次回予約率95%&離職率ゼロ!お客さまにもスタッフにも選ばれるサロンの経営術「CHOUCHOU」武藤鎌矢さん
福島市内でショート・ボブ専門美容室「CHOUCHOU」、「CHOUCHOU-LEA」を経営する武藤鎌矢さん。多くのサロンが苦心したコロナ禍においても売上は右肩上がりで、2021年に2店舗目、2022年には3店舗目をオープンしました。
安定した売り上げの背景には、既存のお客さま95%、新規70%という高い次回予約率に加え、スタッフがひとりも離職していないことも挙げられます。前編では、お客さまとスタッフの満足度を上げながら、売り上げを伸ばす経営術について伺います。スタッフの働きやすさを第一に考えた雇用環境の整備と、初回カウンセリングが大きなカギを握っているといいます。
今回お話を伺ったのは…
武藤鎌矢さん
株式会社CHOUCHOU代表
美容院を運営していた父の影響を受け、美容師の道を志す。専門学校卒業後、2店舗で経験を積んだあと2017年に独立。現在、福島市内でショート・ボブ専門美容室
「CHOUCHOU」(シュシュ)」と「CHOUCHOU-LEA(シュシュレア)」、全3店舗を経営する。1日3名までの完全予約制、自由出勤・自由シフト制、毎週日曜日定休など、働きやすい環境づくりを徹底。自身の経験を活かし、コンサルティングやサロンオーナーに向けたセミナーなども数多く開催している。
初回カウンセリングは約1時間。些細な不安も払拭
――武藤さんが経営するサロン「CHOUCHOU」、「CHOUCHOU-LEA」の特徴について教えてください。
1日3名さま限定、完全予約制のショート・ボブ専門の美容室です。全メニューヘアケア込みで、トリートメントかヘッドスパ、あるいは両方をお選びいただきます。
お客さまに安心して任せていただけるように、接客は最初から最後までスタッフが入れ替わらず、完全マンツーマンで対応しているのも当店の特徴です。中でも大切にしているのはカウンセリングの時間。ご新規のお客さまの場合は30分~1時間ほどいただいています。
――美容院でのカウンセリングに1時間というのはなかなか珍しいですね。どんなことをお話されるのでしょうか?
お客さまのなりたいスタイルはもちろんのこと、ご来店の目的や普段お使いのシャンプーやトリートメント、スタイリングやお手入れ方法、毎朝髪の毛のセットにどれくらい時間をかけているか…など、お客さまが求めるスタイルのメリット、デメリットも含めて細かくお話をしていきます。
――なぜ、そこまで丁寧にカウンセリングを行うのでしょう。
お客さまと担当するスタッフさんが事前にイメージを共有することで、施術後のギャップを減らすためです。例えば、カラーリングを希望されるお客さまに対してカウンセリングのときに「カラー剤がしみることはありませんか?」というひと言お伝えすることで、しみやすい方には「当店ではお肌の保護剤をご用意していますが、使ってもよろしいでしょうか?」とご提案することができます。
万が一、何も伝えずに施術をしてお客さまのお肌に痛みやかゆみが生じた場合、後から「そうでしたか、保護剤も使用してはいたのですが」と言われたら、お客さまは「言い訳をしている」と思われるのではないでしょうか。こうした対応が「こんなはずじゃなかったのに」というクレームにつながります。お客さまに本当にご満足いただくために、「後出しじゃんけん」的な対応はしないようにと伝えているのです。
お客さまの満足度を上げるためスタッフ教育を徹底
――事前にそのひと言があるかないかで、お客さまの満足度に大きな違いが生まれますね。そもそも、なぜショート・ボブ専門のサロンにされたのでしょうか。
実は、開業当初からショート・ボブ専門だったわけではないんです。もともと私自身がボブスタイル好きということもあって、約5年前にInstagramで「ショート・ボブ専門の美容師」として発信していたところ、それを見てくださった方が来店して下さるようになったのがきっかけでした。色々なお客さまと接している中で「髪を短くしたいけれど、似合うかどうか不安」「お手入れ方法がわからない」という声を多く聞いたんですね。そのときに、カウンセリングの重要性に気付きました。結果として、他にはないサービスが提供できるサロンになったと思っています。
