ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
特集・コラム 2019-11-08

介護の扉 No.2 株式会社舛添政治経済研究所 所長・舛添要一(後編)

舛添要一さんをゲストに迎えた、「介護の扉」第2回。最終回となる今回のテーマは、介護業界の労働事情、国政・都政でやり残したこと、多世代が共生するコミュニティ、そして介護施設への提言です。舛添さんが考える未来の介護の在り方とは?

赤ちゃんの声が聞こえると認知症の進行が遅れる——多世代が共生するコミュニティの必要性

——外国人労働者が介護業界に多く入ってきていますが、率直な意見を聞かせてください。

街中のコンビニで外国人を見ないことの方が少なくなってきました。コンビニは商品を扱っていますから、不便を感じることはあまりないかもしれません。けれど、扱う対象が人間の場合、特に認知症の介護はコミュニケーションが要(かなめ)になります。認知症で言葉がはっきりしないお年寄りの要求をくみ取り、適切な対処ができるのかという点に対しては、外国人にはハードルが高い気がします。もちろん、彼らは日本語を一生懸命勉強して、仕事に取り組んでいます。私の知っている施設でも、日本語学校を併設して自分たちで外国人労働者の養成をしていますしね。

ただ、万が一、皆さんが海外で病気をして現地の病院にかかったとします。言葉が通じない中で「症状をどう伝えたらいいのだろう……」と考えることはとても不安ではありませんか? であれば、コミュニケーションの部分は日本人が担った方が私はいいと思いますし、何かしら外国人労働者と分業したらいいのでは?と思います。

——国政や都政に携わっていたとき、介護の分野で尽力されていた舛添さんですが、「やるべきだったけど、やり残したこと」があれば教えてください。

1つは、介護保険と医療保険のドッキングですね。医療保険と介護保険は別物なので難しかったのですが、介護が必要になるとき医療は必ずセットでついてくるため、2つが1つにならないか模索していました。

もう1つは、厚生労働省が今も取り組んでいる、地域包括ケアの確立です。病気になると、まず近所のかかりつけ医に診てもらいます。そして、より精密な検査が必要になった場合、大学病院を紹介されるという地域的なルートができています。

これを介護に当てはめると、「今日は家族がみんな揃っているから在宅で介護しよう」「今日は施設に行ってもらおう」というように、その日によって選べる自由さを持たせるために、地域的な介護の仕組みがつくれるのではないかと思います。また、地域の人全員が集まって、医療も介護も面倒をみる地域包括センターのような施設がつくれたら、その地域の住人に安心を提供できます。そのコミュニティに住んでいれば、認知症になっても病気になっても誰かが助けてくれる。そこに子どもの見守りの要素も加えられたら、地域全体の活性化につながりますよね。

私が在任中は、地域全体で包括的なケアをする制度の確立までは進みませんでしたが、国としてはこれからもその方向で進んでいくでしょう。

——団地の中に小規模多機能ホームをつくる取り組みをしている株式会社ぐるんとびーさんは「地域を、ひとつの大きな家族に!」のメッセージを掲げ、子どものいる家族と高齢者たちが一緒の団地で生活する多世代のコミュニティの場をつくっています。

私が都知事のとき、多摩ニュータウンの古くなった団地の建て替えをしました。そこでわかったのが、保育施設と老人施設が隣り合うことで良い効果を生み出すということです。例を挙げると、赤ちゃんの声が聞こえると認知症の進行が遅れるといった良い変化が見られたんですね。建て替え後のマンションはとてもすてきなマンションで、すぐに若い世代で埋まりました。これからは、多世代の人々が共生するコミュニティの必然性が高まっていくと考えています。

変わる介護の働き方——「埋もれた人材」を活用せよ

——株式会社リジョブでは、「介護シェアリング」という働き方を提唱しています。経験に関わらず、空いている時間のある方が介護の仕事の一部を短時間だけするというものです。この働き方について舛添さんのご意見を聞かせてください。

親の介護の経験がある方や介護士の資格を持っていて今は主婦をしている方など、「埋もれている人材」は多いと思います。そういった人材が活躍できる場を提供することは、非常に良い試みですね。

例えば、わかりやすく女医さんの話をしますと、今小児科や産婦人科の医師の半分は女性です。彼女たちが結婚して子育てをするためには、仕事を休まなければなりません。しかし、医者という仕事は宿直して急患に備える必要があります。特に産婦人科の場合だと、いつ陣痛が始まるかわかりません。子どもは夜に急に体調を崩すことも多いですから、小児科も大変です。だから、やめてしまう女医さんやそもそもなりたがらない方が多い。

それを解消するために、ワークシェアリングが非常に有効だと思います。自分の子どもが大きくなるまでは17時に帰らせてもらう。残業をなくすだけで、復帰できる可能性は相当高まりますよ。短時間でもいいからパート的に働いてもらうことは、他の業界ではやれているわけですから、介護の業界でも有効だと思います。さっき外国人労働者の分業に触れましたが、例えばパート的に入った日本人にコミュニケーションの部分の役割を担ってもらうといった取り組みもありですよね。外国人労働者をブロックするよりも、手段を変えてどんどん受け入れていく方が建設的だと思います。

「データ」と「エビデンス」で要介護度を下げられるかもしれない

——昨今の医療の発展は目覚ましいものがありますが、今後、要介護度を軽くできる可能性はあると考えていますか?

医学は着実に発達しています。ただ、認知症の原因となる炎症を遅らせる薬も出てきてはいるものの、根本的な治療には至っていません。しかし、私が厚労大臣のとき、個人の努力で要介護度が低くなった方がいて、表彰させていただきました。認知症の進行を遅らせることはできるんです。

私は、施設ごとに入居者の経過とエビデンスを重ねて、成績のようなものをつければいいのではないかと考えています。「あそこの施設は評判いいよ」というただの口コミではなく、医療のようにデータを取って、結果を公表するのです。仮に要介護度3の人が施設で1年間過ごした結果、症状がどう変化したかがわかれば他の施設のお手本になるし、再現性があればたくさんの患者さんの認知症を遅らせることができます。

また、入居している施設によって進行具合の違いが明確になることで、いい意味で競争原理が働くのではないでしょうか。そして、成績の良い施設には行政から奨励金を出す。要介護度が下がれば、社会保障費全体の負担も減りますしね。

認知症の要介護度が上がることは個人にとっても損失ですし、社会全体にとっても損失です。医療が進歩しているからこそ、そういったデータに基づいた取り組みをそろそろしなければいけない段階にきているんだと思います。

全3回にわたってお届けした、舛添要一さんの「介護の扉」。国政・都政を経験し、5年間母親を遠距離介護してきたからこそ持てる視点と考えで、日本の介護の現在と未来について解説いただきました。「日本の介護業界、社会福祉はまだまだ良い方向に変えられる」。そう思わせてくれた舛添さんの提言をヒントに、業界に携わる方が自分らしく働き続けられる社会の実現を目指していきます。

介護の扉 No.2 株式会社舛添政治経済研究所 所長・舛添要一(前編)>>

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事