森澤 健 interview ＃1：プロサッカー選手の夢を断念、美容師として世界へ

『NORA HAIR SALON』は、おしゃれなブランドが並ぶ表参道の通りにあるヘアサロン。赤レンガで造られた建物を地下へと進み扉を開けると、開放感のある空間が広がり、お客さまとスタッフの活気であふれています。そんな『NORA HAIR SALON』に訪れるお客さまには外国の方も多く、担当するのは主に店長の森澤健さんです。
森澤さんは2年間で世界一周をした経験の持ち主。それだけも驚きですが、なんとハサミを手に世界中で髪をカットながら腕を磨いたとのことです。今回は、そんな凄腕の美容師、森澤さんに世界一周を始めたきっかけや、初めて旅先でカットしたお客さまについて語っていただきました。

ケガで諦めたプロサッカー選手への夢

――まずは、美容師になったきっかけを教えてください
「高校生のときにお客さんとして美容室に行った際、そこのスタッフさんに美容師を勧めれたことがきっかけです。小中高とずっとサッカーを続けていて、プロサッカー選手になるのが夢でした。学生時代はまったく美容師に興味がなかったんです。高校は埼玉にあるサッカーの強豪校へ進みましたが、高校2年生のときにケガをしてしまいプロになることを断念。そのときに原宿の美容室で“進路を迷っている”と相談したところ、美容師を勧められたんです」

――美容師のどこに魅力を感じましたか？
「世界中どこでも仕事ができるところですね。僕の両親が旅行好きで、小さい頃からよく海外へ行っていました。それもツアーではなく、父とふたりでバイクに乗ってアメリカを横断するみたいな。サッカーができなくなってから、何をやりたいかわからなくなったので、“世界を巡ってみれば日本にない仕事に出会えるかもしれない”と思ったんです。ただ海外を回るだけでは旅行で終わってしまうので、美容師になれば世界中で人の髪をカットできる。さまざまな人種の方と深く触れ合えば、より多くのものを得ることができるだろうと考えました」

半年だけの旅のはずが2年に

――旅の計画を教えてください。
「もともとの計画では世界を一周するつもりはなく、半年間アメリカ大陸を放浪しようと思っていました。最終目標は、ブラジルでリオのカーニバルを観ることです。スタートする時期はスタイリストになったらすぐに出発しようと思っていましたね。実際に旅を始めたのが2007年の11月なので専門学校卒業後、美容師として4年間はアシスタントとして都内で働いていました」

――どうして半年のはずが、世界一周になったのでしょうか？
「旅を始めてみると、アメリカ、カナダと行き、メキシコの時点で3ヵ月経ってしまい、これは半年では行けないなと思いました。髪をカットしながら旅をすると、次の目的地まで連れて行ってくれる方やチップをくれる方など、お礼をたくさんいただけたので、思いのほかお金を使わずに過ごせたんです。そこで、アメリカ大陸で終わらせずに世界一周をしようと決めました」

旅の始まり、ニューヨーク

――初めてカットしたお客さまを教えてください。
「最初のお客さまは、ニューヨークのセントラルパークでベーグルを食べていた老夫婦です。最初にニューヨークを訪れた理由は、美容のレベルが高く、街の雰囲気が東京と比べてあまり違いがないからです。ご夫婦に英語で“髪をカットしながら旅をしているから切らしてください”とお願いすると、男性が“いいよ”と言ってくれました」

――ちなみに初めてカットしたお客さまから、チップなどのお礼はありましたか？
「旅の初めの頃は、お金はいただいていません。とにかくチップはいらないから髪をカットさせてほしいとお願いしていました。途中からは僕が街のなかでカットしていると、“髪を切ってくれないか”と声を掛けられることが増えてきたので、“アップトゥーユー”と英語で“お礼はお任せします”と伝えて、カットしていましたね」

旅先でカットするときは『NORA』のカットクロスを使用し、宣伝もしていた森澤さん。中編では、アメリカ大陸、ヨーロッパ、中東でのできごとを語っていただきます。

Profile

森澤健さん

NORA HAIR SALON店長・サロンマネージャー
1982年熊本県出身。渋谷の専門学校を卒業後、都内の美容室で4年間勤務。2007年に“髪を切りながらの世界一周の旅”をスタート。2年をかけて巡り、世界中の人の髪をカットしながら腕を磨く。2009年より表参道のヘアサロン『NORA HAIR SALON』にて勤務。