2019 エステサロン業界最新動向

あらゆる業界の中でかなり景気の影響を受けやすいと言われている美容業界ですが、その中でも特にエステティック業界はその影響が顕著にみられます。ですが、流れが速く顧客の争奪戦が激しいからこそ、トレンドにとても敏感であり、ブームや一時的な売上は作りやすい業界でもあります。

ここ数年は人口減少に伴い、マーケット縮小が懸念されていますが、それを逆手にとって新たなビジネススキームが出てきています。他業種に比べ異業種からも参入がしやすいため、異業種参入企業が起こす波紋も徐々に広がりつつあります。現在のエステ業界全体の動向を分析しつつ、今年から来年はどう動いていくのか見ていきましょう。

今回は、エステサロン業界の現在抱える課題や今後の見通しについて、船井総合研究所でエステサロン専門のコンサルタントを務める、楠本文哉(くすもとふみや)さんにお話を伺ってきました。

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過疎化が進む地方サロン、働き方改革が急務

まず、エステティックサロンの件数の推移としては、ここ2~3年では大きな変化はありません。数字でいうとエステ業界の市場全体で約3587億円と言われており、ここ数年3,560億~3,590億の間を行ったり来たりしています。今年の見込み数字では3599億と言われているため、前年比でいくとわずかに上昇していると言えます。

最近では、純粋なエステティックサロンだけでなく、美容室でのエステメニューの強化、メディカルエステと呼ばれる医療機関でのエステ、施術担当者がつかないセルフエステも増えてきているので、そういったところもカウントすると、市場的にはもっと大きくなります。

エステ業界で1年以内に倒産する企業が60%と言われており、10年生存するサロンはたった10%になります。

トータルのエステサロンの件数は変わらないものの、時代の変化や顧客の囲い込みについていけずにつぶれてしまうサロンが非常に多いことを物語っています。経済センサスの発表によると、現状の事業所数と従業員数は下記の通りです。平成28年のデータですが、この数年横ばいと言われています。

事業所数(うち個人経営店)
エステティック業/5,148店(2471店)

従業者数(男:女)
エステティック業/2万0471(1217:1万9254)

ここ数年で変化がみられる点としては、エステティシャンの給与があがってきた点です。エステティシャンの人数としては、3万人近くが従事していると言われていますが、ここ数年で人数自体に大きな変動はないようです。ではどうして給料に変化があったのでしょうか。

給与が上がった背景としては労働力不足の問題があります。エステティシャンの人数としては、エステの専門学校を出るという基準で行くと数が減ってはいますが、エステについてはスキルを身に着け稼げる環境が整っていれば無資格でも活躍できる業種です。そのため、トータルでの人数自体は減っていないと言えます。

人材については、エリアでの格差が非常に目立ちます。エステティシャンが都心部に一挙集中したことにより、地方の人材不足が深刻化しています。10年前くらいまで地方都市のエステの在り方としては郊外にドンと大型店舗を構えるサロンが主流のやり方だったのですが、最近は地方のサロンについてはかなり規模が縮小している傾向にあります。

20万人都市程度の規模で地域一番店と呼ばれ8~10ベッドで800~1,000万の売上をあげていたサロンが、人材の不足が進むごとに顧客の回転数も落ち、売上が目減りしていっている状況です。30代で活躍してたスタッフが40歳、50歳になり、若いスタッフが入ってこないのでそのまま衰退しているというサロンが多く見られます。

都心部と地方の格差が大きく開いたことで、人材不足が深刻化し、優秀な人材を雇用するためにやむを得ず高い給料でつなぎとめているというのが本音のようです。エステサロンの営業形態は基本的に夜型であり、エステティシャンが結婚などのライフスタイルの変化で退職してしまうケースが非常に目立ちます。

これは本人側の問題ではなく、福利厚生・産休育休・復職までの仕組みを十分にとっておらず、夜に働けないからという理由で、やむを得ない退職につながってしまっている点がこの業界の大きな問題と言えます。社会的に働き方改革が進む中、夜型勤務に対しての対策をとれるかどうかは人材不足がさらに進む今後のエステ業界に大きな影響を与えると言えるでしょう。

都心部はセルフエステが大躍進


現在エステ業界でもっとも大きなトレンドとしては、セルフエステが挙げられます。今まで、セルフエステと言えば家庭用の美容機器を使って自宅でケアするというのが一般的でした。それが数年前か業務用の美容機器を店頭で貸し出すスタイルのエステが出始め、今年爆発的に流行っています。

業界の流れ的には、人材の不足が今後も進んでいきます。それはエステに限ったことではなく、どの業界を見てもロボットを活用したような、人を使わなくても収益をとれるモデルが増えつつあります。このセルフエステに関しては、エステというよりはもはやフィットネスに近いスキームだと言えます。今後、この流れがもっと発展するとエニタイムフィットネスのように24時間制のサロンが登場する可能性もあります。

