お客様に「あなたの技術は、魔法使いと一緒ね。」と言われた事で、ヘアメイクの仕事に誇りを持ちました。
この世に手業を生業にしているサービス業はどれぐらいあるのでしょうか?手一つで人を喜ばせたり、疲れを取ったり、美しくしたり、癒やしたり・・・。これってすごいことですよね。
このコラムは、手業を生業にしている美容からヘルスケアの業界の方々にフォーカスをしたプロフェッショナルインタビューです。その人の手が語る物語をお楽しみいただければ幸いです。
モアリジョブ編集部
私の手にしか、できないシゴト。 亀ヶ谷実咲さん
――ヘアメイクアーティストを目指したきっかけは?
亀ヶ谷 私が中学3年生の時に、結婚式に参列する機会がありました。それまでバレーボールばかりで、化粧っ気がなく、ファッションにも興味がない私が、親に勧められてされるがままに、ヘアセットと着付けをしてもらったんですね。昔から髪の毛を触られると、気持ちよくなって眠ってしまうんですけど、その日もヘアをやってもらっている時に寝てしまいました。担当の方からの「できましたよ。」の声で起きたら、自分じゃないみたいな仕上がりだったんですね。それを見た時にはじめて、ヘアメイクってすごいお仕事だなって興味を持ったことがきっかけっです。
――ヘアメイクでも色々ありますよね?
亀ヶ谷 両親からは、「高校3年間のうちに、行きたい道を自分で決めなさい。」と言われていました。進学する専門学校を決めるため、10校ぐらいは訪問しました。ヒューマンアカデミーに通い始めた頃は、ヘアメイクの中でもブライダルに興味があったので、両親に「ブライダルメイクをやりたい」と言っていました。学校に通ううちに、ブライダルだけじゃなくて、他の分野のヘアメイクがあることも知って、色々なことに挑戦してみたいなって思うようになりました。
――ヘアメイクの仕事を始めたばかりの頃はいかがでしたか?
亀ヶ谷 卒業後は、アトリエはるかに入社しました。就職が決まった時に父から、「お金をいただく=プロだということ。」と手紙をもらったんですね。それがきっかけで、真剣に向き合わないとって、プレッシャーは感じていました。ただ、ヘアメイクをやりたかったので、夢と希望とワクワク感で一杯でしたね。最初の頃は、色々なお客様がご来店されるので、学校で習ったことだけでは通用しないことも多く、いっぱいいっぱいだった時もありましたね。
――一番最初に担当したお客様は覚えていらっしゃいますか?
亀ヶ谷 はい、覚えています。遠目から、お客様の様子を伺っていましたね。入客する前に、どういう感じだろうと色々と想像しました。最初のお客様だったので、とても緊張しましたが、笑顔だけはと思っていたんですけど、緊張のあまり、顔が引きつっていたかもしれませんね(笑)。
――仕事を始めてからの失敗談はありますか?
亀ヶ谷 アトリエはるかで働いて2年目の時に、あるお客様から「私がイメージしていたものとは違う」とクレームをいただきました。お客様の好みや感性を理解せずに、自分が思うお客様の綺麗を押し付けてしまったからでした。ある程度技術がついてきていて、自信も持ち始めていた時に、はじめてお客様からクレームをいただいたので、私の中ではすごいショックでしたね。ただ、お客様からお声をいただけるというのは、ただ腹が立ったからではなく、会社や私に対して、期待して下さったからだと思いました。あの時の色々な失敗が、今の自分のためになっているなって思います。
――失敗から学んだことはありましたか?
亀ヶ谷 ご来店されるお客様は、プロの方にお任せしたいと言われる方が多く、以前は、自分で勝手に決めてやっていましたが、失敗を経て、お客様から引き出すために、沢山会話をするようになりました。女性の方って「何でもいいよ。」って言いながら、何でもよくないじゃないですか(笑)。本人は意識していなくても、心の中に思いがあったりするので、色々な質問をすることで引き出せるように、会話をすることを心がけています。そのお客様が求めていることを意識することで、お客様の気持ちを察知して、お望みの仕上がりにできたかなと思います。
――亀ヶ谷さんの成功談をお聞かせください。
亀ヶ谷 私が働いていたブライダルサロンは、リハーサルがあって、前撮りがある方は前撮りがあって、当日を迎える流れになっています。この3日間は、担当のヘアメイクが変わらずに同じ人が行うんですね。たまに、リハーサルの時にお客様から、イメージの違いなどで、担当替えのリクエストがあります。ある日私も、担当替えのリクエストで、お客様を担当したことがありました。他のスタッフがクレームをいただいたお客様だったので、結構緊張して担当させていただきました。お客様とのお打ち合わせ前に、前任のスタッフの写真を見て、「私だったらこうするな」とか、「お客様はきっとこういうのが好きなんだろうな」って、写真で感じ取りました。お客様とはじめてお会いした時に、会話が好きそうな方だったので、すごい沢山お話をしました。すると、結構悩みが多くて、「これやろうと思うんですけどどうですかね?これ私に似合いますか?このドレスにこれがついていたんですけど、どうしよう?」って相談事が結構出て来たんですね。前任のスタッフはお客様の悩みを聞けていなくて、それがイメージ違いを起こしていたと思ったので、私はできるだけお客様の声を聞いて、私からも沢山提案をさせていただきました。お客様からは、すごく良いって反応をいただいて、挙式当日も提案通りにさせていただきました。挙式後に写真も送ってくださってお礼もいただいて・・・。最近はSNSに口コミが書かれるんですけど、そのお客様のSNSで「ヘアメイクさんすごく楽しくて、多分このヘアメイクさんじゃなかったらこんなに良い式にならなかったと思う。」って書いてあったんですね。その時にこの仕事をやっていて良かったなって思いました。
――今までヘアメイクの仕事を辞めたいと思ったことは?
