挫折-ドロップアウトから月間売上300万の施術家に【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.31 整体院 和-KAZU- 迫田和也さん #1】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、YouTubeの整体系チャンネルで登録者数40万人超という人気整体師、迫田和也さんにフォーカス。迫田さんの仕事観から、幅広い活動をされる原動力、YouTubeで成功する秘訣などについて、全3編でお伝えしていきます。
専門学校卒業後、接骨院で働いていたものの22歳で挫折を経験し、一度ヘルスケア業界を離れたという迫田さん。しかし現在は、月平均売上300万円以上の人気整体師になりました。前編では、迫田さんが経験した挫折の理由と、なぜ再起できたのか、そして現在の働き方について、詳しく教えていただきます。
教えてくれたのは…
「整体院 和-KAZU-」
院長 迫田和也さん
柔道整復師、筋膜ヨガインストラクター、プロフェッショナルファスティングマイスターの資格を持つ。整体院にて痛みの根本的な改善をサポートするかたわら、YouTubeチャンネル「Kazuya Sakoda」にて、整体のセルフケアやファスティングに関する動画を配信。チャンネル登録者数は41万人を超える。近著『10秒押すだけ! 痛みを治す最強の整体 攻めるべきは「トリガーポイント」』他。
詳しいプロフィールはこちらの動画でチェック「治療家 迫田和也とは?(short ver.)」
柔整師の仕事の理想と現実を知り、挫折を経験
―ヘルスケア業界で幅広く活動されている迫田さんですが、22歳の時に一度、業界を離れたと伺いました。その理由を教えてください。
専門学校卒業後、柔道整復師の資格を取り、接骨院で分院長として働いていました。接骨院なので、専門は骨折や脱臼、捻挫、打撲などの怪我に対する施術ですし、学校でもそういうことを学びました。
でも実際、来院される方の悩みの大半は、腰痛や肩こり、膝痛といった慢性的な痛みです。そういった症状については学校では学んでいないので、当たり前なんですが、まったく改善してあげられなかったんですよね。
私自身、人とコミュニケーションをとるのは得意なので、仕事に対する根拠のない自信がありました。国家資格を持っていることに、変なプライドもあったと思います。
柔道整復師の仕事にこだわって、慢性痛をみることに「マッサージ」という感覚があった。でも、全然よくしてあげられない。そこで、自信を失ってしまったんです。
―そこに違和感を持つ若手の方は多いですよね。
そう思います。さらに、慢性痛は本来、保険がきかないんですが、グレーな方法で保険扱いにする現状がありました。それに対する違和感というのも大きかった。仕事に対する失望じゃないですけど、自分の理想と違うなという気持ちが大きくなっていました。
そのころプライベートでは、恋人、現在の妻が、海外の大学に行っていたんです。それに羨ましさもあり、「仕事もうまくいっていないし、今のうちに海外に行っておくのもいいかな」と思って、フィリピンにボランティアをしに行くことにしたんです。
「学べる」という贅沢に気づき、整体術を極めることに
―もう一度ヘルスケア業界に戻ろうと思った理由はなんですか?
フィリピンでボランティアをしている時に、勉強ができることのありがたみというのを、すごく感じたんです。
現地には、生活的、金銭的な問題で、教育を受けられない、勉強ができない子供たちがたくさんいました。日本人は勉強を苦痛なことと感じがちですけど、本来なら自分が勉強したいことを学べる環境って、すごくありがたいこと。自分は日本人として、そういう環境に運よく生まれた。だったら中途半端じゃなくて、ちゃんと勉強しなきゃいけないなと、触発されました。
あと、現地で大工さんが腰を痛めたことがあったんです。その時に自分は、何もしてあげられなかったんですよね。困っている人がいるのに、ヘルスケア業界に身を置いていた自分が、助けられない。それって、よくないなと思いました。
だから、一度日本に帰って、ちゃんと勉強し直そうと。柔整にこだわらず、人を助けられる技術・知識を身につけようと考え直したんです。
「施術は趣味」として追求するなかで、本当にしたい仕事だと気付く
―帰国後~開業までは、どのように過ごされたんですか?
帰国後、渡航前にいた接骨院が新しく介護事業を始めるということで、それを手伝っていました。正直、接骨院というものに距離を置きたいと思っていたので、治療や施術は「趣味」というかたちで続けることに。まずは友人や家族など、身近な人だけ助けられればいいかな、という感覚ではじめました。趣味とは言え、毎週末いろんなセミナーや整体の先生のところに行って勉強していたので、かなりのお金と時間を使いましたね。
自分の中で自信がついてきたころ、自宅の一室で1時間かけてしっかり施術をするようになっていたのですが、「無料だと逆に頼みづらい」と知人に言われ、初回無料・次回以降5000円で施術することにしたんです。趣味のはずがだんだんと忙しくなり、日給で考えればサラリーマンを余裕で超えるようになっていました。
そうなると、「自分が仕事としてやりたいことって、介護事業と施術、どっちなのかな」と考えるように。自分じゃないとできないこと、自分がやりたいことがしたいと思い、整体院を開業することにしたんです。
―接骨院ではなく、整体院にした理由はありますか?
開業を考えていた時、ちょうど子供が生まれたタイミングで。子どもに、お父さんってどんな仕事をしているの? って聞かれた時に、少しでも後ろめたい気持ちを持ちたくないなと思ったんです。
接骨院のグレーな保険診療に違和感があり、私自身は保険ではなくプラス自費というかたちでやっていました。でも「接骨院」というものに、そういう現状があることには変わりない。だから、接骨院というものから距離を置きたかった。
真っ当に、自分の手で勝負したい。きちんと時間をかけて、本当によくなりたいという方を施術したい。そういう気持ちから、1回1時間1万円の完全予約制、マンションの一室という完全個室の整体院を開くことにしたんです。
―現在の働き方について教えてください。
現在は、施術と動画配信、同業者の先生向けに技術やマーケティングのセミナーを行っています。今、私の中で最も重要な仕事は、週2回行っている同業者の先生に対する技術セミナーですね。
新規のお客様は、隣の部屋にいる他の先生にお願いしています。既存のお客様の施術は、主に土日に行い、1日でまとめて朝から晩まで入れています。
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「学びたいことを学べる」ということが、贅沢なことなんだと気付いた迫田さん。施術やマーケティングなどについて、積極的に学ぶようになったそうです。そして、ここで確立された「腰痛治療理論」を元に、整体師としても成功を手に入れます。
次回、中編では、迫田さんがなぜ成功できたのかを紐解いていきます。
▽#2はこちら▽
経営安定の秘訣は「リピーター」という考えを捨て「卒業させる」こと【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.31 整体院 和-KAZU- 迫田和也さん #2】>>
取材・文:山本二季
撮影:高嶋佳代