ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
ヘルスケア 2021-09-28

相手を癒やしたい気持ちがあれば、鍼灸師は満足度が高い仕事です【ヘルスケアのお仕事 Vol.40 自然なからだ 手塚幸忠さん #2】

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。

前回に続き、表参道で鍼灸マッサージ治療室「自然なからだ」を経営し、鍼灸マッサージ教員としても活動している手塚幸忠さんにインタビュー。前編では、手塚さんのこれまでの道のりと現在の働き方についてお聞きしました。

中編となる今回は、手塚さんのマインド面にフォーカス。手塚さんが感じるお仕事の魅力や苦労、鍼灸師を目指す人へのアドバイスについてお聞きします。

お話を伺ったのは…

表参道鍼灸マッサージ治療室「自然なからだ」
院長 手塚幸忠さん

鍼師、灸師、あん摩マッサージ指圧師。コンピューターエンジニアとして4年半勤めた後、鍼灸の世界へ。専門学校卒業後、鍼灸マッサージ教員免許を取得。教員として活動する傍ら、共同経営サロンに6年勤務。その後、2017年に表参道鍼灸マッサージ治療室「自然なからだ」を開院。サロン経営をしながら非常勤講師としても活動中。

現代医療とは別次元の理論がある。だから東洋医学は面白い!

SEから鍼灸師に転身した手塚さん。
整体師を目指してスタートしたものの
東洋医学の面白さにハマり鍼灸師に

―手塚さんがお仕事に感じる魅力を教えてください。

いろいろありますが、目の前にユーザーがいるので、治療してすぐにフィードバックがきて感謝されるというのが、一番楽しくて嬉しいことです。

また鍼灸は手で触って何でもできるので、家族ケアや身近な人のケアがすぐにできるのもすごくいいですね。鍼がなくてもツボを押せますし、僕はいつも鍼を持ち歩いているので旅行先で知らない人の治療をすることもあったりして(笑)。その方のご家族が患者さんとして来院してくれるなど、つながりも生まれて面白いです。

あと僕は東洋医学メインの治療をしているのですが、現代医学の主流である西洋医学とは別次元の理論動いているんですよね。西洋医学のパラダイムで考えるとあり得ないようなことが起こるので、それが本当に面白くて。自分でも「なんでこうなるんだろう」というのを楽しみつつ、患者さんにもそれを伝えて「一緒に楽しみましょう」という感じで治療しています。

―東洋医学に興味を持ったのは?

専門学校時代に入った「痛くない鍼」の勉強会が、思い切り東洋医学がベースだったんです。専門学校自体は西洋医学寄りだったので、そのギャップがすごく面白くて。

西洋医学はまずリスクを考えるので、少しネガティブな情報から入るところがあるんです。でも東洋医学の先生たちって、「どんなものでも良くするぞ!」と楽しそうに働いていて。僕の師匠の先生も東洋医学しか信じていない人なんですが、先生について治療を見ていると実際に目の前で患者さんが良くなっていくんですよね。

でも好きになったのは、やっぱり自分で治療をし始めてからですかね。東洋医学って、木火土金水とか気の巡りとかいう話なので、実際に目の前でそれが起こらないとファンタジーにしか思えないですから(笑)。

僕はもともとSEをしていた人間で、「気」とか言われてもしっくりこないタイプなんです。でも東洋医学って判断方法がコンピューターと一緒で。コンピューターは、中がわからない状態で、入れた数字と出てきた数字で合っているか判断する。東洋医学も同じで、体の中がわからない状態で、刺激を与えて出た効果で判断するんですよね。

「気」があるかないかは今でもわからないけど、東洋医学の治療で出る効果を説明できるのが「気」なんです。それは説明原理として受け入れられる。そして実際に目の前で治っていく。それがすごく面白いんです。

経営が苦手な鍼灸師は多い。まずはリピーターを増やすことから

12年の共同経営を経て、2017年に完全独立した手塚さん

―お仕事の中で苦労したこと、大変だと思うことは何ですか?