先述したように、どの業界においても人材不足は懸念事項であり、各企業の最優先課題となっています。エステ業界においても、人材不足は深刻な問題です。特に都心部のOL層をターゲットにしているエステサロンについては、平日の夜や土日に予約が集中する恐れがあり、人手が不足しがちな時間帯をカバーしなくてはいけません。その点をうまくカバーしたのがセルフエステと言えます。

一昔前まではエステはエステティシャンの手技ありきでのビジネスでしたが、機械の進化が進み、低価格で品質の良い機械が複数登場しました。技術のないエステティシャンや機械に初めて触る方でもトラブルなく結果がだせるような使い勝手の良い機械が増えたこともセルフエステが進んだ一因でしょう。

現在エステサロンは、フィットネス同様に高単価なパーソナル・オーダーメイド志向のケアと、手軽にできるセルフ型と、二極化が進んでいます。コストパフォーマンス(=コスパ)が重要視される現代、セルフエステは価格競争の最たるものと言えるでしょう。セルフエステ自体は数年前からちらほらとやっていらっしゃるところもありましたが、ここまで爆発的に伸びたのは去年~今年が初めてです。

異業種からの参入が大きな影響を与えました。今までエステ業界において、ある程度の設備投資と広告費でお客様はとれていたので、大きな資本投資をすることはリスクになると考えられてきました。

セルフエステについてはその存在自体が全く知られていなかったのですが、じぶんdeエステがこれまでのセルフエステとは一線を画する認知拡大に広告費をかけたことをきっかけに、「セルフエステ」というジャンルの認知度が爆発的に上がりました。そのコンセプトとコスパの良さが、今までエステが高いと感じながらもファッションや自分磨きの一環としてエステに通っていた意識高い系女子に特にささり、一気に人気が上昇したといえるでしょう。

ただし、今後全国的な広がりがみられるかというと、その点は難しいものがあります。まずセルフエステ自体が先行投資で機械の台数をそろえるのにコストがかかりすぎる点や、集客の問題で、広告集客の費用対効果の高い都心部に向いているビジネスです。

セルフエステの利用者の傾向としては働き盛りのOLの利用率が最も高いため、女性だけの30分健康体操教室をコンセプトにして全国的に店舗を増やしたカーブスのように、郊外で年配の方をターゲットに組み込んだスキームには難しいでしょう。機械を使いこなす必要もあるため、現状では高齢化が進む郊外では、あまり受け入れられないビジネスになりそうです。

ただし、今後も色んな業界からの参入は進むと見られ、アレンジ次第ではさらに成長が見込めるビジネススキームです。このセルフエステのトレンドは継続して注目していくべきトピックと言えます。

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集客はWEBに完全シフト、フリーペーパーの時代は終わった


セルフエステの集客の傾向でわかるように、エステについてもWEBでの広告宣伝がかなり影響を持つようになっています。特にここ数年で集客の方法やお金のかけ方が大きく変わってきたようです。

長らくチラシやフリーペーパーでの集客を行ってきたエステ業界ですが、約3年前を契機に、チラシ・フリーペーパーはほぼ0になったと言えます。もちろん、今でも紙媒体で集客できるエリアというのは一部あるのですが、特定のエリアを除くと、今は1万部で3件予約がくるかどうかというところまで集客力が落ちてきました。

ホットペッパービューティーが費用対効果で見ると一番良いというのは継続していますが、一強という感じではないです。WEBサイトの強化やリスティング広告で補填するという動きを組み込んでいないサロンに関しては売上をあげるのが厳しくなってきました。

美容業界の中でも、美容室とエステサロンでは集客の費用対効果に大きなずれがあります。美容院の場合だと1回の単価が数千円かつ2回目以降来てくれるかの確約がありませんが、エステの場合、初回の客単価は数千円~1万円程度ですが、二回目以降は単価が倍近くに上がります。さらにコース契約までこぎつけることができればある程度の広告費をかけたとしても元が取れる可能性は多いにあります。

例えば、脱毛の場合、WEB集客で新規体験予約をとり、そこから全身脱毛で契約できた場合単価が20~25万くらいのサロンが多いので、1人1万円予算だとして、20万程度の予算をかければペイできる可能性は高くなります。

クロージングに自信がある場合、費用対効果は非常に高いと言えます。SNS集客についても、やり方によってはすごく伸びてきています。

Instagramでの集客は非常に良い結果がでています。ただし、無料の範囲で自分の店舗でアカウント運営しているサロンは集客には結びついていないです。あくまで、きちんと広告費をかけてシステム的に運営をするという前提になります。SNSの広告費としては現状の傾向でいくと最低30,000円~50,000円ほどかけるのがベースになってくると思います。

それでも、今までのフリーペーパーなどの広告費に比べるとかなり安価であり、長期的なフォロワー増加も考えるとInstagramの広告を活用しながら地道に運用していくのも対策としてやっておくべきと言えます。近年の傾向を見る限りでは、資本力がある程度あるサロンについてはWEBにしっかりと広告費をかけるべきです。

予算の少ない個人サロンの場合はホットペッパービューティーもしくは自社WEBサイトを基軸に、プラスαで新規顧客が欲しいタイミングでWEB広告やInstagramの広告を強化していくのが一番効率が良い集客方法と言えそうです。

