サービス提供責任者になるために


訪問介護(ホームヘルパー)事業所で重要な役割を担っている「サービス提供責任者(サ責)」ですが、どんな仕事かわからないという人も多いと思います。また、サービス提供責任者になりたいと思いながらも、なり方がわからないという話も少なくありません。ここでは、サービス提供責任者の仕事内容や配置基準、給与や求人、サービス提供責任者になるためにはどうすれば良いかなど、訪問介護員として働く人が知って得する情報をお知らせします。

■サービス提供責任者とは?

サービス提供責任者と聞くと、「何かの役職か資格?」と思うかもしれませんが、サービス提供責任者という資格はありません。サービス提供責任者とはれっきとした職業なのです。
訪問介護事業所にはサービス提供責任者の配置義務があり、サービス提供責任者はその中で
①ホームヘルパー(訪問介護員)
②ケアマネジャー(ケアマネージャー・介護支援専門員)
③利用者(お客様)・利用者の家族
この三者を中央で繋ぐ役割をしています。
つまりサービス提供責任者は、訪問介護サービスの上での指揮者のような存在と言えるでしょう。
※介護業界では、「サービス提供責任者」は略して「サ責」と呼ばれています。

■サービス提供責任者の仕事内容

サービス提供責任者の仕事は法令によって定められています。サ責の仕事内容は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の第28条3項によると以下の通りです。

  • 一、 指定訪問介護の利用の申込みに係る調整をすること。
  • 二、 利用者の状態の変化やサービスに関する意向を定期的に把握すること。
  • 三、 サービス担当者会議への出席等により、居宅介護支援事業者等と連携を図ること。
  • 四、 訪問介護員等(サービス提供責任者を除く。以下この条において同じ。)に対し、具体的な援助目標及び援助内容を指示するとともに、利用者の状況についての情報を伝達すること。
  • 五、 訪問介護員等の業務の実施状況を把握すること。
  • 六、 訪問介護員等の能力や希望を踏まえた業務管理を実施すること。
  • 七、 訪問介護員等に対する研修、技術指導等を実施すること。
  • 八、 その他サービス内容の管理について必要な業務を実施すること。

少しイメージが沸きにくいでしょうか? では、できるだけわかりやすくサ責の仕事をご説明しましょう。

<利用者の状況把握>
まずサービス提供前に対象である利用者のご自宅を訪問し、利用者やそのご家族の生活状況、求める介護サービス(好きな食品など)を伺います。その中で利用者にどのようなサービスを提供できるかを考えます。具体的なサービス内容を話し合うことができたら、利用者から確認と合意を取ります。

<訪問介護計画書の作成>
サービス内容とサービスの提供が決定すると、ケアマネジャーが作成するケアプランに沿って具体的な訪問介護計画書を作成します。計画書作成の際には「サービス担当者会議」を開きます。会議では利用者やその家族、ケアマネジャー、利用者の介護や医療に関わる方々(訪問看護・デイサービス担当者、利用者のかかりつけ医など)と意見交換し、より良い計画書作りに務めます。また、サービス実施中には提供しているサービスが適切なものかを都度確認・評価し、サービスを改善していきます。

<訪問介護スタッフとのコミュニケーション>
サービス提供責任者は事業所の介護ヘルパーたちをまとめることも仕事です。ヘルパーの育成や指導・教育をしたり、利用者とヘルパーの相性を考えた配置、ヘルパーからの相談を受けたりもします。スタッフと勉強会をするところもあります。
また、ヘルパーのスケジュール調整や勤怠管理、訪問介護サービスの申し込みや受付などもサ責の仕事です。このように書くとサービス提供責任者のメインの仕事は事務作業のように感じるかもしれませんが、多くのサ責は訪問介護業務も行います。ヘルパーと一緒に訪問介護に同行したり、急病などにより仕事に来られない連絡があったヘルパーの代わりに現場に行く場合もあります。

<事務作業>
事務作業もサービス提供責任者において重要な業務のひとつです。介護プランの目標や役割分担などの共有のために、介護サービス担当者との意見交換会議に出席することもよくあります。月末にはその月に提供したサービス内容をまとめて、介護報酬の請求手続きをするための事務作業も行います。サービス提供時の契約などの手続きも行うため、介護保険のしくみ、料金体系の知識が求められます。

