金内光信 interview ＃2：美容とは文化である！

東京美容生活衛生同業組合（BA東京）とは、美容師の人材不足や労働環境の悪化などといった問題に取り組み、美容業界発展にために活動している組合のことです。今回は、そんなBA東京の理事長を務める金内光信さんにインタビュー。日本の美容業界が今後発展するうえで必要なことについて伺います。
中編では一流の美容師になるために必要な力や、年々安くなっているサロンの料金設定における問題点について語っていただきました。

美容師に必要なのは人間性

――一流の美容師に必要な力を教えてください。
「容姿を美しくするだけでなく、癒しを与える力が必要です。お客さまは、リラクゼーションを求めていらっしゃいますから。以前厚生労働省が、60代以上の女性を対象にアンケートを実施したんです。外出が減って病気になりやすい年代と言われているため、健康に関する内容のものでした。実は、引きこもりの方は頻繁に外出する人に比べて病気になりやすいんです。そこで、『あなたが外出したくなるのは、どんなときですか？』と質問したところ、多くの方が『美容室に行くとき』と答えました。『美容師さんは、いつも優しく迎えてくれて、髪をきれいにしてくれるだけでなく、悩みを聞いてくれる。本当にうれしいんです』と。美容師は、技術はもちろん大切ですが、それ以上に、気づかいや心づかいができる人間性がとても大切なんです」

日本の美しさの基礎にある美容

――ところで、年々サロンの料金が安くなっていると言われていますが、どのように感じていますか？
「サロンは技術の安売りをやめるべきだと考えています。美容師は容姿だけでなく、人の心をも美しく整えることができる付加価値の高い仕事ですから。たとえば、お年寄りのヘアやメイクを整えてあげただけで、すごく生き生きするものです。美容は、それだけ人の心と密接に関係にあるんですよ。さらに、美容師がカットをするお客さま1人ひとりが集まって、国が成り立っています。つまり、美容は日本の美しさの基礎であり、国の文化なんです。大切なこの文化を、絶対に安売りするべきではありません」

サロンが繁栄してこそ、美容業界は伸びる

――“安売り”を止めるために必要なことを教えてください。
「まず、『安売りは恥ずかしいことだ』と、美容師の意識を変えなければなりません。また、ディーラ―やメーカー、メディア、学校など、美容室に関わる関連業の協力も必要です。なぜなら、関連業の一部はサロンからお金を引っ張り出すことしか考えていないからです。そもそも、関連業は美容室があってこそ成り立っています。つまり、サロンが繁栄しなければ美容業界全体が伸びないんです。美容室に関わるすべての人が、力を合わせなければいけません。もちろん、それぞれのサロンのオーナーが協力し合うことも大切です」

――サロンのオーナーは、どのように考えているのでしょうか？
「美容業界にも危機感を感じている人がたくさんいます。しかし、なかなか協力し合おうとしないんです。それぞれ、美容師に対する考え方が違うからかもしれません。また、強烈なリーダーがいないことも理由のひとつです。そこで今度、福島県出身者を集めて福島県人会を作ろうと考えています。というのも、僕が福島出身なんですよ（笑）。とにかくどういった形であれ、美容師同士がつながる場を持つべきなんです」

国家資格を必要とする仕事なのにも関わらず、初任給の手取りが14～15万円ほどだという美容業界。多くの美容師が、サロンに入社して初めて給料の安さを実感するそうです。この状況を変えるために、金内さんは「雇用の未来」というテーマでセミナーを開くなど、積極的に活動をしています。後編では、高齢化社会が進むなかでの美容業界のあり方や、今後の目標などを伺います。

Profile

金内光信さん

東京都美容生活衛生同業組合理事長
2010年5月に第8代理事長に就任以降、美容業界発展のために努める。2018年に設立された、亜細亜理美容振興協会の初代代表に就任。日本だけでなく、世界を舞台に幅広く活躍している。

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