美容医療の低価格化が今後の脅威


セルフエステの勢いで流れが変わりつつあるエステサロンですが、もう一つの脅威が美容医療です。エステの主なジャンルとしては、フェイシャル、痩身、脱毛の3つに分かれます。

フェイシャルについては、医療の場合、レーザーやメス、注射を活用できるため、悩みに対して即効果を出せるという強みがあります。そして、レーザー系の処置の場合エステの倍程度の5万円以下の金額で通えるところも増えてきたので、医療に軍配が上がっています。

医療痩身については、即効性のある脂肪吸引は麻酔を使う大型の手術の部類に入りロス雲大きいです。医療機器の痩身機器の場合は機器コストが高いためまだ高価格を維持していますが、エンダモロジーやインディバなど、医療機関・エステサロン両方に卸している機械の施術については価格や効果の境界があいまいになりつつあります。

そして、顧客争奪戦が現在最も加熱しているのが脱毛ジャンルです。ニードル脱毛とレーザー脱毛、その後光脱毛と機械の進歩が目覚ましい脱毛ジャンルですが、美容と医療は顧客を取り合いながら脱毛市場を大きくしてきました。

もちろん、効果としては医療機器での脱毛の方が短時間で確実に得られますが、まず全身で数十万かかり金額でのハードルが高い点と、何よりも出力が強いため、痛がる女性が非常に多いというデメリットがあります。強い出力のレーザーだと赤みや毛根の炎症も出る場合がありますが、医師が対応するからこそ、そういったリスクを持ってでも対応できます。

その点、1回あたりの効果がマイルドなエステサロンは、医療機関に比べるとかなり安く通え、なおかつ出力が低いので痛みが出にくいというメリットがあります。出力が低いため通う期間が長くかかるというデメリットはあるものの、痛みとコストでエステサロンでの脱毛は顧客を勝ち取ってきました。

美容機器の光脱毛機も進化が進み、脱毛の精度もかなり上がってきています。ムダ毛は10代の頃からコンプレックスになっている女性も多く、高校生・大学生でも脱毛需要があることから、ミュゼプラチナムや銀座カラーを筆頭に格安で通いやすい脱毛専門エステサロンが市場を拡大してきました。

しかし、ここ数年、その流れが医療機関にも広まりつつあります。最近では、アリシアクリニックのように、脱毛専門を謳うクリニックも増えてきており、広告宣伝も積極的に行うため、認知度も上がりつつあります。
また、医療機関の一番のハードルであったコスト面が、最近解消されつつあります。

エステのフェイシャルの中でもシミ・シワなどのコンプレックス度の高い顧客については、ほぼ美容医療に顧客をとられたと言っても過言ではないでしょう。湘南美容クリニックのような低価格かつ広告宣伝をしっかり行うクリニックに、シミ取りやシワ改善などのアンチエイジングケアの顧客はほぼ持っていかれました。

今後はエステ脱毛が医療脱毛に顧客を持っていかれる可能性が高いです。エステ業界の脱毛については医療機関の脱毛の低価格化がどの程度進むか・広告の規制やホットペッパービューティーのような広告媒体が増えてくることで今後の市場は大きく左右されるでしょう。地域の皮膚科でも脱毛機導入で数百万売り上げが変わるケースも出てきていて、医療機関のコンサルタントがクリニックでの脱毛メニュー導入を勧めることも増えています。

医療機関でもエステサロンとほぼ変わらない金額で集客することが増えてきて、広告宣伝に関しても、知名度の高い芸能人を使い、テレビ・WEB・雑誌・電車の中吊り広告と、かなり力を入れて宣伝しています。そのため、若い層にも認知度が高まり、大学生や社会人1~2年目の若い女性がクリニックを選択することも増えてきました。

SEO対策の点でも、美容健康のサイトはグーグルのアルゴリズム(検索キーワードに対する検索順位を決定するためのルール)が厳しくなり、医師の在籍するクリニックの方が有利です。今後、美容医療がどの程度まで価格競争に食い込んでくるかによって、今後のエステ業界の市場が大きく変わってくる可能性があります。間違いなく脅威となりますので、引き続き美容医療の動向には注目すべきと言えるでしょう。

出典元:
エイチビイエム 経済センサスに見る理美容業種の実態
エステティックサロン市場規模推移 矢野経済研究所
じぶんdeエステ
アリシアクリニック

Profile

楠本文哉さん Fumiya Kusumoto

船井総合研究所の中で最もエステ業界に精通し、船井総研の中でもエステ業界のクライアントを最も多く抱えるエステ専門のコンサルタントである。 得意とするテーマは、「WEBを活用した集客・見込み客の最大化」、「多種多様な業種からのエステ事業への新規参入支援」である。 現在は、年商2000万円の企業から年商30億円の企業クラスまで、年間300回を超える個別コンサルティングを全国で行っている。 常に地域1番店を作るためのコンサルティングは顧問先様から好評を得ており、個別コンサルティングの依頼は1年先まで埋まっている状況である(2019年1月現在)

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