■サービス提供責任者の配置基準

訪問介護事業所には「サービス提供責任者」を配置する人数が規定されています。

訪問介護事業所に配置しなければならないサービス提供責任者の人数は、介護サービスの利用者数によって異なります。利用者40人ごとに、サービス提供責任者が1人必要となります。

利用者数サービス提供責任者の必要人数
1人~40人1人
41人~80人2人
81人~120人3人
121人~160人4人

※利用者数の端数は繰り上げして計算します。

当然、利用者数が160人を超えた場合も同様の計算となります。
利用者が多い施設であればあるほど、サービス提供責任者が多く必要になるわけです。

<非常勤のサービス提供責任者について>
サービス提供責任者は、常勤職員であることが基本ですが、条件を満たすことにより非常勤職員でも務めることが可能です。

非常勤職員の配置の3つの条件

[1] 1人を超えるサービス提供責任者を配置する事業所では、原則1人分のみの常勤換算が可能
[2] 5人を超えるサービス提供責任者を配置する事業所では、サ責の3分の2以上が常勤であること
[3] 非常勤のサービス提供責任者については、事業所における勤務時間が、事業所で定めた常勤の従業者の勤務時間の2分の1以上であること
【例】
1 利用者の数が40人以下の場合
  常勤 1人、非常勤 0人 非常勤はサービス提供責任者にできない
2 利用者の数が40人超、80人以下の場合
  常勤 1人、非常勤 1人
3 利用者の数が80人超、120人以下の場合
  常勤 2人、非常勤 1人
4 利用者の数が120人超、160人以下の場合
  常勤 3人、非常勤 1人

■サービス提供責任者の給与

専門的な知識と高い技術を併せ持つサービス提供責任者は、一般的なヘルパー(訪問介護員)に比べて高い給与を貰うことができます。
以下に、東京で募集しているサービス提供責任者の正社員の月給を公開しますので、参考にしてください。

【月給】176,726円~365,000円 平均:247,998円(手当込月額)
※更新日:2016年2月4日(情報元:リジョブ

■サービス提供責任者になるには

サービス提供責任者になるためには、以下のうちのいずれかの条件を満たさなければいけません。

・介護福祉士、看護師、准看護師、保健師のいずれかの資格を取得している。
・実務者研修を修了している。
・ホームヘルパー1級を取得している。(※1)
・介護職員基礎研修を修了している。(※1)
・介護職員初任者研修(旧:ホームヘルパー2級)を修了しており、介護業務の実務経験が3年以上ある。(※2)

※1:ホームヘルパー1級と介護職員基礎研修は、現在は既に廃止されています(現在は「実務者研修」に一本化)。ここでは廃止前に取得している、修了していることを示しています。

※2:この場合もサービス提供責任者になることはできますが、介護報酬が10%減算されてしまいます。

資格以外にも、コミュニケーション能力や人をまとめる力、プレゼン能力も必要です。利用者が満足できるサービスを提供できるか、スタッフが楽しく働けるかはサ責にかかっていると言っても過言ではありません。

<サービス提供責任者は未経験からでも目指せる!>
未経験からサービス提供責任者を目指すことは可能です。介護の資格は現在、様々な改定が行われており、実務者研修修了者から介護福祉士(国家資格)というステップアップの一元化が進められています。この実務者研修の受講制限はありません。年齢・性別などの受講資格の制限はなく、介護経験や資格も不要であるため、未経験からサービス提供責任者を目指すことができるのです。
実務者研修のカリキュラムについては、座学と実践学習を合わせて450時間以上の受講が必要ですが、以下の資格を取得している場合、カリキュラムはその資格に応じて免除される科目があります。

取得している資格 受講時間 免除時間
なし 450時間 0時間
ホームヘルパー3級 420時間 30時間
ホームヘルパー2級 320時間 130時間
介護職員初任者研修 320時間 130時間
ホームヘルパー1級 95時間 355時間
介護職員基礎研修 50時間 400時間

<実務者研修における経験者の違い>
介護の資格がなく未経験の場合、介護職資格保持者とは異なり、「実務者研修」カリキュラムの中の「授業免除」はありません。介護に携わる者の基礎的な資格である介護職員初任者研修取得のためのカリキュラム130時間を含む、全450時間のカリキュラム全てを受講する必要があります。