亀ヶ谷 本気で考えたことはあまりないんですけど、新人の頃は、仕事に練習に覚えることも沢山あって、結構自分の時間がなくて・・・。普通にOLで働いている人たちが羨ましかったですね。定時で上がって、アフターファイブがあって、みんなで土日遊びに行ってとか。土日休みなんて本当になかったので、土日休みの仕事に就きたいと考えたことはありました。ただ、ヘアメイクを辞めたいと思ったことはなくて、辛いことは沢山あって精神的には辛いお仕事だと思うんですけど、やっぱり「好き」っていう気持ちは、全然薄れなかったですね。
――好きだけではこのお仕事は続けられないじゃないですか?
亀ヶ谷 「手に職があるって良いよね」ってよく言われたんですね。それが私の中で結構嬉しくて、誇りに思っていることだったので、「一つの仕事を突き詰めて、自分の力で働いていける、誰でもできる仕事じゃない。」って言われた時に、すごい自信を持ちました。なので、ヘアメイクという特化した仕事をしている誇りが、辞めたいって思えなかった、それがこの仕事を続けられている理由だと思います。
――忘れらないお客様はいらっしゃいますか?
亀ヶ谷 アトリエはるかで働いていた時に、地方からいらした年配の方で、今までヘアメイクをしてもらった経験がないお客様ですね。そのお客様は、ヘアメイクをしたのが自分の結婚式ぐらいっておっしゃっていて、その日は、お客様のお嬢様の結婚式でした。「ヘアメイクをしてもらったことがなくて、分からないのでお任せします。」ってリクエストされ、沢山お話聞かせていただいて、私から色々とご提案させていただきました。私の中で、そのお客様はメイク映えする方だと思い、普段メイクをしないのは勿体無いなって・・・。なので、色々と提案させていただいて、好きなようにさせていただきました。そのお客様は、出来上がりを見て、すごい感動して、もう泣きそうで・・・。最後に言われたのが「本当に素敵なお仕事ね。あなたのこの技術は、もう魔法使いと一緒よ。」って。その時に、本当に良い仕事だなって思いましたし、この仕事を続けて来て良かったなって思いました。
――亀ヶ谷さんにとっての恩師は?
亀ヶ谷 今一緒に働いてくださっている講師の方は全員、私が学生の時の先生なんです。学生時代から、「経験を積んだら、先生たちみたいな先生になりたいんです。」って話をしていました。講師の方々には、母校の講師になるって決めた時に、すごい喜んでいただきました。特に成田先生は、学生の頃からアシスタントとして使ってくれて・・・。中々会う機会がないんですけど、私が思い悩んでいる時にふっと連絡をくれて、「飲みに行こう。」と誘ってくれます。大人になってから、怒られるとか少なくなっていくんですけど、叱咤激励してくださる存在なので、すごく大事ですね・・・。今一緒に働いている講師の方達は、私の状況を感じ取ってくれる方と背中を押してくれる方ばかりなので、本当にいい環境で働かせてもらっています。
――将来の自分はどうなっていると思いますか?
亀ヶ谷 できる限り、ヘアメイクの仕事や講師は続けていきたいですね。ただ、結婚や出産を考えると、自分の技術だけでやっていくヘアメイクの仕事を続けるのは、難しいのかなって思っています。同じ悩みで辞めてしまう女性も結構いるので・・・。なので、将来は自分でサロンを開きたいなと思っています。野望と言うか夢なんですけど、学校で講師をやりながら自分のサロンも経営する。そして、生徒の就職先が、自分のサロンになったら嬉しいですね。私はヒューマンを卒業した後、アトリエはるかで働きながら、美容師免許を取るために、通信の学校に3年間通いました。サロンを開く際に、ヘアメイクだけではなく、マツエクなど提供する技術の幅を考えて、仕事と学業の両立は大変でしたが、取得しました。また、現在は英会話にも通っていて、将来的には日本だけではなくて、海外でも仕事ができれば良いなと思っています。
――ヘアメイクの仕事を目指している方に一言。
亀ヶ谷 最近の学生を見ていると、ヘアメイクが好きで入学してくる子もいるんですけど、好きだけではやっていけないのか、割と精神的に追い込まれやすい子が多いですね。少し大変なことがあったり、自分に合わないなって思ってしまうと、最初の好きな気持ちがどんどん消えていってしまうんですよね。ヘアメイクの仕事は、体力的にも対人的にも、ものすごく大変な仕事だと思います。ですが、大変大変とあまりマイナスに考えないで、みんなポジティブに考えて欲しいなと思います。この仕事は辛いことも多いですけど、お客様の笑顔を見ることができる、とても素敵で楽しい仕事です。ヘアメイクを目指している方は、ぜひポジティブに考えて、頑張って欲しいなって思います。
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