――なるほど! 確かに、髪をばっさり短くするときは勇気が要ります。不安を全部解消していただくためにもカウンセリングの時間が大切なんですね。これがお客さまの満足度や次回予約率の高さにつながっているのでしょうか。
そうですね。お引越しされた後も、遠方からわざわざ来てくださるお客さまもいらっしゃいます。カウンセリングやお客さま対応において最も大切なのは、いかにお客さまの心情をくみ取ることができるかということです。当店では、すべてのスタッフさんが同じ水準で接客ができるよう、「お客さま対応マニュアル」を作成しています。
一例としてお客さまのカバンをお預かりする際には、「お荷物」ではなく「お持物」という言葉を使うようにと伝えています。お客さまご自身は気にならないかもしれませんが、今日のファッションに合わせてお客さまが選んだカバンは、私は「荷物」だとは考えません。大切な「お持物」なんです。
こんな風に言葉遣いについても細かく指示しているのですが、ただ丁寧な言葉で話せればいいというわけではありませんよね。スタッフさんには研修期間中に、ちょっとした声かけも含めて、お客さまの気持ちに寄り添うことをしっかりと身に着けてもらいます。
経営者としての使命は労働時間を守り、適切な報酬を支払うこと
――その細やかさがお客さまの満足度を上げているのですね。4年間離職率ゼロとのことですが、スタッフの満足度を上げるためにはどんなことを実践されていますか?
当店で働くスタッフさんのほとんどはお子さんがいる女性なのですが、離職率が低いのは自由度の高さにあると思います。まずは営業時間が9:00~17:00までと短く、日曜日定休であること。何か予定があっても、他のスタッフさんが働いているのに…と思うとちょっと休みにくいですよね。そんな精神的な負担を軽減したいと考えて日曜定休に決めました。
また、当店では、一定水準まで売り上げを伸ばしたスタッフさんは自由出勤、自由シフトのフレックス制になります。前日まで予約が入らなければ休んでもいいし、早く仕事が終わったら定時までいなくてもいい。空いた時間は家族と過ごす時間を大切にしてください、というスタンスなんです。
――子どもの行事などが入りやすい日曜日が定休なのはありがたいですね。ただ、自由出勤、自由シフト制だと働き方次第ではお給料が少なくなってしまうのでは?とも思うのですが。
フレックス制で働けるようになる頃には、ある程度お客さまが付いていて売り上げもあるので、実際には休みが続くということはありません。中には月120時間の勤務で、お給料を30万円以上支払っているスタッフさんもいますよ。
――それはすごいですね。1日3名限定でどのように売上をあげているのでしょうか。
当店では「全メニューヘアケア込み」としています。ケアメニューをあらかじめセットにすることで平均客単価12,000~14,000円と比較的高い水準を維持することができ、お客さまにとっても「家に帰ってからもまとまりやすく、扱いやすいスタイル」を提供することができます。
当店は決して売上が高いわけではありませんが、そもそも爆発的な売上を求めていないんです。常に予約がいっぱいで休みを取りにくい、残業が多いなどの不満を抱えさせてしまうよりも、余裕のあるスケジュールで働きながらプライベートも充実してほしい。
適度な労働時間を守りながら、適切な金額のお給料を支払うこと。それが経営者として私がやるべきことだと思っています。
お客さまにもスタッフにも選ばれるサロンを作る3つのポイント
お客さまにもスタッフにも選ばれるサロン経営のポイントを伺うと、以下の3つでした。
1.初回来店時のカウンセリングに時間をかけ、お客さまの不安を払拭する
2.お客さまの満足度を上げるため、接客マニュアルを徹底する
3.自由出勤・自由シフト、売り上げにつながるメニュー構成でスタッフの満足度を上げた
売り上げを上げるためには、お客さまがくり返し足を運んでくださるサロンであること。そのためには、お客さまを長く担当するスタッフの存在が重要であり、スタッフにとっても働きやすい環境でなければならない。そんな理論から「CHOUCHOU」は少しずつ変化を遂げてきたそうです。後編では、独立開業後に経営が立ち行かなくなり、一度は倒産も意識したという武藤さんがどのように困難を乗り越え、店舗展開をしたか伺います。後半もお楽しみに!