■サービス提供責任者の仕事を探す時の注意点

<求人サイトで探す>
求人サイトで検索するとサービス提供責任者の募集はかなりたくさんあります。それだけサ責が足りない事業所が多いということでしょう。しかし当然ながら、掲載求人の全てがあなたにとっての理想の職場環境というわけではなく、金銭面や福利厚生が好条件の就職先はすぐに従業員が充足してしまいます。求人広告の企業情報を確認して、気になる案件はすぐに検討リスト(キープ)に入れること。
ここで意外と多いミスが、掲載終了当日であることに気付かず「まとめて明日送ろう♪」と思い、結局応募できないという事案です。広告掲載期間をチェックして、できるだけ早く応募するようにしましょう。面接の時に「違う!」と思ったら辞退すれば良いだけですから。

<ハローワークで探す>
ハローワークでも求人サイト同様にサ責の募集はたくさんあります。最近は直接ハローワークに足を運ばなくても、ハローワークインターネットサービスで探せるので便利になっています(応募にはハローワークからの紹介状が必要です)。また、サポート体制がしっかりしているところもハローワークの魅力です。しかし、ハローワークの求人は広いが浅いというのが事実です。

記事「ハローワークのメリット・デメリット」

就職先を介護福祉業界以外の職種でも考えている人。例えば商社やプラント、土木、機械・電気・電子メーカーも考えている人、臨床開発や技能工、生産技術営業の仕事も考えている人であれば、ハローワークで探すのも良いかもしれませんが、介護一本に絞って探すのであれば、介護業界に特化した求人サイトで探す方が良いでしょう。

<未経験には難しい?>
サービス提供責任者の求人の多くは経験者を募集しています。求人広告の中には「未経験OK」や「未経験者歓迎」と表示されている場合がありますが、入社してしばらく訪問介護員として在宅ケア実績を積んでからサ責になるパターンが多いようです。「人が足りなくてすぐにでもサ責が欲しい」という場合はその限りではありませんが、例えばデイサービスで経験を積んで介護福祉士の資格を取得した人が、サ責の即戦力として活躍できるなんて誰も思いませんよね? 未経験者は将来サ責になるための、大切な素材です。入社した事業所で約3か月は訪問介護員として働いた後、サ責になれるような目標を立てておきましょう。

<変形労働時間制>
サービス提供責任者を含めた正社員の訪問介護員に対しては、変形労働時間制を採用している事業所もあります。
変形労働時間制とは、「一定の単位期間について、労働基準法上の労働時間の規制を、1週および1日単位ではなく、単位期間における週あたりの平均労働時間によって考える制度」です。
例えば、労働基準法では一週間に40時間を超えて労働させてはならないと決まっていますが、企業によっては「月末は忙しく、月の中旬は忙しくない」という場合があります。その際、月の中旬は1日6時間労働にして、月末は1日10時間労働にするなど、月の合計労働時間を週平均に換算した時に40時間以下にする仕組みです。
企業がどのような制度を採用しているのか、求人情報をしっかりと確認しましょう。

■サービス提供責任者として働く時の注意点

<ファッション・化粧品>
事業所で制服が決められている場合は特に気にする必要はありませんが、服装自由の事業所では少し気を付ける必要があります。前述したとおり、サ責はいろんな人とコミュニケーションを取らなければなりません。身内であるヘルパーが相手の場合は良いとしても、利用者の家族、利用者の担当医など、部外者と合う場合に部屋着の様な私服だと問題です。スーツを着ましょうとまでは言いませんが、ビジネスカジュアルのようなきれいなファッションですと問題はないでしょう。化粧もあまり派手にはせず、控えめにしておきましょう。

<持ち物>
サービス提供責任者と雖も、ヘルパーの急な休みなど不測の時にはサ責本人が訪問介護をする場合があります。いつでも出動できるように、訪問介護に必要な持ち物も常時持ち出せるようにしておきましょう。ここでは、いろんな訪問介護員に「何を持って行く?」と聞いた結果の代表的なものを羅列しました。

「筆記用具(赤黒ボールペン・鉛筆・消しゴム・蛍光ペン・マジック・修正テープ・ポストイット・メモ用紙)・記録用紙・使い捨て手袋・マスク・タオル・名札・医薬品(バンドエイドなど自分用)・替えの靴下・輪ゴム・印鑑・電卓・社員証・ティッシュ・ハサミ・レジ袋(エコバッグ)」

これらをひとつの大きなバッグに入れておき、訪問介護準備は常時万端にしておきましょう。

■よくある質問・相談

ここでは、リジョブに寄せられるご意見の中から、サービス提供責任者関連のよくあるご質問・ご相談について回答していきます。

Q1.事業主(社長)はサービス提供責任者になれないのですか?

