トレンドを創る人 Vol.8 Belle・ 飯田尚士さん 今求められるデザインと発信 #1
オープンから7年が経つ「Belle」(ベル)は、現在、表参道、原宿、銀座、吉祥寺の4店舗を展開する人気サロン。今回は代表のひとりである飯田尚士さんにインタビューします。独立前は、2つの大手有名サロンに勤務。約13年の間、従業員として学んだのちに、同志である堀之内大介さんとふたりで「Belle」をオープンしました。
「Belle」のデザインは今どきのおしゃれガールが注目する“フワッと感”“ルーズ感”“イノセントな印象”など、いわゆるエフォートレスな雰囲気がふんだんに盛り込まれているのが特徴です。「絶対可愛くなれそう!」「私でも変われそう!」と前向きな気持ちになるデザインは、どのように誕生したのかお伺いしました。
手が届くデザインを打ち出す戦略でお客様にとって「Belle」が身近な存在に
――「Belle」が打ち出すヘアは統一感がきちんとある印象ですが、これはやはり戦略ですか?
「はい、そうです。サロンブランディングはとても重要だと考えています。雰囲気や質感を統一して打ち出すことで、お客様ターゲットが明確になります。つまり、「Belle」のデザインが好き!という、はっきりとした意識の方が集まりますよね」
――統一感の軸となっていることはなんですか?
「僕はやり過ぎないことが大事だと思っていて、例えばコンサバ過ぎるとかモード過ぎるものは取り入れていません。おしゃれだけれど、一般の方が頑張ればできるスタイル、また、学校や会社にもマッチしつつ今っぽい作品をホームページなどで発表しています」
――確かに普通の方でも手が届きそうなデザインですね。
「美容師という職業は、例えばSNSで作品を発表したりするとき、モードっぽいおしゃれ感度の高いデザインを載せたがる傾向があります。でも、一般の方にはわかりにくい。むしろ、自分たちが考えるデザインより半歩下がった立ち位置で作品を作ることが大事なのではないでしょうか」
――SNSを通して美容師を選ぶ時代だからこそ、一般の方の目線に合ったデザイン提案が必須ということですね?
「例えば、ハーフモデルさんは美容師うけはするものの、実際に人気ランキングをみると必ずしも一般の方の人気は高いわけではありません。これは雑誌のヘアページの世界でも言われていること。今の時代、共感が得られるのはリアルな日本人女性のモデルです。このようなことを、ちゃんと理解していないとブランディングが上手くいかないなんてことにもなりかねません。なので、スタッフ教育の中にも僕が考えるブランディングについて、常に伝えるように心がけています」
SNSは名刺。自分をアピールする手段として活用すべき
間違いなく人気サロンのひとつである「Belle」ですが、意外なことにスタッフたちはライバル店が講師を務めるセミナーにも参加するそうです。
「“ベーシック”は時代と共に変わっていきますから、東京で活躍する別のサロンが講師を務めるセミナーにも参加させています。この他、地方で成功した方のセミナーもとても勉強になりますね。常に時代に合ったスタイリストを作っていかなければならないので、セミナーに参加させる以外にも、SNSやWEBの上手な活用方法も学ぶべきだと僕は考えています。そのため、WEB専門講師をサロンにお呼びして、勉強会を開くこともあるんです」
――わざわざ講師を招くのですか?
「はい。今の美容師は、技術だけ優れていればいい時代ではないです。僕が美容師を目指したときは、カットとカラー、そしてパーマの技術を徹底的にがむしゃらに学ぶことだった。でも、今はそれだけでは上がっていけない、本当に大変な時代だと思いますね」
――SNSが美容師の集客にとって身近なツールということですね?
「はい。作品を作ってSNSにアップして自分をアピールしていく。見た方が“この人に髪を切ってもらいたい”とか、“この人なら相談しやすそう”とか感じていただくことが集客につながる時代なんですよね。だから、インスタ同様、言葉の発信がしっかり伝わるブログも大事だと考えています。会ったことがない美容師でも、なんとなく言葉から雰囲気も見えてきますから。
結局のところ、僕はSNSは名刺だと思うんです。検索できる名刺。そのことを上手く活用することも必要な時代ですね」
――具体的に専門家からはどんなアドバイスをいただくのでしょうか?
「男性スタッフが問いかけられたのが“ブログにラーメンの画像ばかりあげていませんか?”ということです」
――ラーメンですか?確かに男の方はアップしてますよね(笑)
「つまり美容師の場合、自分を知ってもらう手段の中に食べ物の写真はいらないということをアドバイスしていただきました。美容師は美容師の知識に特化したものをどんどんアップしないと集客にはつながらない。作品だったり、撮影のひとコマだったり、女性スタッフなら自分のヘアメイクや最新ヘアケアを紹介するなど、とにかく美容を全面に押し出す。こうすることで個人ブランドが成長するということです」
――確かに話題のレストランのシェフを検索して、料理がたくさん見れないとテンション落ちますね… それと同じということですね。
「僕も一緒に勉強するのですが、先ほどもお話ししたように、プロが思ういいものと、一般の方のそれとはギャップがある。デザインも細部のこだわり感までみているのがプロで、一般の方はフワッとしているとか、光がマイルドだとか、髪の色に透明感があるとか、わりと抽象的な見方をされます。その辺を意識して作品を発表すると反響がとてもよくて。
やっていくうちに、どんどんコツも掴めるようになりますした」
女性は急成長しやすい時代。男性はコツコツ型で数字を伸ばす
「SNSを駆使するようになると、女性スタイリストの中から急激に集客を増やす子が出てきます。ライフスタイル、美容ネタ、作品を上手にアップしながらフォロワーを爆発的に増やすタイプです。このセンスがある場合、今の時代は女性のほうが圧倒的に数字が伸びやすい。僕も含めて、本当のところ男性はSNSにそこまで興味がないですからね。でも、サロンの根っこの部分を支えていくのは男性。時間がかかるけれど長い目で見て技術を確実に上げ、その上で売り上げをアップしていけるよう、会社も取り組んでいます」
時代に即したマーケティングを早い段階から取り入れていた飯田さんは、技術の向上と共にSNSの利点を上手く活用して成功しました。次回は、現在60名いるスタッフのモチベーション作りなどについてお伺いします。
取材・文/小澤佐知子
撮影/石田健一
Salon data
Belle(ベル)
フランス語で「一番美しい人」の意味を持つBelle。
来店された方を「一番の美人にする」という気持ちを込めてつけたネーミングです。カジュアルだけどチャーミング、媚びてないけど男の子にも愛されそうなデザインが得意で“無理のない自分らしさを発見できる”と、話題のサロンです。現在は表参道、原宿、銀座、吉祥寺に4店舗を展開。
トレンドを創る人 Vol.8 Belle・ 飯田尚士さん 7年で4店舗経営の“深いい話” #2>>