販をしっかりおこなって収益の柱を増やしていたことがあげられます。

美容院はもともと職人文化なので技術一本勝負のところも多く見られますが、ひとつの事業の場合、新型コロナによる緊急事態宣言のような不可抗力での影響をダイレクトに受けてしまいます。予期せぬ事態が発生した場合、事業や売上が分散していることでリスクヘッジになることも多いのです。

『顧客に理美容サービス以外を提供していくことは、今後の流れとしては有効です。たとえば店販サービスで好調だったのは、シャンプ―、トリートメント、サプリメントなどの一般的な美容関連商材。それ以外だと、振袖の着付けなどで、顧客の単価が最高額40万円という数字を記録したサロンもあります。
呉服屋とのタイアップで数千万円売り上げているサロンもありました。
理美容の事業で3割程度売上がダウンしてしまったサロンでも、他事業があることでリカバーしたり、前年比200~300%の売上を叩き出すことが可能になるのです』

しかし、物販の強化については、ただやればいいというものではありません。

店販品の紹介は顧客との信頼関係があるからこそ耳を傾けてもらえるので、まずは各スタイリストが顧客と信頼関係の構築ができているかを見直す必要があります。

『店販についてはある程度本業の業績がよいのが前提となります。最重要はお客様と仲良くなることで、本業が好調なところは顧客とのコミュニケーションがとれています。
顧客との関係性が弱いサロンがいきなり店販や事業の複合化にチャレンジしても収益化することは難しい。
本業で業績が悪いところは店販を行う前にお客様と仲良くなる必要があり、まずはコミュニケーションツールの強化が課題といえます。店の作りや技術で売っていたものを、そうではない価値観にもっていかないといけません。
非常にシンプルですが、経営者の価値観を180度変える必要があります』

顧客とのコミュニケーションについては別記事『2021年はコミュニケーションが鍵! 広告からSNS主流の時代へ』で掘り下げています。LINEを活用したり、インスタグラムなどのSNSでコロナ対策をはじめとした店内の取り組み、スタイリストのキャラクターが伝わるような発信をおこない、顧客が来店できない時でもコミュニケーションを意識するようにしましょう。

親和性がある事業連携でwinwinの収益アップ

店販を強化していく場合、顧客をサロンの資産としてうまく生かせるかどうかが大きな分かれ道になります。ヘアケアの中だけで完結しようとすると客単価の引き上げには限界がありますが、異業種と組むことで、お客様側もまったく別のお買い物として購入してくださるので、新たな収益を生むことができます。

この新たな収益柱を成功させる秘訣は、「親和性」のある事業展開をするかというところが肝になってくるようです。

『店販品の強化やまつエク事業の立ち上げなど、多様な事業展開が考えられます。ひとりのお客様にあれもこれも利用いただき、この人(サロン)にすべてお任せしようと言っていただくことが一番理想です。
基本は一番売上が上がりやすい催事に誘導するのがよいでしょう。
セット面の前で商品を紹介するだけで売れるわけではありません。
フェア・展示会を開いてそちらでの販売を強化していく必要があります。
しっかり取り組んでいるところでは、自社イベントでシャンプーやサプリメント、振袖レンタルまで催事販売しているところもあります』

ここで考えるべきは組める相手探しです。

自社ですべてを展開しようと思うと、元手になる資金や、ノウハウが必要となってくるので、できることが限られてきます。しかし、異業種とタッグを組む場合、先方のノウハウを使ってこちらの顧客を誘導するので、新たな事業をはじめるにあたってのリスクがミニマムに抑えられます。
先方にとっても集客のコストや手間、顧客リストアップの必要がないので、非常にwinwinな施策といえます。

がっちりタッグを組む場合、相互送客の手段もとれるので、先方のお客様への告知で知名度アップや集客も見込めるかもしれません。

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インスタブームを逆手にとる、映える集客実例


最後に、自社で大きく方向転換をし、経営悪化からV字回復させた実例をみていきましょう。

美容院の中でも、特に2020年売上がダウンしてしまったのが、ホテル・結婚式場などを相手に仕事をする婚礼専門の美容室です。

コロナ禍で結婚式やパーティーが軒並み中止になる中、売上は実に90%もダウンし、ほぼ稼働が止まっている状況でした。

そのような状況下で、ある婚礼専門のサロンは新たな取り組みを始めており、売上減少を免れました。

『いわゆるBtoB美容室と呼ばれる美容室の場合、親和性が高いのが「写真」です。そこである美容院が方向転換を図ったのが、美容室×写真館の複合施設化です。
もともとは美容業のみだったのでカメラマンはもちろん不在ですが、カメラマンは社内では抱えず、フリーランスのカメラマンさんを使うことで人件費のリスクを軽減しています。
スタジオは美容室内にあった事務所スペースをリフォームしているので、設備投資としては400万円ほど。
立地が良い場所にあったので、ロケ撮影に重きを置いて成功しています。
3年ほど前からこの写真館としての取り組みを開始しましたが、売上はV字回復しております』

美容室×写真館が売上アップしたのは、現代のSNSによる時代背景もあるでしょう。

実は、写真館自体の業界動向としてはお客様の利用率はやや減少傾向にあり、新型コロナの感染拡大で卒業式や入学式などの学校行事、結婚式などの中止や延期も相次ぎ、2020年1~9月の写真業界の倒産は19件(前年同期比72.7%増、前年同期11件)と急増しています。

しかし、家族・子ども向け出張撮影プラットフォーム「fotowa(フォトワ)」の社内調査によると、2020年4月から5月にかけて発令された初めての緊急事態宣言下では、厳しい自粛ムードで撮影キャンセルが相次ぎ、3月~5月の撮影件数は前年比4割減に落ち込んだものの、コロナ禍においても、通年で前年比約1.2倍の成長に至っています。

これは、インスタグラムからの影響が非常に大きく、世界観の表現や、クオリティの高い写真を求める方が多いともいえます。また、近年ロケ撮影の需要も高まっているため、出張で撮ってくれるという点も売上アップの理由のひとつになっています。

特に注目すべきはニューボーンフォトやハーフバースデーなど、従来撮影されていたハレの日だけでなく、プロカメラマンをカジュアルに使う方が増えているということです。

出典元:fotowa 2016~2020年の撮影ジャンル比率の変化推移

美容室が写真業界に進出するメリットとしては、美容と写真は非常に親和性が高いということです。

美容のプロが在籍し、メイクやヘアセットまで仕上げたうえで写真撮影をしてくれるとなれば、お客様のポイントは高くなります。

また、ロケ撮影であれば大規模なスタジオをかまえる必要もないうえ、他社との差別化にもなります。近くに海や観光地など、ロケ撮影に適した場所があるサロンの場合は集客もしやすくなるでしょう。

その際に集客についても、SNSやWEBサイトできちんとサービスの可視化を図る必要があります。
写真を入口にして、美容院の集客にもつながる可能性があるので、検索された際にサロンやサービスについてわかりやすく表示し、取りこぼしがないようにしましょう。

特に郊外店や地方都市では、このようなサロンの複合化が進むと田崎さんは予測しています。

技術一本でやってきたというサロンは、このコロナ禍を機にトータルビューティーの戦略にシフトしていくのも生き残るための大きな分岐点となりそうです。

出典元:
東京商工リサーチ 「写真業界」動向調査
家族・子ども向け出張撮影プラットフォーム「fotowa(フォトワ)」 社内調査(掲載はPRTimes)

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