A1.管理者とサービス提供責任者は兼務できます。管理者は常勤専従と決められているので、他の事業との兼務はできませんが、サービス提供責任者との兼務は可能です。ただし、常勤換算で2.5人以上であることは絶対条件ですので注意しましょう。
「サービス提供責任者」+「管理者」+「訪問介護員」の兼務は、管理業務に支障が生じる恐れがあるため、基本的には認められません。


Q2.訪問介護事業所の管理者兼サ責をしています。この度、事業主からの指示で、併設しているサ高住の職員も兼務で命じられました。これって違法ですか?

A2.残念ながら違法です。サ責の場合、他にもサ責がおり、常勤換算で既定の人数がいれば問題ありませんが、管理者は常勤が絶対条件です。そのため併設であってもサ高住の職員として就業することはできません。


Q3.なかなか採用されません。男性がサ責になるのは難しいですか?

A3.サ責になるのに性別は関係ありません。実際、男性のサ責はたくさんいます。 ただ、日本全体で見ると利用者は女性の方が多く、不測の事態でサ責が女性利用者宅に訪問し、介護をしなければならない場合、男性だと利用者に拒否されるケースが考えられます。そのため、男性をサ責として雇わない事業所もあるかもしれません。しかし、現場での重介護の際に男性の力が非常に助かるのも事実です。 利用者数が多く、サ責が数人必要な事業所の面接に行ってみてはどうでしょうか? サ責3人の内の1人が男性ということであれば事業所も不採用にする理由はないでしょうから。


Q4.「加算」と「減算」について教えてください。

A4.介護費用は基本料金に加算・減算されて算出されます。加算・減算の事由は利用時間帯やサービスの質、緊急度など様々です。以下に、訪問介護における加算・減算の主なものを記載しておきます。
夜間及び早朝訪問時加算+25%
深夜訪問時加算+50%
特定事業所加算I~III+10%~20%
緊急時訪問加算(ケアマネが認めた場合)100単位
初回加算(サービス提供責任者が同行)200単位
生活機能向上連帯加算100単位/1月
2級訪問介護職員を責任者として配置-10%
事業所と同一建物に居住する利用者にサービスを行う-10%
※詳しくは、厚生労働省の各種加算減算適用要件等一覧をご覧ください。


Q5.訪問中、利用者の容態がおかしくなったため、サ責の指示で救急車を呼びました。しかし、救急車への同乗をしなかったことに対して、上司から叱られました。普通は同乗するものなのですか?

A5.訪問介護員やサ責が救急車に同乗するという決まりはありません。救急隊員にご家族の連絡先を教えて、あとは利用者担当のケアマネに連絡して対応してもらうのが良いでしょう。どうしてもと言う場合は、同乗しても良いかもしれませんが、その時間はボランティアになってしまいますし、帰りの交通費も事業所から支給されるとは考えられないので自費になってしまいますね。

■サービス提供責任者として働くメリット・デメリット

訪問介護サービス施設の増加に伴い、サービス提供責任者の需要はどんどん高まっています。事業主はサ責を必要としているため、就職状況は大変良好と言えるでしょう。また、給与面でも、通常の訪問介護員に比べて高く、平均月給に換算すると2~4万円ほど高いことも魅力のひとつです。
その反面仕事量は多く、大きな責任を負うことになることが辛くて辞めてしまう人も少なくありません。どちらかと言うと、実際に介護をする立場と言うよりも、まとめ役・縁の下の力持ちのイメージが強い仕事ですが、そこを魅力に感じることができれば、責任とプライドを持って続けられる仕事と言えるでしょう。

水平線

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サービス提供責任者になるために

サービス提供責任者と聞くと、「何かの役職か資格?」と思うかもしれませんが、サービス提供責任者という資格はありません。サービス提供責任者とはれっきとした職業なのです。

2016/02/15

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