最初のころは、思うように患者さんを治せないというところが一番の苦労じゃないですかね。あと開業すると集客や経営面というのは、鍼灸師は苦手な人が多いと思います。

昔の先生とかに相談すると、「患者さんが来ない時は勉強していろ」と言うんですけど、勉強したって患者さんは来ないんですよね。患者さんが来ないと治療すらできませんから。

―解決するにはどうしたらいいのでしょうか?

治療に関しては勉強と練習をしましたね。集客や経営も一緒ですね、僕もまだ模索中ですが…。患者さんに信頼してもらって続けて来てもらうという点は、いろいろ工夫しながらトライ&エラーでやってきました。今は問題なく進められるくらいにはなりましたね。

うちの場合、9割がリピーターさんです。だから今は新規の患者さんを増やす方法を勉強中ですね。一度ハマってくれると、ずっと来てくださるので。今でも、前の治療院からの患者さんが8割以上は来てくれています。真摯にやってきたことがよかったのかなというのは、すごく感じますね。

「人を癒やしたい」という目的意識を持って業界に携わって欲しい

鍼灸マッサージ教員としても長年活動している手塚さん。
この業界に入る人には、「人を癒やしたい」と思って欲しいそう

―鍼灸師を目指される方にアドバイスをお願いします。

目的意識を持つこと、「なぜ鍼灸師になりたいのか」ということは、一度考えたほうが良いと思います。私は学校の専任教師をしていた時によく面接をしていたんですが、「自分が癒やされたから目指した」という人がよくいました。でも人を癒やすのと自分が癒やされるのは全然違うんです。

人を癒やすのは、けっこう気合いがいる。だから「なんとなくいいな」とか「やってみたいな」くらいの気持ちだと、ちょっとついていけなくなる可能性があるんですね。

でも「相手のことを癒やしたい」という積極的な気持ちがあれば、絶対に満足度の高い仕事だと思います。今鍼灸を受けている人は、国民の10%以下。逆に90%の人は受けていないので、まだ市場はあると言えます。やり方次第でもっと鍼灸は広がりができると信じているし、そうしたいなと僕も思っているんです。そういうポジティブな気持ちでこの業界に来てくれるなら、ぜひやって欲しいなと思います。

―手塚さん的「鍼灸師の心得3か条」を教えてください。

1. 患者さんに興味を持つ

経営や集客など、治療以外のことに頭が行くこともあると思います。でも絶対に患者様にはすぐにわかってしまうんです。だから第一は患者さんに意識を向けることが大切だと思います。

2. 勉強や工夫をし続ける

もし勉強が苦手だとしても、目の前にいる患者さんをよくするための工夫は、日々しないといけないと思います。とくに何年も来てくれるリピーターの場合、飽きてしまうこともある。だから飽きさせないように治療法を変えたり、さらに良くするための工夫をし続けることを心がけています。

3. 自分のケアもする

鍼灸師やヘルスケア業界の人は、相手に何かしてあげたい気持ちが強くて、自分のことを後回しにしがちです。僕も今だに言われるんですが(笑)。自分の体は大切にして欲しいですね。

………………………………………………………………………………………………………………

人を癒やすことはメンタル面でも体力面でも大変なこと。「それでも好きなら辛くはないし、誰かを癒やしたいと思うなら仕事としての満足度は高いですよ」と手塚さんは言います。満足感を持って働けることは、施術者側の人生にとってもとても大切な要素なのではないでしょうか。次回後編では、手塚さんの治療・技術にフォーカス。優しい鍼と熱くないお灸についてお聞きします。

取材・文/山本二季
撮影/米玉利朋子(G.P.FLAG)

Information

表参道鍼灸マッサージ治療室「自然なからだ」

住所:東京都港区南青山6-12-11 YUKEN南青山302
TEL:03-6419-7213

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事